八ヶ岳・横岳石尊稜・阿弥陀岳北稜


日程:2012年12月22日(土)〜24日(日)


  

はじめに
冬山合宿は23日に行者小屋CSで石尊稜の4人と阿弥陀岳南稜を越えてくる6人と翌日赤岳登頂の為に直接入山してくる4人と集合し14名が集まる計画だ。

◆ 12月22日(土):小雨→曇り→晴れ(それほど寒くはない)
6:00二俣川駅集合→(南町田経由)→11:20美濃戸11:45→(北沢経由)→15:50行者小屋

22日朝6時に二俣川駅に集合、途中Bunさんを南町田駅でピックアップして16号を進む。中央高速笹子トンネルの通行止めが心配されたが大きな渋滞はなかった。ただ降雪のためチェーン規制の渋滞があり美濃戸には11時過ぎに到着となる。美濃戸口からの林道も4WDの威力を発揮して問題なく入ることができた。
 出だしは小雨が降っていた。各自の装備は25kg近くバテ気味になりながら赤岳鉱泉に14:30到着。
鉱泉を過ぎて明日のアプローチを下見する。赤岳鉱泉に近い入口からのトレースは新雪に埋もれて不明瞭になっていた。今回は中山峠に近い道標から入る予定でしばらく進んでから踏み後を見つけて探索してみたが雪崩の痕があり北沢右俣へ抜けるトレースは無かった。十分な下見は出来なかったが明日は赤岳鉱泉側からなら入ることにして行者小屋に向かう。

行者小屋周辺にはテントが10張近くあった。水場も利用出来てトイレも使用できた(ただしテン場代1000円/人/日必要)

◆12月23日(日)晴れ(寒い)
 5:00起床7:00→7:25北沢右俣入口→9:00石尊稜末端リッジ取付き→10:00下部岩壁1P目登攀開始→12:15下部岩壁上部12:20→13:40三叉峰ルンゼ→14:10鉾岳ルンゼとの出合→15:00行者小屋BC

暗い時間からの行動も考えたが、北沢右俣のアプローチを十分下見できていないこともあり明るくなってから行動することとした。6:30出発のつもりだったが結局7時を過ぎてしまう。
 出遅れた感じであったが北沢右俣のトレースは無かった。覚悟を決めてラッセルすることにする。
かろうじて見える踏み後を外さない限りはそこそこのスピードで進めるが、雪の下は沢なので踏み跡を見失うと岩の間に滑り落ちて深く沈みこむ。休憩をしていると4人パーティーが追いつきラッセルを交代することになる。しかし彼らは三叉峰ルンゼに入っていったためすぐに再びラッセルとなる。三叉峰ルンゼの出合いを過ぎると下部岩壁は目前に見えもう少しなのだがいよいよ雪は深くなり体力を消耗することになった。
石尊稜末端リッジへトラバース気味に進み、弱点を狙って直上し尾根に上がる。尾根の上を下部岩壁ビレイ点の20mほど手前の潅木まで進み登攀準備をする。ノーザイルでビレイ点に移動してロープをセットし10:00にSさんリードで登攀を開始する。
三叉峰ルンゼを見下ろすと先ほどの4人パーティーが氷瀑を登っているのが見える。晴天に風も無く景色は素晴らしい。
いわゆる真ん中のルートを登り始めるがいきなり厳しそう。ハンガーボルトで最初のプロテクションを取ってやっと笑顔。その先もけっこう厳しそうで右方向へ登りその後左へ転じてトラバース気味に進み下から見えなくなった。50mが目一杯延びたところでビレイ解除のコール。
 今回は4人のためロープを3本使いリードのShimさんがダブルロープで登り2番手はBunさん、3番手はYaさんで4番手kunはYaさんにロープを引き上げてもらい登るシステムをとった。2ndのBunさんはピッケル1本で手がかりが取れず出だしから苦戦。Yaさんはダブルアックスをガンガン打ち込み登っていく。ラストのKunは禁じ手のロープ掴み連発でなんとか上りきる。全員が上りきるのに2時間近くかかってしまった。

終了点から一段上がり眺めの良い場所で協議した結果、前進をあきらめここから撤退することにする。一段上がった分50mでは下まで届きそうになく、支点も枯れた這松しかないので短い懸垂で下降してから再度太い木を支点にセットし直した。50m下降して下部岩壁のビレイ点に戻る。三叉峰ルンゼに朝の4人パーティーの付けたトレースが見え状態も良さそうなのでそちらへ50m懸垂で降りる。そこからは雪崩を警戒しながら出合まで移動し休憩。
15時に行者小屋のCSに着くと赤岳隊4人が既に到着していて出迎えてくれた。しばらくすると阿弥陀岳南稜隊6人も到着し総勢14人が無事集合した。
赤岳隊の会長が宣言通り高級牛肉を差し入れてくれた。霜降りの肉をジュジュっと焼いて腹いっぱいの夕食となった。夜はシンシンと雪が降っていた。

◆12月24日(日)晴れ(寒い)山頂は小雪
 5:00起床7:20→7:35中岳沢入口→8:45ジャンクションピーク→9:00第二岩稜基部→10:10第二岩稜2P目→11:10阿弥陀岳山頂11:20→11:50中岳コル→12:30行者小屋13:25→15:25美濃戸

朝テントを出ると20cm程サラサラの雪が積もっていた。昨日正午の天気図では日本海に小さな低気圧が発生していたが天気は良い。おそらく夜のうちに雪を降らせながら通過したと思われた。
 今日は阿弥陀岳南稜隊と同一行動となり総勢8人で阿弥陀岳北稜へ向かう。
 文三郎尾根への踏み固められた登山道をしばらく進み道標の脇から中岳沢に入ろうとしたが積雪が多く、もうしばらく上に進んでから沢に下りることにする。3人パーティーが先行して行った。早めに稜線に上がろうと言うことで先行するパーティーのトレースと別れる。昨晩の雪が作り出す景色が非常に美しい。
8人で交代しながら稜線上をラッセルで進むと先行した3人パーティーも中岳沢から稜線に既に上がっておりトレースを追うことになる。
 ジャンクションピークを過ぎ急登(第一岩稜)をところどころ這松をつかんだりピッケルを頼ったりしてノーザイルで登ると第二岩稜の取付きはすぐ。

阿弥陀南稜隊のNさんは左奥の凹角のルートを選択したのでこちらはクラックのルートにkunリードで取り付く。クラックから入り一旦外に移動しハンガーボルトでプロテクションを取る。ホールドはしっかりしていて登りやすいが空中に出る感じで高度感がある。すぐのビレイ点は凹角ルートと交差するためもう少し延ばすことにする。先は固い雪の斜面でピッケル頼りに登る。プロテクションが取れずランアウトするため岩よりも緊張した。ピナクルにスリングを掛けて終了。Nさんも登って来て後続も続々上がってきてピナクルの周囲に8人が集まる。Shimさんリードに交代し2P目の登攀準備をする。2P目は階段状になっており足の場所を間違えなければ登りやすかった(リードは違う感覚かもしれない)登りきるとナイフリッジだが、雪がしっかり付いていて歩きやすかった。(灌木は雪に埋もれていてピッケルをアンカーにして確保)

天気は少し崩れてしまったが、阿弥陀岳頂上に移動して全員で握手をして完登を祝った。
しばらく休憩して中岳コルまで一気に下降。阿弥陀岳南稜隊は昨日フルボッカで歩いているので荷物も軽量な今日は楽勝な雰囲気。中岳沢を下り行者小屋に12:30に到着。阿弥陀南稜隊はバスと電車利用なので一足先に出発した。こちらは美濃戸から車なので美濃戸口までの林道で追い越すかな?などと余裕を持って出発。

ところがいざ美濃戸に着くと車のエンジンがかからない。バッテリーが上がったと思い三重から来ていた隣のパーティーの方にブースターケーブルで助けて頂いたがそれでもエンジンがかからない。原因はリモコンキーの電池が寒さで弱ったせいで、キーが温まったら復活してエンジンを掛けることが出来た。リモコン無しでエンジンを掛ける方法を事前に調べていなかったので慌ててしまった。林道で追いつけると思ったがそんなこんなで遅れて美濃戸口でバス待ちのみんなにやっと会うことが出来た。改めて完登を分かち合い帰路についた。

笹子トンネルの渋滞もなくいつもの週末より順調な感じで19時過ぎに横浜に着くことが出来た。

終わりに
行者小屋に14人無事集まった時はわくわくする瞬間だった。
合宿全体では石尊稜・阿弥陀岳南稜・阿弥陀岳北稜・赤岳本峰・甲斐駒ケ岳坊主尾根・本沢温泉から硫黄岳と多くの計画が立てられ総勢23名がそれぞれの冬山登山を実践できて、
神奈川山岳会の30周年の節目にふさわしい記憶にのこる合宿だった。

K 記 2012年度山行報告へ