赤谷尾根〜剣岳〜早月尾根

2003年4月30日(夜)〜5月3日


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・赤谷尾根への取付(970m)は、対岸の小沢に小さな堰堤(小滝?)が見える場所で傾斜が緩く登りやすい斜面から取り付くと主尾根まで赤布が豊富にある。記録から想像したほど急ではなかった。記録にあったルンゼ状でなく支尾根状を行く。雪はほんの少しだけで、ほとんどは藪こぎだった。

1500mほどで赤谷尾根稜線に出たが、2カ所のヤセ尾根部分は雪がほとんどないブッシュ広い斜面は雪という状態で、1800m付近からやっと真っ白な雪稜となった。

・1日目は、時刻に余裕があったが1930mの木の側にテントを張って泊まり、疲労回復の点でよかった。

 歌に歌われる「剱見るなら赤谷尾根でよ」の念願がかなった。険しい容貌の岩稜の連なりと大きく開いた三つの窓が今眼前にある。「行きたいと思っていたルート」と言う源水さんもしばしテントの外で佇んで眺めていた。

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赤谷山への登りの傾斜(雪壁)はそれほどでもなかった。

・白ハゲの固定ロープがある小岩峰は右から巻き気味に。登った次は平らな雪面。

・大窓へは、白ハゲを越えて下った所から数mで右のハイマツ帯を下ると、ルンゼ路になっている。そこを下り、下り終わると左へ雪面をトラバースする。(10m〜20m位?)

・大窓の頭へは、記録等では大変となっていたが、今回はそのまま稜に沿って道がありそれほどでもなかった。雪と登山道と潅木という感じ。

・大窓の頭から池ノ平山南峰へは尾根が入り組んでいるが、合理的にルートが取られている。しかし、悪天で見通しが利かないと難しいかも。総じて小黒部谷側、小窓雪渓側を通る。

・池ノ平山北峰手前の岩峰は稜の左を絡むように立ち木までトラバース気味に登り(古い固定ロープが見える)、立ち木を使って段差を上がり、そのままハイマツ混じりの雪面を直上する。ロープを出したパーティもあったが、なしでも大丈夫。左のルンゼ状の雪壁をロープを出したり、出さなかったりで登るパーティもいた。いずれも上部はハイマツ混じりの雪面を登る。

・池ノ平山南峰から小窓への下りは、最初の潅木、岩混じりの下りはクライムダウンし、しばらく行った最後の下りは途中の急な雪壁からはブナ(スリングあり)をアンカーにして50mロープ1本で4ピッチの懸垂下降で小窓に降りた。

 今日は、事前の机上登山をしていて一番気になっていた行程だった。少し知っていた家族3人が1月このルートで遭難された。今は、残雪期、天気も良くトレースもついている好条件だが、入り組んだように見える稜線に緊張する。ほとんど源水さんに先行してもらう。お陰で、小窓へ降りてみると昨日よりは疲労感が少なかった。三の窓まで行くパーティもあったが、かなりいいペースでここまで来ており、明日朝早く出発すれば、雪がしまっている間に万が一の雪崩を警戒した池ノ谷ガリーを通過し、うまくいけば下山もできるだろうということで小窓泊まりとした。ちょうど二人用テントが張れる、ブロック、トイレ付きのテント跡を確保できラッキーだった。

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・小窓尾根へは、正面のインゼル状の所を目指して登る。その下辺に沿ったトレースもあった。

・小窓ノ王基部からの下りは、夏道より傾斜が急だった。雪は地面に平行には積もらないと知る。また、朝早いにもかかわらず雪がグスグスだったので、懸垂することにする。50mロープ1本で2ピッチで懸垂し、最後に着いた所はハーケンが1枚しかなかったが、そこからは南壁の基部沿いに歩いて三ノ窓に行けた。50mロープ1本では足りないとか、途中の支点は届かないなどの記録等があったが、そんなことはなかった。

・池ノ谷乗越からの登りは、夏道のルンゼは完全に雪で埋まっていた。そのルンゼがあると思われるところにも踏み跡があったが、ルンゼの左の雪面を時計回りにゆるやかに巻くように登る。

・以降の稜線は、夏の岩稜と違い雪に覆われた雪稜で歩きやすかった。

・長次郎の頭は、尾根通しの踏み跡もあったが、多くの踏み跡は長次郎谷側をコルまで巻き下っていた。そちらを通る。やさしかった。

本峰から早月尾根への分岐までは本当に150歩ほどだった。

・分岐からすぐの煙突状の降り口は手前の、岩にスリングがある方を降りる。少し先にも煙突状があるので間違えないように。正しい方のすぐ下はルンゼ状の雪壁で降りられるかという感じに思えてちょっと敬遠したくなるが、そこがルート。近藤邦彦さんのパーティはクライムダウンした。我々は、1ピッチの懸垂下降した。

・早月尾根2600m峰の先は少し急な雪壁になっている。1ピッチの懸垂をした。ハイマツについたスリングにアンカーが取れる。

・早月小屋からは積極的に飛び跳ねて雪面を降りた。2〜3時間の行程を1時間40分で降りた。疲れなかったし、後日大腿四頭筋も痛まなかった。やはり全身を使って歩くと楽だ。早月尾根は赤谷尾根と違い雪が多く、1200m付近まで雪があった。

・本山行全行程を通じて、総じて技術的に難しいところはないが、疲労して集中力がなくなると危険になるかも。その意味では、体力勝負、精神力勝負だろう。もちろん、雪上歩行技術、岩稜歩行技術、ロープワーク等の総合力を前提にしての話であるが。

 今日は天気が下り坂。早めに出発した。小窓尾根に出ると、多少風が出てきた。しかし、それほど強くはならず、快適に歩を進める。途中チンネや八峰のかっこいい立ち姿に見ほれた。本峰頂上はあいにくガスで展望が利かないが、充実感をもって二人でがっちり握手。しかし、まだ気を抜けない。危険地帯をほぼ脱し、2600m峰に至ると眼下に富山平野と富山湾が広がり“よかねー”心がなごんだ。さらに下るほどに暑くなる。汗が流れ、目にしみて眼鏡の私はうっとうしい。だんだん歩みが遅くなり、源水さんに遅れる。早月小屋前で休み、薄着になり、汗取りバンドを頭につけると、元気回復。後は、一気に駆け下りた。警備隊派出所に下山報告をして、帰路へ。上市町のアルプスの湯に入り、富山の海産物をいただいて帰った。ゴールデンウイークの渋滞で帰宅は午前3時半だった。源水さんお疲れ様。そしてありがとうございました。

【コースタイム】 <   >内は総行動時間

4/30 21:30横浜発〜 5/1  4:30 馬場島着(1時間手前で迷った)<7.00>

5/1  馬場島7:30 (5.40) 13:10 赤谷尾根1930M       <5.40>

5/2   赤谷尾根1930M 5:20 (0.50) 6:10 赤谷山6:25(0.40)7:05赤ハゲ7:15(0.45)8:00白ハゲ(0.30)8:30
       大窓 8:50(1.30)10:20大窓の頭10:35(0.05)10:40池ノ平山北峰コル10:50(0.30) 池ノ平山北峰 
       11:20(0.30)11:50池ノ平山南峰(1.20)13:15小窓
<7.55>

5/3   小窓4:25(0.45)5:10小窓尾根5:20(0:25)5:45小窓ノ王(0.20)6:05三ノ窓6:15(0:45)7:00 池ノ谷乗越 
        7:15(0:45)8:00長次郎のコル8:10(0.20)8:30本峰8:40(1:30)10:102600M峰10:30(0.40)11:10早月
       小屋11:40(1.45)13:25
馬場島<9.00>

【主な装備】共同装備:二人用テント、ガス5個、トランシーバー1台、携帯電話2台、ツェルト(小)1張、9m50mロープ1本、ラジオ・天気図、予備食4食他 個人装備:春冬山テント泊装備、ヘルメット、ロック付カラビナ1、カラビナ3、ATC確保器、スリング長短各3、ビーコン、スコップ、非常セット等

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