八海山・アラチ沢右稜

2003年2月28日(夜発)〜3月2日

 28日22時港南台を出発し、26時過ぎ八海山スキー場の駐車場着。駐車場が空いていたので、隅にテントを張って仮眠した。

 3月1日7時30分出発。当日はお昼前から雨の予報だったが、出発時点では曇り、目指す尾根をはっきりと確認できた。スキー場から車道を少し戻り、最初の橋のたもとからハライ川の川岸に入る。源水はワカンをつけるとほとんどもぐらないが、杉浦さんは所々ボコボコはまってつらそうだ。途中何ヶ所か渡渉するところがあったが、水量は少なくワカンを履いたままでも渡ることができた。最初の二俣で真ん中の尾根に上がれば、取り付きまで一直線。9時30分急登の手前で休憩。アイゼンに履き替え登高。斜面は所々ブッシュが頭を出している部分もあったが、尾根上はほとんど雪の上を歩くことができた。11時頃予報通り雨が降るが、1時間ほどで上がった。ただ、気温が上がりアイゼンダンゴが気になりはじめる。900m付近で一旦傾斜が緩くなる。たくさんのカモシカがちょっと迷惑そうな顔をして我々を迎えてくれた。再び、急斜面を登ると、核心部であるギャップの下りと登り返し。ギャップの手前の雪稜は細いナイフエッジになっており緊張させられる。ギャップはバックステップで下るも、3・4歩下ったところで源水スリップ。バックステップの体制のまま3〜4m滑り、着地成功。下が窪地になっていて事なきを得たが、肝を冷やした。コルから少し斜面を登り雪の詰まったルンゼ状に入る、ロープは出さなかったが、先ほどの失敗のこともあるので、一歩一歩確実にステップを刻み登高する。17時1364mのピーク手前で幕営。予想以上に時間がかかってしまった。

 2日6時出発。夜半に雪が降り風が強くなったが、稜線上の積雪はほとんどなかった。視界はスタート時点で100mほどあったが、すぐにガスと風に飛ばされた雪で数メートル先しか見えなくなる。右側の雪庇に注意して慎重に進む。尾根の屈折地点や緩傾斜帯など現在地を確認できるところはあったが、途中、地形図に現れない下りがありドキドキしながら進む。屏風道の合流から少し進むと目の前に千本桧小屋が現れた。小屋にたどり着いたときには正直ほっとした。9時10分。冬季小屋は頻繁に使用されているらしく、入り口の雪は取り除かれていた。小屋に入って大休止。

 10時再出発。視界はほとんどない。コンパスで方向を探り薬師岳のコルへ。薬師岳の登り斜面に入り少しのぼったところで先頭の源水の目の前の雪面に亀裂が入り、表面が崩れる。体はもっていかれなかったが小規模の雪崩を起こしてしまった。この視界で闇雲に不安定な斜面に突っ込むのはヤバイので、一旦小屋に引き返すことにする。小屋で食料・燃料・水・携帯の電波の確認。杉浦さんが気を利かせてα米の予備を持ってきていたこと、ガスの残りも2人であと1個以上あったので、とりあえず視界がある程度回復するまで待つことにして、状況が変わらなければ停滞することに決定。その後、杉浦さんは小屋の毛布をかぶり「あったけ〜」といって寝入ってしまった。源水もしばらくは寝転んでいたが、その後は、小屋の1階に行ったり、外の様子を眺めたり、落ち着かなかった。

 13時過ぎ、外が明るくなったで、窓をあけて外の様子を見ると、視界は急速に回復し、下界まで望めるほどであった。急いで杉浦さんを起こし、出発の準備をする。14時に小屋を出発、薬師岳の不安定な斜面は、右端のリッジ状が雪庇もなく登れそうだったので、慎重に登る。頂上直下の雪庇の崩壊跡を慎重に乗越し、薬師岳の頂上部へ。薬師岳の頂上を過ぎると再び、風上斜面になったので雪は締まっていた。程なく女人堂に到着。女人堂からはここで引き返したトレースがあり下部の樹林帯のラッセルは間逃れた。16時前八海山のロープウェイの山頂駅に到着。下りのロープウェイに乗り、駐車場に帰着した。

 急な雪面の登り、ナイフエッジ、視界のない中での行動と緊張感あふれる山行でした。同時に、日程の設定、天候の読み、雪質や斜面の変化への対応など課題・反省点も山積みの山行でもありました。もう一度気を引き締めて雪山に臨みたいと思います。

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