阿弥陀岳北西稜の記録(横浜蝸牛山岳会共同山行)

日程 2020年3月13日〜14日

 <行動記録>
3月13日(金)
横浜21:30→24:00小淵沢IC→24:30道の駅こぶちざわ25:30就寝

横浜を21:30に出発。深夜割引になるのを待って小淵沢ICを出てコンビニで寝酒を調達して道の駅こぶちざわで車中仮眠。

3月14日(土) 4:00(起床)道の駅こぶちざわ→5:00赤岳山荘5:30→北西稜入口7:45→8:20_2400m8:30→2540m稜線9:00→1P_9:30(岩稜)→2P_10:30(ルンゼ)→3P_11:25(トラバース)→4P_12:00(核心スラブ)→5P_14:10(緩斜面ラッセル)→6P_14:40(最後のおまけ)→御小屋尾根14:55→15:20阿弥陀岳山頂15:30→中岳沢コル16:35→17:08行者小屋17:30→19:04赤岳山荘19:20→22:30横浜

4:00起床コンビニで朝食を調達して赤岳山荘まで入った。林道は凍結カ所は少なく容易に上がれた(帰りは雪が積もっていて美濃戸口手前の沢の橋で上がれなくなっている車がいた)

赤岳山荘を5:30に出発。美濃戸山荘までの林道がアイスバーンになっていていきなり苦戦させられた。登山道に入ってからも凍結と岩のミックスで歩きにくい。岩を拾いながら進むが斜度が上がり岩のミックス度合いが減ってきたところでアイゼンを履いた。 摩利支天大滝への入り口を過ぎてしばらく進むとトレースが尾根の方に進んでいるところを見つけた。地図とGPSで確認して場所も良さそうなのでトレースを辿らせてもらう。
急登だが、踏み跡のおかげで順調に高度を上げられた。2400m付近で少しなだらかになり一服できた。そこから少し頑張れば稜線に出られる。尾根に出ると体に雪が積もるほど深々と降りしきる状態になった。

しばらく尾根上を進み摩利支天大滝から継続で上がってくると此処に出るという場所を過ぎて灌木を越え10分程登ると岩尾根が眼前に見える。前回も前々回もノーロープで行けたということと最初からロープを出してしまうと60mロープでも足りないのでしばらくそのまま進むことにする。

しばらく進むとスラブ岩を乗り越えなければならない場所に出た。雪がどんどん積もり、ホールドも草付きの状態も把握できず滑ったら下まで落ちてしまうのでここでロープを出すことにした。しかし逆層になっていて岩では支点が取れず、なんとかハーケンを1枚打ち込んでビレイ支点にした。リードは果敢に小さなホールドを見つけてバイルをフッキングして乗り越えて行き、すぐにプロテクションをとって先に進んだ。ビレイしている間に眼下の沢で大きな音を立てた雪崩が2回発生した。砂糖が流れ落ちるようなサラサラとした接合力をまったく感じさせない雪崩が同じ場所を同じような量で2回流れて行った。ルート上に積もる雪も同じ性質の吹けば飛ぶようなフワフア雪でホールドもステップもクラックもみんな優しく隠してしまう。ここは大丈夫と足を置くと泡を踏むように抜けてしまったり、ここは隙間だと思ってバイルを打ち込むと岩に弾き返されたり効率は上がらず体力ばかりが消耗されていった。

2ピッチ目はトラバース尾根の右側を少しトラバースしてからルンゼ状を登る。足元のバンドはフワフア雪に隠されてしまいステップが決まらず、出だしのトラバースから厳しい。リードのプロテクションがナッツとカムも使い絶妙にとってくれていたので助かった。今期3回目の経験と準備がなかったら危険なトラバースになっていた。ルンゼ状に入っても足は決まらないしバイルは弾かれるし手足はパンパンになってテンションをもらって何とか登りきることができた。

怖いとの定評のある3ピッチ目だが、足元は泡のように踏み抜けてしまい全く信用がないので岩に張り付きながら手のホールドを頼りに通過した。プロテクションを外すのも一苦労で話しに聞く以上に怖かった。
いよいよ核心部となる。出だしが悪く腕力とテンションをもらってなんとか上がった。一旦トラバースして核心のスラブの下に移動する。トラバースは頼れるガバが一つあったおかげでなんとか通過した。スラブは払っても雪がすぐに積もってしまい小さなホールドを探して立ちこんで云々などという余裕はなかった。初心者に帰ってお助けを頼ってロープにぶら下がって引き上げてもらい何とか通過できた。
あとは御小屋尾根まで上がるだけと言うことでそのまま前進したが、吹き溜まりで積雪が深く楽勝とはならず、途中で切って2ピッチで尾根まで上がった。一般道の尾根に出たが新雪に覆われていたので阿弥陀岳山頂まではコンテで移動した。
山頂の積雪は2、30cm程と思われた。途中北稜からコールが聞こえていたので視界が効いていれば人が入っていた北稜の下降を考えていたが、山頂周辺には足跡一つ残ってなく視界も悪いので中岳沢のコルを目指すことにする。不幸中の幸いでフワフワ雪なのでルート上を歩けると積雪前のトレースを足裏に感じることができた。過去に道迷いが発生している東に方向転換して下る場所までは超慎重にルートファインディングして進んだ。東に方向転換して夏道の鎖を見つけて一安心。氷結した斜面には今日の雪は着かなかったようで鎖をつかみつつキックステップで降りた、そのまま下ってしまいそうになるが鎖がなくなるところで北寄りに進む必要がある。ルートを失うことなく中岳沢のコルに到着することができた。時間は16:30。中岳を登り返す気力はないが、積雪量は20cm程終日風は弱く日照がなく気温も低め安定の一日であったことを根拠に中岳沢を一気に下ることにする。沢の中間部は雪が吹き溜まっていて腰までのラッセルとなり雪崩が心配になったがフワフワ雪だったので斜度まかせに下った。

文三郎尾根の道に出てやっと一安心。行者小屋前で30分程装備の解除と休憩をして17:30に下山開始。天候のせいなのかテントは少なかった。ヘッデン残業で19時過ぎに車に到着することができた。夕食はコンビニ調達で22:30に横浜に戻った。 今回の山行は、やまゆり通信272号のNさんの寄稿にあるように、南岸低気圧による降雪の特徴の低気圧進行方向前面の層状雲から雲粒の付着が少ない針,さや,角柱,交差角板,鼓などの結晶から構成される,まるで グラニュー糖のようにサラサラ した降雪に終日見舞われた。この雲粒なし降雪結晶は弱層を形成し、風で吹き溜まるとさらに上載積雪となって表層雪崩を生じるので細心の注意が必要だ。

記録:KN


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