雲取山〜甲武信ケ岳・縦走

【 山 域 】 奥秩父

【 日 時 】 2004年5月1日(土)〜5月5日(水)


 三峰山から金峰山までの奥秩父完全縦走を目指してスタートした山行であったが、悪天候に結局は甲武信ヶ岳止まりとなった。計画当初から無理はしないつもりで、完走できたらラッキーぐらいに考えていたので、西半分が残ってしまったことには個人的にはあまり悔いは無い。そのうち、また機会があるときに残りの区間を歩こうと思う。
 今回は全くの禁酒山行となった。意外にもあの今井さんが酒を持ってこなかったからだ。天気が悪かったのは、そのせいだったのだろうか?
 借りた4天が、穴だらけで、ポールのゴムも伸びきっていた。広げてみたのが出発前日だったので、代わりも見つからず、とりあえず穴には応急処置でゴアのリペアシートを貼っておいた。なんとか雨にも持ったが、事前確認を怠ってはいけないと感じた。なお、この4天はその後、廃棄した。

5/1(土)

【 天 候 】 晴れ

【 ルート 】 三峰山950→1130霧藻ヶ峰1139→前白岩山1300→1356白岩山1405→1510雲取山荘1545→1605雲取山1630→1645雲取山荘

 6:40池袋駅に集合し、6:50発の西武レッドアロー号で一路西武秩父を目指す。初めての集合場所だったが、皆混乱無く集まれてよかった。その後、秩父鉄道、バスと乗り換えて、9:10に三峰山ロープウェー乗り場に到着。9:15のロープウェーの始発に合わせるべく着いたつもりであったが、切符売り場には行列が並び、さらに係員の要領が悪く、始発から3本目にしてようやく乗りこめる。
 自宅を出てから5時間近くかかり、ようやく山頂駅に到着。ここから、平井さん、今井さん、渡辺さん、溝越の順で歩き始める。今回の山行中はずっとこの順番は不変だった。霧藻ヶ峰までは整備された歩きやすい道を大勢の登山者と行く。快調なペースで歩くので、5日間の長丁場を考え「もう少しゆっくり行きましょう」と声を掛けたら、皆揃って「なんで?」という顔をされた。「やばい、私が一番最初に顎を出しそうだ。」

 山頂手前の広場は開けていて、やや霞んではいるが雄大な景色を楽しむ。小屋の立つ本当の山頂より、こちらの方が景色が良く、好きだ。正面には両神山、西に大きく聳える和名倉山にも、個人的にいつか行ってみたい。少し行くと秩父宮のレリーフがあるが、顔が大きいためか、少し異様な感じがする。快調に白岩小屋を過ぎ、白岩山まで登っていく。山頂には鹿が待っていた。ふと一人の登山者が恨みでもあるのだろうか鹿を追い始める。少し目が危ない。しかし、一旦は逃げてしまった鹿も、暫くすると戻ってきた。人間の与える食べ物が目当てなのだろう。人にも鹿にもいろいろなのがいるものだ。ワンピッチで雲取山荘に到着。当初計画では山頂の避難小屋に泊まるつもりであったが、トイレが綺麗なこちらにテントを張ることにした。

 ここで、今井さんの靴擦れが発覚。歩いている最中はあまり気にならなかったようだが、靴下を脱ぐと皮まで剥けていた。履き慣れた登山靴とのことで本人も不思議がっていた。見た目非常に悲惨だったが「大丈夫」とのことなので、翌日以降の山行も続けることとする。さらには平井さんのマットのパンクが見つかる。長丁場なのに、初日からいろいろあって先が思いやられる。

 雲取山山頂までは空身で往復することにした。メンバー中、唯一雲取山に未踏の今井さんは靴擦れ治療のため残念ながら断念。雲取山頂からの景色は霞んではいたが、これから目指す甲武信ヶ岳まで確認する事ができた。混雑していると思われた山頂避難小屋を覗いてみると案外空いていた。

5/2(日)

【 天 候 】 曇りのち晴れ

【 ルート 】 雲取山荘510→三条ダルミ542→三つ岩755→842飛竜権現859→禿岩905→1120将監峠1135→1305唐松尾山1343→黒槐ノ頭1453→1610笠取小屋

 この日は歩行時間が10時間と長いので3:30起き。晴れると思っていたが、夜半に雨が降り、朝はどんよりとした天気。雲取山は前日に登ったのでパスし、巻き道を行く。三ツ山付近は険しい地形だが、空中桟橋などがっちり整備されていて問題ない。飛竜権現に着いて、予定では飛竜山まで空身でピストンするつもりであったが、天気の悪さに皆気乗りせず割愛。すぐ先の禿岩には寄る。稜線からせり出した岩場で展望が良いはずであるが、やはり何も見えない。この先登山道は大常木山、竜喰山の山腹を巻いていく。こういう巻き道は水が得られるところがメリットだが個人的には陰鬱だし、小さなアップダウンがあってあまり好きではない。ともあれ、楽々と将監峠に到着する。ここはなだらかな草原で、晴れていればさぞ気持ち良いだろう。我々が休憩していたら、女性一人を交えた数人の学生達が小屋のほうから空身で登ってきて、フリスビーを始めた。まるで青春映画の一コマのような風景を、皆で眩しそうに眺める。

 ここから笠取小屋までは巻き道コースと尾根コースがあるが、今井さんの靴擦れを気遣って巻き道を行くことに決める。ところが、巻き道が通行止め。平井さんの地図では巻き道への別の入口が出ていたので、そちらを探してみるが見つからず、結局今井さんには悪いが尾根コースを辿ることになってしまった。いつのまにか天気も回復してきて晴れ上がり、木々の間から大菩薩方面が見える。唐松尾山は本日の最高峰となるが、木々に囲まれて展望は無かった。あとは下るだけだと考えていたら、意外に厳しいアップダウンが黒槐ノ頭まで続く。ここまで長丁場だったので笠取山はパスして正面から眺めるだけとする。笠取山はお椀をかぶせたような特徴ある三角形。明るい防火帯が山頂まで続き、ほんの手が届く距離に頂上が見えるので、登高意欲が湧くが、実は結構つらい登りなので、次回登りに来ようということで落ち着いた。ゆるゆると林道を下って笠取小屋に到着。草地の上にテントを張れたので、快適であった。小屋は一昨年のゴールデンウィークに訪れたときには閑古鳥が鳴いていたが、この日はそれが想像できないような盛況振りであった。

 テントで我々がくつろいでいると、一人の登山者が平井さんを見つけて近づいてきた。途中の休憩で帽子を忘れそうになったところを、平井さんが教えてあげたことに恩を感じて、改めて礼を言いに来たようだ。聞くと、とある自衛隊の幹部からもらった思い入れのある帽子とのこと。最後に我々一行のことを「家族ですか?」と・・・。

5/3(月)

【 天 候 】 霧+強風

【 ルート 】 笠取小屋550→雁峠611→654燕山705→833水晶山843→920雁坂小屋

 この日の予定は甲武信小屋までで、標高差1000mを登ることとなる予定であった。前夜に小屋の人から曇りのち晴れの天気と聞いていたので、多少の期待をもちつつ起きると、前日と同様にどんよりとしている。雁峠も将監峠と同様に気持ちの良い草原であるが、この日は強風が吹き荒れていて寒いだけだ。稜線に上がれば強風も静かになると思っていたが、その考えは甘く、霧をも運んできてますます寒い。古礼山は巻き、水晶山に着く頃にはすっかり気力が萎えてしまい、「翌日以降はさらに天気が悪いので金峰までの縦走はあきらめよう。そうとなったら今日はゆっくりと途中の雁坂峠で泊まろう。」ということとなった。かくして、10時前にはテントの人となってい
た。
 平井さんと渡辺さんはさすがに歩き足りなかったらしく、午後になって雁坂嶺まで往復してきた。

 16時の天気図では翌日はやはり悪天となることが予想された。私は下る気満々だったが、皆の熱意に押されて甲武信までは行くこととした。


5/4(火)

【 天 候 】 小雨

【 ルート 】 雁坂小屋516→雁坂峠540→630雁坂嶺640→東破風山800→822西破風山830→906笹平避難小屋915→巻道分岐1040→1102甲武信小屋

 この日の行程は短いが、午後には荒れると予想して、早めに出発する。前日以上の強風に悩まされると思っていたが、なんとかなりそうな感じ。雁坂嶺から下りで逆方向から来た登山者に逢い、ホッとするとともに、コースの様子を尋ねて問題なさそうなことを確認する。東破風山と西破風山の間はアップダウンは少ないが露岩が現れ歩きにくい。時折南側が開けるが、風が吹き上がってくるだけで展望は無い。西破風山から鞍部の笹平避難小屋に下るところでは、風にさらされるところだが、思ったより強風の影響を受けず助かった。

 避難小屋で一休みする。扉は鉄製で頑丈だが、小屋自体は木製で隙間だらけ。ここに泊るにはテントかツェルトが要りそうだ。ここから、登り返して木賊山に近づくと、はじめて雪が出てくる。木賊山は翌日登るので、巻き道を辿るがここは凍ったところもあり、慎重に進む。11時に小屋に到着。テン場には雪は無し。平井さん、渡辺さんの軽登山靴は歩行中に雨で浸水していたようで、靴下も濡れていて悲惨であった。

 テン場は樹林帯の中で風の心配は全く無かった。雨も夜半までそれほどひどくなく、少し拍子抜け。結局テントは我々を含めて2張りだけであった。

5/5(水)

【 天 候 】 雨

【 ルート 】 甲武信小屋710→725甲武信ヶ岳740→750甲武信小屋805→木賊山830→1869点1020→1220西沢山荘1230→1300西沢渓谷入口バス停

 朝から雨が降っていたので、暫く様子見していたが、やみそうも無いので出発する。最初にテントを畳んで荷物を小屋の屋根つきテラスに置き、空身で甲武信ヶ岳を往復する。少しだけ氷の部分があったが、アイゼンをつけるほどでもなかった。山頂からの景色は真っ白だが、なんとなく5日間の感慨にひたって去りがたい気がした。

 小屋に戻って荷物を背負うと、最終日にもかかわらず、雨を十分に吸ったテントが入っているので最高に重い。まずは甲武信ヶ岳とほぼ同じ標高の木賊山に登り返す。登山道は結構急で、北面なので雪が多く残っているが、凍った部分は少なく助かった。下りも暫くは雪と氷交じり、さらには沢状になって、グチャグチャだ。途中、2月に源水さん、平井さんと来た時に尾根の途中でテントを張った地点を確認するが、意外なほど狭く、積雪期とは大分印象が違った。1869点からは道が分かれるが、尾根通しの徳ちゃん新道を下る。

 バス停まで下るとまだ時間があったので、バス停脇のお店の展望風呂に浸ることとする。温泉でないのが残念だが、5日間の汚れと雨でグショグショの体を洗えたのだから贅沢は言えまい。さすがに雨とあって西沢渓谷も閑古鳥が鳴いていてお店も暇のようだ。店のストーブを占有し、濡れたものを乾かす。14:35発のガラガラのバスに乗って塩山駅に出て、JRで帰宅した。

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