南八ヶ岳・赤岳天狗尾根


2013年1月11日(夜発)〜13日


  

【行動概要】

1月11日(金)
横浜22:00発=自動車=25:00道の駅南きよさと

1月12日(土)
6:00起床→7:00道の駅南きよさと駐車場発→7:15美しの森無料駐車場7:50→9:15林道分岐→9:30地獄谷入渓→10:25赤岳沢出合小屋10:45→10:55天狗尾根取付→12:00幕場直前の岩稜ナイフリッジ→12:05幕場(2100m付近)

1月13日(日)
4:00起床→6:20幕場発→8:20カニノハサミ→8:30草付き段状岩場→8:35大天狗手前の30m岩場取付(順番待ち)9:00登攀開始→9:55登攀終了→10:10大天狗手前の岩峰(ニセ大天狗)取付(順番待ち)10:20→10:35大天狗取付(順番待ち)10:50登攀開始→11:15大天狗登攀終了→11:35小天狗→11:55主稜線12:10→13:25キレット→14:15ツルネ→(ツルネ東稜)→16:15赤岳沢出合小屋16:30→林道→18:20美しの森駐車場

【行動記録】
1月11日 晴
横浜から中央高速を通って須玉インターで降り、美しの森まで15分くらいの道の駅南きよさとの駐車場に車を止め、仮眠。先客が1パーティいた。
1月12日 晴
 今日は、4時間程度の行動予定なので、ゆっくり寝て、6時に起床した。身支度を整えて美しの森駐車場へ向かう。美しの森駐車場には、他に2パーティが準備をしていた。1パーティは天狗尾根、もう1パーティは旭岳東稜のようだった。

駐車場で装備を整え、一段上の林道に上がる。林道にはすぐ車止めのゲートがあった。足元は雪が凍って多少滑りやすい。しばらく歩くと、雪道となった。途中、右へ上がると羽衣池、左へ進むと天女山へと続く道と交差した。まっすぐ林道を進む。林道をそのまま進んでいくと、自然に川俣川東沢沿いを進むことになる。左側のかなり下に見えていた川俣川東沢が少しずつ林道に近づくとやがて地獄谷入渓となる。幅広い林道のまま道なりに河原へ入る感じだ。すぐに比較的新しそうな大きな堰堤に出合う。おそらくこれらの堰堤の工事をするために幅広の道路が作られたのだろう。地獄谷は最初、連続した堰堤を6個(乗越すというのでは6個、すぐ脇を通るのを入れると8個か)、最後のを除いて左岸から乗越す。乗越すところには、パイプのハシゴなどもあった。堰堤がなくなるとしばらく沢の中を歩く。じきに、赤岳沢出合小屋に着く。出合小屋の外には小屋掛けのトイレもあった。

この後、アイゼンを着けようか考えたが、雪もそれほど硬くないのでツボ足のまま行くことにした。休憩後、上流部へ進むとすぐ分岐の道標があり、右の赤岳沢に入り左岸を行く。10分ほども行くと、左に浅いルンゼ状が尾根に向かっており、赤テープもあった。そのすぐ先に踏み跡がトラバース気味にそのルンゼの途中に向かっていた。そこを登って尾根に上がった。
樹林帯を進むと、しばらくして尾根がやせ岩稜となった。1か所、2m程度の岩場があり、そこは右から立木も使って登った。そのあともう1か所、雪と岩のミックスの短いナイフリッジがあった。両側が切れているので降りるときちょっと緊張した。しかし眺望は抜群だった。後続のパーティでは、そこでアイゼンを着けた人もいたようだ。
このナイフリッジを下るとすぐそこはなだらかな尾根だった。多少斜めになっていたが、低い方へ雪を集めて整地し、そこを幕場とすることにした。標高2100mくらいの場所だろう。12時を回ったところだった。後続のパーティも到着し、すぐ上と少し斜面を上がったところにある岩の基部にテントを張った。
夜になっても、気温はそれほど下がらない。移動性高気圧に覆われているためだろう。若干風があったが、それほどでもなく、みな熟睡することができた。

1月13日
 4時に起床。天気は良好。アイゼンを着け、ハーネスを着けて6時20分に出発。樹林帯を進むと、30分ほどで一旦樹林が切れた。そこにもテントを張れるスペースがあった。その後もまだまだ樹林が続く。テントが張れる場所も数か所あった。昨夜の幕場から約2時間、急に開けて岩稜地帯に入った。眼前にはその名のとおりの姿をした奇岩・カニのハサミが姿を現した。
カニのハサミはその基部の左側を巻いて通過する。そこは右は岩が出っ張り、左は切れ落ちた崖が少しえぐれている。その上、立ち木がザックに当たる。ガイドなどでは、「難なく通過」と書いてあるが、ちょっと緊張する。それぞれのやり方で通過したが、私は、岩を右手でアンダーで押さえて、右足をできるだけ先へ出して、左足をその先の雪面へ置き重心移動して通過した。
カニのハサミを通過するとすぐ10mほどの草付、岩、雪のミックスの壁があった。段々になっていたので、ザイルなしで通過した。

行すぐに30mの岩壁にぶつかる。先行パーティが取り付いている。リッジ右の壁基部の雪壁に入り、潅木でセルフビレーを取る。少し混んでいるので、後のメンバーは手前の立木にアンカーを取って自己確保した。ダブルロープ8mm50m1本を使うことにする。

先行パーティのラストに続いて登攀開始。まず右への7、8mのトラバース。雪面のあと岩が露出している。ホールドを拾ってカニ歩き。ホールドは細かいが充分立てる。トラバースのあとルンゼに入る。ルンゼに上がるところがちょっと立っている。細かいホールドに右足で立って、ピッケルのピックを草付に打ち込んで上がった。あとは雪のルンゼから雪壁。15mほど登って立木にロープを固定した。山下さんと中村さんがタイブロックで登り、最後に久野さんが私の確保で登った。なお、後続のガイドと思しき人は、ルンゼに上がって5、6m登った右手の立木でフォロワーを確保して、後はノーザイルで雪壁を上がってきた。 岩場・雪壁を抜けると、先に岩峰が見えた。ここは基部を左から巻くことにした。草が踏まれていて、踏み跡と分かった。

巻いていくと、眼前に割りと大きな岩峰が現れた。ニセ天狗、前天狗と名づけてもいいくらいに思える大きさだった。そのまま巻き道を進むと下ってその岩峰の基部に着く。右にルンゼ、正面に7、8mのU級程度の岩。正面の岩を登る。やさしいが、左下は切れているので慎重に登る。バンド状の草付を少し進み、一段上がったバンドを右にトラバースした。そのまま右からからむように岩峰を巻いて進む。
岩峰を回り込んだ位置から大天狗が見えた。その右には尖った小天狗も見える。
 すでに先行パーティが基部と右肩の終了点に見える。
基部に着いて立木にビレーを取り、先行パーティが登るのを待つ。正面の岩の中間に残置スリングが下がっている。そのピンにプロテクションを取れる。壁の高さは約10mほど。
 西リードで登りはじめる。上部の上へ抜ける手前が立っていて重荷ではがされそうになるが、手掛かりはガバがあり、細かいフットホールドを拾って思い切って上がればOK。上がったところの壁に真新しい鎖があった。しっかりしていたのでその鎖をビレー点とした。30mの壁と同じシステムで全員登った。なお、そのビレー点の鎖には、知り合いが先週残置して回収を頼まれたカラビナがあったので、回収した。
終了点の肩からは雪の斜面をトラバースすると小天狗との間のコルに出た。小天狗は左から巻くとのことだったが、岩峰のすぐ左のルンゼ状の場所へ段状の踏み跡があったので、当初そちらへ登ってみた。抜けるところが岩になっていて、行けなくはないが、落ちると怪我をするだろうし、重荷なので止めた。戻って下から巻いているトレースをたどった。10mかそこいら行った地点から右の階段状の岩と草付のミックスを登って稜上に出た。
稜上に出ると、主稜線への最後の雪壁が眼前に現れる。ひと登りで鎖のある一般登山道に出る。しばらく休んで来し方を眺めた。

クサリ、ハシゴの一般登山道をキレットへ下る。ハシゴを下りる背後には大天狗が見えた。キレットへの下りは雪とガラ場だが、特に問題はなかった。風もそれほど強くなかった。キレットから登り返してツルネに至る。
左下の写真の左へ飛び出た岬のように見えるところがツルネ。ツルネには立派な道標があり、出合小屋への表示があった。ツルネからはツルネ東稜を出合小屋へ下る。ツルネ東稜は1か所左の尾根に移るように下るところがあった。赤テープ等があり間違わなくてすむ。下部にロープを出した方がいいかもしれない岩場があると、ガイドにあったが、そういう場所には行き当たらなかった。4時ころ地獄谷本谷に下り立った。
右岸を歩いて出合小屋に出た。小屋の周りにはテント村ができていた。暗くなる前に地獄谷を抜けたいので、少し休んで出発する。地獄谷を抜け林道に出たころ暗くなり、ヘッ電を点けて林道を美しの森の駐車場へ急ぐ。2時間弱で着いた。
私は約8年ぶり、他の3人は初めて。以前行ったときは湿った小雪が舞う中ラッセルの山行で、ルートも断片的にしか覚えていず、今回ルートファインディングに多少不安があったが、コンディションにも恵まれ楽しむことができた。
2日目は、テン場から主稜線まで5時間35分、主稜線からツルネまで2時間5分、ツルネから赤岳出合小屋まで2時間、出合小屋から美しの森駐車場まで1時間50分、総行動時間11時間30分だった。体力もさることながら重荷や不慣れなどの要素もあるだろうから、いろいろ考えて行動時間がもう少し短くなるようにできればと思う。

ガイドパーティと思われたが、軽装備でロープも30m程度のパーティが数パーティいた。出合小屋をベースにして1日で周回するという形も、天候がよければあり得るのだろう。ロープは確かに、30m程度が1本あれば足りると思われる。しかし、懸垂下降で撤退することを考えると、50mの方が使い勝手がいいだろう。そのへんで判断することになるのだろう。  (N 記)

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