赤谷川本谷

2004年9月3日(夜発)〜5日

 3日22時に横浜駅を出発し、26時ころ川古温泉入り口の道路脇に駐車し仮眠をとる。本州に前線がかかり天気予報はあまりよくなかったが、「前線が南に下がると谷川辺りは案外天気がいい時があるんだよね!」といつもの希望的天気予報で誰一人中止にしようと言わない。

 4日6時前に出発。天気は薄曇り。1時間ほど林道を歩くと笹穴沢の分岐となる。道はここから登山道で、あまり歩かれていないのか、落ち葉が積もった上に谷側に向かって外傾しており、歩きにくい。途中対岸に立派な滝が見渡せる場所があった。8時過ぎに赤谷川の渡渉地点に到着。登山道は毛渡乗越にむかって登っていくので、ここから入渓する。

 しばらくは河原状で右に左にと進んでいく。それほど水量は多くないので、渡渉に問題ない。マワット下ノセンは左側から巻き、マワットノセンにたどり着く。綺麗な滝で右側から登ることもできるそうだが、写真だけとって左側から巻く。すぐに巨岩帯。入り口から右岸の巻きに入ると中間地点までほとんど水線に復帰できなかった。巨岩帯の出口付近でようやく流れに戻り大岩の上や下を迷路のように辿りなかなか楽しかった。V字の切れ込みのむこうに裏越ノセンが見えてくる。裏越ノセンはその名のとおり滝の裏側を歩けるそうだが、対岸の降り口が大変そうだったので、釜を胸までつかって通過する。水は冷たく、いっきに体が冷えてしまった。裏越ノセン左のルンゼはところどころ浮石があるので慎重に登る。登りきったところにある笹薮を強引に右に下ると、日向窪の出合い到着。後続が少し遅れたので、小休止。13時前に再出発。このころから空模様が怪しくなってきたので、雨対策をしてドウドウセンの巻きに入る。日向窪を少し上り左岸から合流する小沢を登っていく。日向窪の出合からこの小沢までは思ったより距離が短かった。しばらくは沢型だが、上部はたよりない草付きになっている。途中から雨となりぬかるんだ泥の急斜面と頼りない草付きということで、結構緊張する。なんとか尾根上まで登り切る。雨はどんどん激しくなってきた。尾根上には踏み跡がなく、手前から巻き道に入ってしまったかなと思ったが、尾根を数メートル進むとはっきりしたふみ後が出てくる。ドウドウセン上の河原も見下ろせた。つきあたりの岩場を右にトラバースをしてスラブ帯の入り口に入る。谷に向かって右側のスラブとブッシュの境目辺りを下っていく。雨はどんどん激しくなり、辺りのスラブがすべて滝のようになってものすごい景観だった。見下ろすと幕営予定の河原はもう水没直前である。スラブの下降は慎重に。途中ブッシュで支点をとり2ピッチ懸垂下降して、ドウドウセン落ち口にある台地状へ。河原はなんとかテント1張り分だけ水面上にあったが、夜にもういちど激しい雨がふればもたないだろうと考え、ここに幕営することにする。雨風が激しく、気温もどんどん下がって雷まで鳴り出した。古川さんが『最悪だな〜』とのんびり言ったのがパーティの雰囲気をいくらか明るくした。テントの中ではこの濡れ鼠の状態を写真に撮ろうと伊沢さんが張り切っていた。後から写真を見ると意外に普通だった。

 夜、雨は上がったようだ。5日朝6時出発。水位はだいぶ下がっている。上部はそれほど難しいところはないだろうと、ほっとして歩きだす。最初に出合う8m滝は左側のはっきりしたふみ跡から高巻く。続く小ゴルジュ帯は過去の記録をみると、たいした記述もなく、普段は水の中をじゃぶじゃぶ歩いていけるのだろうが、今回は轟々と水が流れている。結構大変そうだったので、ここも、左側の薮から巻くことにする。ここはふみ跡も何もないので結構な薮漕ぎだ。それでも、水線通しで行くより早いだろうとどんどん進んでいくと、うしろで伊沢さんが『どこまで行くんだよ!』と怒っている。そこで手近の立ち木で懸垂下降して、沢に降り立つとそこからはそんなに難しいところがなかった。正面に国境稜線がみえてくると水量もへり、流れも穏やかになる。さらに沢が東に折れると周囲に草原がひろがりとても気分がいい。晴れていれば素晴らしかっただろうな。つめは俎グラの山稜には向かわず、直接国境稜線に這い上がる。10時。当初は万太郎を越えて川古温泉へ下る予定だったが、天気も悪く、沢で時間がかかってしまったので、天神平に下ることにした。

 14時ころ天神平スキー場の駐車場着。ここでタクシーを呼んで川古温泉へ戻る。ずぶぬれの我々は乗車拒否されるかと思っていたが、快く乗せてもらえた。運転手さんは気さくな方で、写真を見せてくれ、いろいろな話をしてくださったが、車内に我々の沢臭が充満するにつれて、口数が少なくなり、ついに黙ってしまわれた。たぶんしばらくは車が使えないのではないでしょうか?申し訳ありませんでした。

2004年度山行報告へ