谷川岳 西黒尾根
日程:2025年3月28日(夜)〜29日
行程:
3月28日 2130横浜駅−0100道の駅みなかみ水紀行館(仮眠)
3月29日 0400起床−0540谷川ベースプラザ−0607西黒尾根取付き−0627鉄塔−0841ラクダの背−0902ラクダのコル−1025ザンゲ岩−1056 EL1900−1142熊穴沢避難小屋−1340天神平駅

はじめに:
厳冬期に八ヶ岳を中心に冬山を一緒に登ったメンバーで、谷川岳西黒尾根にチャレンジする事にした。今年は積雪量が多い為に、近年に出版された雪山のルートガイドでは課題と攻略方法に不足が生じる可能性を考慮して、先輩方のアドバイスにより過去に出版された雪山のルートガイドも参考にした。結果的に、25年前に発売されたルートガイドが示唆する課題と注意事項が見事に反映された西黒尾根の雪山登攀となった。
3月28日
21時半に横浜から北条さんの車で出発する。アタック日と予備日の両日とも降雪であり風が強い事は分かっていたので、ルートガイドや先輩方のアドバイス等をもとに、想定されるあらゆる悪天候、悪条件に対応する装備と撤退基準をメンバー間で事前に設けた。
午前1時に道の駅みなかみ水紀行館に着くと冷たい風に小雨が混じり、明日の登山を不安にさせるが、限られた3時間の短い仮眠に専念する事にする。
3月29日
4時に起きて、谷川ベースプラザの夜間開放の1階駐車場に移動した。駐車場で装備を整え、小雪が舞うなか出発する(雨でなくてほっとした)。谷川登山指導センターの駐車場脇から尾根に取付く。雪は締まっていてツボ足でも歩けるが、時間を節約する為に12本爪アイゼンを付けてさくさく高度を上げて行く。

ラクダの背では岩稜帯に雪庇が発達し垂直と化した雪の段となっており、先行者の単独者が撤退してきた所だった。我々は雪の段を登らず、岩稜帯をマチガ沢側に右下に回り込んでから、トラバースして通過する事が出来た。この場合の代替ルートについては25年前のルートガイドにしか記載は無く、ロープ確保の必要性が記載されているが、残雪期で雪の締まりも良い為にロープを使わずに通過する判断をした。
乗越すとEL1516の山体が目視出来る。下部がブロック雪崩で崩壊している他、途中もクラックが数か所開いている為、岩稜帯を目印にクラックを避けながら登っていく。
ラクダのコルに着くと一安心するも、更に行く手の傾斜は強くなり、霰交じりの吹雪が目出し帽から露出した顔を叩きつけ目を開けるのもやっとだ。その後も、クラックからブロック状に崩れてルートが寸断されている箇所が複数あり、クラックを一旦降りて、登り返して再度雪渓に移る等を繰り返して歩いた。途中、雪庇の上を歩かねばならないラインがあり、エスケープルートがない為にメンバーで間隔をあけて素早く通過した。今考えると雪庇がブロックごと崩壊するのは時間の問題だと思われた為、多少時間がかかってもロープで確保してメンバーの安全を最優先するべきだったと反省するポイントである。
次第に吹雪でホワイトアウトとなり、5m先も見えなくなってしまった。後続のメンバーは目視出来るが、前方の1m先の雪道は白一色になり、左側にあるはずの雪庇、右側にあるはずの崖の陰影が確認出来なくなり、2歩進んで立ち止まり、3歩目に踏み出す位置にピッケルを左前右と3回刺して僅かな傾斜の変化を捉え、また踏みぬきが無い事を確認しながらじりじりと進んだ。
予定したルートでは尾根上に右側に登り、肩ノ広場直下に出る予定だったが、右上する尾根の地形的な事象により、南斜面に張り出た雪庇が進行と共に、東斜面に変化する為に、雪庇の切り返し点を正確に判断する必要性があり、ホワイトアウトの状況下では安全なラインを判断する事は困難と考え、メンバーの助言もありやや左よりを直登しダイレクトに天神尾根の稜線に出る事にした。

雪庇を越えて稜線に乗り出ると、天神平から登ってきた単独登山者がホワイトアウトにより立ち往生している所だった。GPSで方向を確認している間に更にもう1名の道迷いの単独者が合流し、我々はトマの耳を目指さずに単独者2名を加えて、皆で下山する事にした。ちなみに単独者2名と合流しない場合を考えると、我々は旗竿を4本持参していた為、10m間隔で旗を設置しトマの耳に向かう選択肢もあったが、手前の肩ノ広場のだだっ広いエリアでは4本の旗竿も機能する事は困難と判断する為、やはり私の撤退判断に相違はない。
高度を落とす毎に次第に視界が開け、熊穴沢避難小屋の北西斜面でラクダの背以来3時間ぶりの休止を取った。すっかり視界が戻った為、帰りがけに天神平でスタンディングアックスビレー、ブーツアックスビレー、懸垂下降のシステムの確認を行ってからロープウェイで下山した。その後諏訪ノ湯で汗を流し、温かい食事でお腹を満たしてから帰宅した。
さいごに:
今回のルートは、森林限界から上部は私がルート判断やロープの必要性を判断しながら先頭を歩いたが、安全面を最大限に確保できたかと言えば疑問は残る。休憩適地やロープを出す判断は改善の必要がある。しかしながら、安全を最優先するならば悪条件の揃った日に登山は決行しない。メンバーの今季の冬山の経験値が最大限に惜しみなく発揮された山行の一つになったであろう事を願う。そして、この頼りない言葉足らずの未熟なリーダーに、文句ひとつ言わずに最後まで協力する意思を貫いたメンバーに心より感謝を伝えたい。
記録:AB