丹沢・葛葉川本谷

日程:2006年6月10日

天候:曇りのち時々雨


 今シーズン初めての沢。ねらったように天気予報の雨マークが消えて、梅雨の晴れ間?に大当たり。9名という大所帯で出かけ、水量豊富な沢で遊んだ。

横浜集合組と秦野駅で合流し、沢へむかった。大渋滞のため、横浜組の車が秦野に到着した時点で、すでに予定よりも一時間半遅れての出発となった。

入渓点の葛葉の泉。車の台数は少なく、人気の沢にしては、あれ? と思う程すいている印象だった。

今日は2パーティに分かれて行動することにします。とリーダーの西さん。沢初めての木村さん含む6名と、平井さん、溝越さん、私渡辺の3名に分かれた。

6名パーティが先行するかたちでいざ出発すると、昨日の雨のせいか、想像より水量が多く、ちょっと怖気付く。

F48mの滝でロープを出す。

はじめに登る滝は、何となく威圧感があり、いつもドキドキさせられる。ましてやシーズンはじめである。左側ルンゼ状を登る。先行パーティは危なげなく登っていく。日ごろの岩での練習が、役立っているように思えた。

水音が大きく、滝上下での意思疎通に多少手間取ったものの、私たちパーティも平井さんリードで無事にクリア。このひと登りで、私はすでにズブ濡れ。はやくも歯がカチカチ言いだし、雨具はじめ手持ちの服を全部着込んだ。

やがて本日最難関と思われる板立ノ滝に到着。

今回、支点をとってロープを出したのは、先ほどの滝とここの二箇所だったが、西さんはちょくちょくお守りのように補助ロープを出し、肩がらみ、腰がらみを使って確保をしていた。ロープがつながっている。という安心感から気持ちに余裕が生まれ、落ち着いて登ることができるので、沢慣れないメンバーがいる時などは有効だと思う。

今度も左側から登った。前の滝よりもひとりひとり時間がかかっていた。あまり左から行きすぎると、上部にせり出ている岩を、体を丸めてトラバースのように右へぬけなければならない。右より水流沿いに行こうとすると、結構水に打たれて足場探しがままならない。(落ち着いて探すと、水流の中に、小さいがちゃんと足場があるそうです)まんなかあたりを登ってみた。ホールドが割とがっちりしていたので、水流側、右手横あたりのでっぱりに、エイヤ!と足をのせて体を持ち上げた。確保者のすぐ下にきて、ああヤレヤレと思って気が抜けそうになるが、足元がヌルヌルしているところがあり、安心できない。油断禁物、早めに安全地帯へ行っておくに越したことはない。

林道の白いガードレールが見えて、もうひとがんばり。富士形ノ滝前で休憩。開けた感じの、休憩にはよい場所だった。

下から見上げると、左側二段の岩の上段が、おにぎり型をしていて、これが名前の由来らしい。一段目の岩を左側からまわりこむと、水流の下にでる。まわりこまずに右側からいくと、もっと簡単に同じところに行くことができた。水流を直登はせず、その右側を登った。手足を左右の壁に押し付けながらのつっぱり登り。ホールドがない!とあわてた時に、このつっぱり登りが有効な場面が今回も何度かあった。

かなり登っていっても水流は豊富で、昨年も同じ沢を登ったメンバーによれば、その時は枯れていてスタスタ登れたところも、今回は水が流れていて難しくなっている。とのことだった。

出だしが遅れ、ペースもゆっくりだったので、沢靴をぬぐ頃にはすでに三時をまわっていた。足を痛めたメンバーがいたこともあり、三ノ塔から二ノ塔を経て、そこからの下りもゆっくりとなり、最後はヘッドランプをつけての行動となった。

登山は非日常の世界で、ましてや自然相手なので、誰にとっても、常に何が起こるかわからない。スムーズに事が運ばないことも多い。それを経験として蓄積していって、自分の中の引き出しというか、許容量を多くしていけるといいのではないかと思う。

日が落ちて暗くなってきた山中、しかも霧がでてきてヘッドランプを点けなければならない。これがひとりだったら、さぞ心細かったであろう。すっかり暗くなった林道を皆とヒタヒタ歩きながら、仲間がいる心強さ、温かさを再確認した、今回の沢登りであった。 
(文:渡辺)

葛葉川本谷 はじめて沢登り

直前まで予報ではお天気はイマイチという事であったが、当日になってみると、かなり気温が高くシーズン初の沢には良い条件だと思った。ただ途中で高速で玉突き事故があり、予定の時間を大幅に遅れ、実際に入渓したのは10:40ぐらいであった。当初の予定では9時までには入渓の予定であった。

葛葉の泉に到着すると、空は多少曇ってはいたものの、せせらぎの音を聞き、私にとって初めての沢登りが楽しいものになる様に感じた。2パーティー(実際にはほぼ一緒だったが)に別れ登り始めた。

沢に入るときに、まず私は手のひらを水に浸した。水の冷たさに触れ心地よかった。そして足を浸した。濡れているのに濡れていないような不思議な感触であった。沢靴と沢用の靴下のためであろう。手のひらで水の冷たさに触れた感じでは、これだけ冷たい水にずっと足を浸けていれば、冷えを感じるはずだが、ある程度冷たさを感じたものの、冷えまではいかなかった。アウトドアグッズは人間の英知の結集で良く出来ていると感じた。

バシャバシャと音を立て、せせらぎの音を掻き消しながら調子よく登っていった。曇ってはいたものの、この時点では気温がある程度高かったので、森林浴をしながら冷たい水を掻き分け登っていく初めての感触が心地よかった。浅瀬に浸かる分には抵抗がなかったが、ある程度以上の深さになると本能的に濡れないように浅い所を選んで歩いていた。しかし浅いところが安定した足場とは限らないので、ある程度深くてもしっかりとした足場を選ぶべきだったと思う。それに折角の沢なのだから、水を楽しまなければならない。所々うぐいすをはじめ、鳥たちがさえずって歓迎してくれた。靴の中に水が入るとそのせいか、靴が足にフィットする不思議な感じだった。入渓が遅い時刻だったためか、我々のパーティー以外の他のパーティーに出くわすことがなかった。まったくのプライベート空間だった。沢というもののせいか、少ししか登らなくとも、とても深い山に一気に入ったような不思議な気分になった。普通の山行とは違って道しるべは沢そのもので、標識などの人工的なものがなく自然を満喫できた。

 しばらくすると、確保なしでは不安な滝になったので、西さんに先に行ってもらい、ビレーをしてもらい、その後皆が登った。ロープ一本あるとないとでは大違いである。結果、物理的にロープに頼らなくても私をはじめ、他の人も精神的にはかなり頼っていたと思う。しかしその後の滝では私は実際にロープにお世話になってしまった。またこういった時に岩トレをしておいて良かったと感じる。ただ流れをまたぎながら滝を登ったときに顔面で流れを受け止めたのでかなり濡れてしまった。どうせ濡れるなら躊躇せずに果敢に向かい、その分浴びる時間が短いほうが良かったと感じた。かなり暑いぐらいのお天気ならばこういった事も気持ち良く感じるであろう。

その後また更に登ると新緑のトンネルが現れた。これがもしもっと晴れていたら青い空にくっきりと新緑が浮かび上がり、青い空と緑の葉のコントラストが見られたであろう。また葉の間から木漏れ日がカーテンを引いたように差込み、どれだけ綺麗だろうかと想像するとたのしい。もちろん今回のような曇った天気でも充分若葉が美しく感じた。新緑のトンネルに鳥たちのさえずりのステレオ放送、そして肌で感じる水の感触、やはり実際にその場にいなければこういった情景は体感できないであろう。

 さらに進み、水が深く川底が平らな箇所で油断をしていたら、よろめいて横に倒れ、もう少しで沢の水をご馳走になるところだった。ハーネスまでしっかりと濡れたせいか、その後その濡れのため肌寒く感じた。空がさらに曇りはじめてきた。レインウェアーを取り出して着た。私以外のメンバーも唇の色が優れなく、ガタガタと震え始めていた。テルモスに入れてきた暖かいお茶にほっとした。

沢を登り切ったので、トレッキングシューズに履き替える。不思議な事に沢装備を外し、しまい込もうとするときに、今まで感じなかったのだが藻のようなカグワシイ臭い?が自分の体から漂ってきた。ここで大変な事に気づく。沢靴を履いたときに今まで履いていた靴下を脱ぎ、それを車の中に忘れてしまったのだ。仕方なく今まで履いていた沢用の靴下にトレッキングシューズを履くことになった。濡れた靴下にトレッキングシューズとは気持ちが悪く、またトレッキングシューズの中が濡れるのが嫌でたまらなかった。この失敗を経験に次回は同じことをするまいと思った。

沢道具を外し終わり、左に進み三ノ塔尾根に向かう。人の踏み跡があるにしろ、道となっておらず、当然整備されていないので、足場はズルズルであった。滑り止めに枝をつかもうとすると野ばらが多く、トゲがあるのでつかめなかった。大変な思いをしてやっとの思いで三ノ塔尾根に行き着く。

三ノ塔の頂上に大沼さんたちが遅れて到着した。大沼さんは沢に登りはじめたときに、どうやら捻挫をしたようだった。大沼さんの足をテープで固定し、大沼さんのザックの中身を分担して持ち、西さんが大沼さんを誘導して下ることにした。西さんのザックに後ろから大沼さんがつかまって、歩き始める。ザックにつかまるのが一番患部に負担をかけず楽に歩けるらしい。

いろんな話をしながらゆっくりとしたペースで二ノ塔を下るとだいぶ日が落ちてきた。ヘッドランプを出し、渡辺さんは前から、木村は後ろから西さん、大沼さんを照らす。私はかなり明るく照らせるLEDのヘッドランプを持っていたのでかなり重宝した。今回の事で勉強になったのは、やはりどんな事があるか分からないので、ヘッドランプは明るいものを持たなければならないという事である。明るいものでなければ、暗いが故に躓き、新たに怪我をする人が現れる可能性があると感じた。

装備に関してどういったときにどこまで必要かは判断に難しいであろうが、あまり大げさになってもその重さゆえにコースタイムが遅くなり、危険な目に遭う事もありうるとも思った。やはり何事も経験で、こういった経験を重ね、しっかりとした判断が出来るようになるのではないかと感じた。靴下の失敗もまた然りである。

時間の節約のため平井さんと溝越さんが速足で車を取りに行った。林道の途中のゲートの前まで車を乗り付けて、大沼さんの負担を軽くするとの配慮からでもあった。辛い人にとってはとても助かるだろう。

しばらくすると残されたメンバーが林道との合流点に差し掛かった。今まで下ってきた登山道が林道の途中に対してほぼ直角に合流しているので、林道を左右どちらかに進まないといけないようになっていた。私はまったく地図が頭に入っていなかったので、みんなが自然と向かった右側へ何の抵抗もなく進んだ。しばらくそのままみんな右側に進んだ。しかしその後、誰かが反対側(林道に出て右)に進むべきではなかったかと言い始め、地図で確認。さらに先発メンバーに携帯で連絡をとり、どちらへ進んで落ち合うか確認をした。やはり左へ進むべきだった。一同、今まで進んだ林道を引き返し、本来進むべき左側へ進む。こういった事があると、事前にルートをきちんと頭に叩き込むべきであったと反省をする。

本来の林道を進んでいくと、前方から溝越さんが現れた。大沼さんを迎えにきてくれたのだった。そして大沼さんを背負って速足でゲートまで先に進んだ。残されたメンバーはその後を速足で歩いたが、大沼さんをおんぶした溝越さんの速さにはかなわなかった。

考えてみると最初から最後まで他のパーティーに会わなかった。こういった山行は初めてであった。沢と通ったルートを予約したかのようだった。朝の渋滞をはじめ、色々あったが、全員その日のうちに下山できて何よりであった。初めての沢登りは忘れられない思い出となった。こういった経験を重ね、今後、より安全により楽しく山行ができれば良いと感じた。学習したことがたくさんあった実りある沢登りであった。

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