黒部川 上ノ廊下

日程:2019年8月9日〜13日

行程:
8/9(金):横浜〜東京駅〜長野駅〜扇沢〜黒部ダム〜平ノ小屋 小屋泊

8/10(土):平ノ小屋〜10:00平の渡し〜奥黒部ヒュッテ〜13:10入渓〜14:00熊ノ沢上流 ビバーク

8/11(日):4時起床、5:45熊ノ沢上流〜下ノ黒ビンガ〜7:30口元ノタル沢〜10:20広河原〜11:15上ノ黒ビンガ〜12:44金作谷出合右岸 ビバーク

8:12(月):4時起床、5:50金作谷出合右岸〜金作谷出合上の淵6:56〜9:14スゴノ淵〜10:56立石〜13:10立石奇岩〜17:10A沢登山道横 ビバーク

8/13(火):6:00A沢登山道〜7:00薬師沢小屋〜太郎平〜15:40折立〜温泉〜19:12富山駅〜横浜駅

1日目(8/9)晴れ
今回の山行は会社を予定より早く休むことができたMH、ASAさん、KNさんや青森県からの移動となるKOGさんは、8/9に平ノ小屋に宿泊することにした。小屋のご主人が怪我で山を下りたため予約を断ったそうで、連絡がつかなかった我々と素泊まりの極わずかの宿泊者だった。 MAYUさんは仕事のため8/9の夜行バスで扇沢へ入り奥黒部ヒュッテで合流することにした。
黒部ダム〜平の渡しまでは、標高も低いため天気が良いと暑くてまた荷物が重いのでコースタイムより多くかかります。4時間はかかると見た方がよいです。

2日目(8/10)晴れ
夜行で来るMAYUさんは12時の平の渡しになると想定していたが、なんと10時の船に間に合い合流することができた。
扇沢で6:30始発の電気バス(旧トロバス)に確実に乗って、ハイペースで歩かないと無理なので計画としては12時平の渡しにした方がよい。
10時平の渡し船に乗れたので、12時過ぎに奥黒部ヒュッテに到着し、ビールを購入。
また上ノ廊下の情報と登山計画書を提出した。小屋の主人の情報だと気になる水量は多くはなく昨年同等とのことで、少ないとは言われなれかった。
MAYUさんのがんばりで早く行動できているので沢装備をつけて東沢を下り黒部川出合いの河原に立ち、ビバーク適地の東沢出合へ進むことにした。ビバーク適地を見逃してしまい1時間ほど遡行し熊ノ沢を過ぎた中洲でビバークをすることにした。さらに先に進んでも良かったがビバーク適地があるかどうかわからないため今日のビバーク地とした。
この日は1時間ぐらいしか遡行していないが、川の流れは穏やかなそうにみえて、川の中心に行くと結構流れがあるので、スクラム渡渉を何度かしました。
3日目(8/11)晴れ
4時起床、5:45に出発。計画としては、まず広河原を目指して行動し、広河原の到着時間が2時前なら金作谷出合いまで行くことにした。
遡行して1時間で下ノ黒ビンガに到着、7:30頃に口元ノタル沢出合に到着し、今日の核心部へ向かう、流れの強い所は右岸をヘツリながら進むと足が届かなくなり、私はヘルメットが顔に食い込み、鯉のぼり状態となる。困っているとKNさんが足の届く所をみつけ前に進んでくれて、私はKNさんの足をつかんで何とかその場から退避することができた。淵はザックを降ろして私がヘツリと泳ぎで突破することができ、後続メンバーはフィックスロープで泳ぐ、最後のKOGさんは私のザックをコアラちゃん抱っこで、皆でロープを引っ張り無事にクリアできた。
広河原に到着したのは11時過ぎだったので、休憩を30分ぐらいとった。
上ノ黒ビンガはいくつもの滝が流れこんでいて上ノ廊下で一番の景色だと個人的には思った。記念撮影をしながら進んだ。
景色を楽しみながら進んでいると雪渓がみえてきて右岸に高台のある、金作谷出合とすぐにわかる今日のビバーク地に到着。到着時間が早かったので前に進んでおきたい気持ちもあったが、2天と4天を張れる適地があるかどうかわからなかったので、金作谷出合いをビバーク地とした。
4日目(8/12)晴れ
4時起床、6:00出発、今日の核心である金作谷出合の淵に着く、KNさんが左岸をヘツリと泳ぎで突破、フィックスロープでMAYUさんが行くが、流れが強くフィックスロープでも行くことができない。一度戻って待機していたらKNさんが右岸に渡ってくれて、流れの弱い所をロープ伝わってKOGさんが無事に対岸へ渡った。KOGさんにはその位置に留まってもらいそこからロープで引っ張って全員無事に渡ることができた。
次の難所はスゴノ淵、左岸にハーケンがあり水面から3〜4m上をトラバースするルートがある。DVDにも紹介されていたがそこにはいかず、KNさんが空身で右岸をヘツリ途中で足場の悪いところを這い上がり突破した。次は古川さんが重たいザックを担いでいくが、なかなか水面から上がれなくて苦労した。何とかKNさんがロープで強引に引っ張り上げたがザックを担いだままだと難しいと判断し、以降のメンバーはザックだけを先に引き上げ、人は空身で進むことにした。

次の淵は立石、ここは右岸のヘツリかと思ったが、KNさんが流れの中に足の届くルートを見つけてそこをなんなく行くことがでた。
立石の奇岩では記念撮影をして景観を楽しんだ。立石を過ぎると水量は減ってきたが、単独で渡渉すると流されそうな場所はスクラム渡渉をして安全に進んでいった。
途中河原になり、暑いので衣類調整をして歩くことにした。E沢D沢C沢の順番に沢が右岸側に現れる、途中で左岸に渡らないといけないがなかなか渡れそうな場所がなく探していたら、KOGさんが際どい距離の岩を見事に飛び移り、後の人のザックを受け渡して対岸へ渡ることができた。その後左岸を進み高巻きながら進むとB沢の前で行き詰まり残置の支点を使って懸垂下降を5mほどした。
ここからはA沢へ向かって歩き、17:10頃ビバーク適地に到着した。

ビバーク地は登山道横の平らな場所をみつけて草を踏んで2天を張り、4天は登山道沿いの砂地に張ることができた。 KOGさんが、イワナ釣りを開始、夕方で釣れるかもしれないと思っていたらすぐに1匹釣りあげました。皆大喜びして再度チャレンジをしましたが釣果はこの一匹だけでした。夜は22時まで焚火をして、イワナを焼いて美味しく頂きました。
5日目(8/13)晴れ
4時起床、6時出発。太郎平までの登りは暑くて身体が思ったように動かなかった。2日間沢の涼しい所にいたので暑熱順化できていない身体になっていたようだ。歩きながら、赤木沢を詰めれば良かったと思ってしまうほどだった。
太郎平小屋でジャンボタクシーを予約して折立からタクシーで亀谷温泉(白樺ハイツ)に寄り40分程待っていてもらって富山駅に無事に到着。タクシー代は25,100円。KOGさんは青森県まで帰れないのでホテルに宿泊、KNさんは金沢へ帰省、MAYUさん、MH、ASAは新幹線でMAYUさんが購入した日本酒を飲みながら帰えった。

全体通しての感想・今後のアドバイス:
上ノ廊下の遡行には高度は登攀技術よりも、水の流れを読み、激しい水流や深い淵をどう通過すべきかを正確に判断できる力が必要でした。 今回は11年前に遡行した経験豊富なKOGさん、強い水流とヘツリに強いKNさんの二名が参加し、心強いメンバーと入渓したことが成功した鍵だったと思います。
美しい景色につい目が行ってしまうが、深い淵と激流の渡渉は結構大変です。50mロープを頻繁にだし、渡渉では5人スクラムや2人と3人に分かれてスクラムをしてのりきりました。トポに50mロープを自在に扱えない状態ならきてはいけないと記載されており本当にその通りだと思いました。

我々は事前に一ノ瀬川本流に行き、泳ぎ中心の沢を経験が役に立ちました。
今回は、水量も多くなかったので、高巻きをすることなく水流沿いに遡行できましたが、高巻くとなると沢の行動が1日多くかかると思われます。
服装は上下ウエットスーツが必要、寒がりでリードをする人はさらにネオプレーンのベストを持っていくとよいです。お薦めはモンベルのフロートベスト。ザックはなるべく軽くすることです。今回テント泊としましたが、ツエルト泊が良いと思います。

天候に関しては不安がある場合には入渓しないことです。途中で雨が降ったら停滞することもあるので1日多く計画に盛り込んでおくことです。エスケープは立石まで行くと高天原温泉へ抜けられるそうです。
また広河原からは左岸に渡り2400mの場所へ行けるとトポに書いてありますが難関だそうです。広河原からみた感じは、行けそうにないのでやはり天候に不安がある場合はやめるべきでしょう。荷物のパッキングはザックが完全に水没するのでビニール袋を3〜4重にすることです。シュラフや防寒着はさらにビニール袋に入れた方がよいです。

<KNコメント> 防寒着は長袖フロントジッパーの2mm厚のウエットスーツを着用し、その下はファイントラックのスキンメッシュ長袖のみとした。水の中に5分もいると寒かった。フラッドラッシュRを着て袖なしのベストタイプのフロントジッパーの2mm〜3mm程度のウエットスーツの方が良かったと思う。陸上を歩く時にフロントジッパーは体温調整が楽。
防水は薄い買い物袋では空気が残っていると水圧がかかって破裂してしまうようで穴が開いてしまった。小さな穴から水が入ると抜ける方はなかなか出て行かない。水を背負って歩くような状態だった。0.08mmとかの分厚いビニールで口を強力な輪ゴムで閉めておく必要がある。布団圧縮袋が有効だと思う。

<ASAコメント> 今回は、長い行程と泳ぎの沢ということで、準備と調査は念入りに行った。事前に泳ぎの沢の経験は必須と思った。
自分は、週1回のプールと、一ノ瀬川で泳ぎを体感し、最終的な自分の技量の確認と、装備の確認を行った。沢でのルートファインディングや厳しいところの突破は、全員の協力が必要。今回はメンバーにも天候にも恵まれ、大変楽しい山行だった。
是非、他の皆さんにもチャレンジしていただきたい。

参考
衣類:ファイントラックのドライメッシュの下着上下、スキンメッシュタイツ、沢用シャツ(ファイントラックで2種類あるうちの厚手の方)、ファイントラック短パン、
モンベルの沢用ネオプレーン上下(上着はジップ付)、ライフジャケット、手袋⇒寒がりの人のレイヤードです。

防水:今回は以下で、全く濡れなし。
@〜Bを開ける時は、濡れた手袋を外すこと。
@内側:シュラフ、着替え、食料、等それぞれを個別にビニール。
A内側から2番目:通常の45リットルのビニール袋+太いゴム
B内側から3番目:厚手のザック容量よりかなり大き目のビニール袋+太いゴム
一番外     :スタッフバック大⇒A、Bのビニールが破れないように

(記録:MH)



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