谷川岳一ノ倉沢烏帽子岩 南稜

日程:2012年9月14日(金)夜〜15日(土)


  

9月14日(金)
21:30横浜駅西口 県民センター前集合−24:45谷川岳RW駐車場(テントで仮眠)

県民センター前で集合、Ku車、S車に分乗して出発。第三京浜−環八−関越道と順調に進み、高坂SAでの休憩を挟み、水上ICから谷川岳ロープウエイ(RW)の駐車場に向かう。24:45駐車場着。駐車場1Fには既に7〜8台の車が停まっており、その大半は車の傍にテントを張って仮眠している。我々も駐車場奥にテントを張り仮眠体制に入る。25:00就寝。

9月15日(土)
3:00起床 3:45出発−3:50登山指導センター−4:40一ノ倉沢出合

 わずか2時間の仮眠で起床。テントの撤収、朝食、トイレを済ませヘッドランプを点けて出発する。ベースプラザ前から右に林道を進み、マイカー規制のゲートを過ぎたところにある谷川岳登山指導センターで登山計画書をポストに投函する。寝不足で頭の芯に鉛のような塊を抱えたたまま、重い足取りで星一つ見えない真っ暗な林道を黙々と歩き、一時間ほどで一ノ倉沢出合に着く。ここでハーネスを装着し、いよいよ一ノ倉沢の懐へ踏み込む事になる。

5:00一ノ倉沢出合−6:00ヒョングリの滝上部−6:40テールリッジ取付−7:20中央稜取付−7:45南稜テラス

 まだ薄暗い出合から正面の一ノ倉沢を見上げると、正面の烏帽子岩は上部が雲に隠れていて全容を見ることは出来ない。
 しばらくゴーロを歩き右岸の踏み跡に入る。途中一度沢に下り、わずかに残った雪渓の上を歩き残置ロープのある岩場を約10m登ると再び右岸の巻き道に入る。蒸し暑さに噴出す汗を拭いながら急な斜面を登ると、ヒョングリの滝上の懸垂下降点に出る。残置ロープが張ってあるが、かなり古く一部は擦り切れて芯が露出しているところも見える。ここから50mロープ一杯伸ばしたところにあるバンドに一旦下り、そこから更に残置ロープで7m位下りたところで沢を渡る事になる。見下ろすと今にも崩壊しそうな分厚い雪渓の下からゴーゴーと水が流れ落ちて水しぶきを上げている。
 KGさんを先頭に順に全員が懸垂下降、沢を渡りテールリッジに取付く。リッジに乗るまでの60〜70mは傾斜がきつい上に浮き石が多い為落石に最大限の注意が必要だ。リッジに乗ってしまえば後は靴のフリクションを信じて登るだけ、およそ40分で中央稜取付きに着く。ここからはバンドをトラバースして南稜テラスへ向かう。

8:00登攀開始−12:15登攀終了
 南稜テラスは畳6畳位、先行パーティーが登攀の準備をしていた。ここで我々も装備を整えて南稜アタックに備える。

1P目:(30m)南稜テラスから直上し右斜めに走るバンドをチムニーに向かう。チムニーは最下部がハングしていて直上も出来るが右のリッジを回ってチムニーの上部に出る方が比較的易しい。先頭のKGさんがリードで登攀を開始。ロープの流れが悪く古川さんはロープの引き上げに苦労しているようだ。続いて山下さん、松島(秀)さんが登るが、皆チムニーにはてこずっているようだ。
二番手のNさんはロープの流れを良くするため左の支点では120mmのスリングを使う。流石に綺麗なラインだ。三番手のKu-PはKuさんがリード。Maさんのすぐ後を安定したロープ裁きで登っていく。
2P目:(25m)フェースを右上又は直上し、左に回って支点へ。中間支点が意外に少ない。リードはMhさん、Maさん、S。
3P目:(30m)草付の踏み跡を辿り緩傾斜の岩を登った所でビレー。リードはKGさん、Nさん、Kuさん。
4P目:(20m)フェイスを左上し右のリッジに出たところでビレー。リードはYさん、Maさん、S。
5P目:(25m)リッジを登り途中奥壁側に出てリッジを登る。左側のフェイスの方がやや易しい? リードはMhさん、はNさん、Kuさん。
6P目:(20m)奥壁側のクラックを登る。(馬の背リッジ) リードはKGさんが(6P・7Pを一気に登る)、Maさん、S。
7P目:(20m)細かいホールドを拾い、最後の2mは傾斜の強いフェイス。核心部。リードはNさん、S。

12:30懸垂下降開始−15:00鎌形ハング下−17:10テールリッジ取付き−17:40ヒョングリの滝上部−18:30一ノ倉沢出合−19:30駐車場

 終了点は4〜5人がやっと立ち止まれる程度の狭いテラスだが、無事完登できた達成感と満足感で皆の表情からは笑みがこぼれる。懸垂支点にロープをセットして、KGさん先頭で下降を始める。6ルンゼ側のチムニーを40m×2回懸垂下降して4P目のビレー点まで一気に降りる。ここから更に3P懸垂下降し、南稜テラス下の鎌形ハングでアプローチシューズに履き替え、やっと人心地つくがまだ気を緩めるわけにはいかない。テールリッジ最下部を懸垂下降し、衝立前沢側へ降りるいやらしいスラブを慎重にトラバース気味に下りる。ここにマムートの真新しい8mmロープがフィックスされていた。朝、懸垂下降した岩場を慎重に登り、日が落ちて薄暗くなってきたブッシュの中の踏み跡を一ノ倉沢出合に急ぐ。出合に着き、無事下山を祝って全員でハイタッチした時には、日は既にとっぷりと暮れていた。降りだした雨に合羽を着込み、時折雷鳴を聞きながらも安堵感で足取りは軽い。駐車場着が19:30、実に16時間の行程だった。20:00駐車場−赤城高原SA−23:50横浜
【反省点】
今回は稜線に抜けずに同ルートを下降したが、雪渓が消えているこの時期にテールリッジから一ノ倉沢を下降する危険を考えると、やはり稜線に抜けて西黒尾根を下降した方がより安全だったと思える。 本チャンでは渋滞を引起こさない為にも一つ一つの動作を手際よくそして手早く確実に処理する事が求められる。本チャンを想定したスピードクライミングのトレーニングが必要である事を実感した。

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