北アルプス 杓子岳双子尾根

日程:2019年5月3日(夜)〜5月5日

5月3日
22:30 毎日アルペン号(竹橋発)

5月4日
5:00 白馬駅着 5:40タクシー猿倉着 6:00猿倉山荘発 10:00樺平(2120m)着 幕営

5月5日
3:00起床 5:00樺平発 8:40JP(2620m)発 9:45杓子岳(2812m)着 10:10杓子岳山頂発 12:00白馬頂上宿舎発 14:00白馬尻 15:10猿倉山荘(1250m)着

5月3日の毎日新聞本社ビルは予想に反して閑散としている。IZUさんはビルの中のコンビニも閉まっていて10分程先のコンビニに食料調達に行って来たとの事。登山計画書に竹橋22:15集合アルピコバスと誤記載し、メンバーの方々を混乱させてしまった。毎日アルペン号は私達パーティー4名だけで新宿都庁の乗車場に向けて22:30出発した。数名が乗り込み各自2席使用できる事になった。ゴールデンウィークに大勢の登山者に囲まれ山行に向かうといった高揚感は無く少し寂しい出だしとなった。

5月4日早朝予定より20分程早く白馬駅に到着、タクシーで猿倉へ向かう。途中薄ピンクの山桜が見頃を迎えていた。タクシーの背後から朝陽が昇ってきた。晴天に恵まれそうだ。この時間帯猿倉山荘も登山者は数パーティーと少ない。軽く朝食を取りアイゼンを装着して6:00に出発する。
6:20白馬鑓登山道標識を目安に白馬台地方面へ入る。前方のスキーヤーを視界に入れ平坦な台地をしばらく歩く。スノーボーダの後を追うように急登を登り切ると双子岩の近くに出る。
いよいよ双子尾根に取り付く。最初は緩やかだがその後ナイフ・リッジとなる。両方切れている所では緊張でヘッピリ腰になる。深呼吸をして軸脚で真っ直ぐ立ちもう一方の脚でアイゼンをフラットに置くように心がけると平常心で歩を進めることができた。右手に白馬小蓮華尾根を見て、左手に白馬鑓温泉の位置を探したりして1900m付近からは藪漕ぎや急登となった。2100m付近ピークで下に立つ樺の木が樺平に到着した事を教えてくれた。10時なので幕営地をJPに変更するか相談したが夜行バスの疲れ、フル歩荷で更に何時間も歩くのはバテるとの事で予定通り樺平とする。樺の巨木側の窪んだ場所に幕営跡がありテントを張る事にする。雪を平らにして短時間で終了した。小高い丘になっている所にも雪の壁が積まれた幕営跡が残っている。

白い髭が広がっているような樺の巨木が青空に映えてボルテージがあげる。
午後は昼寝やティタイム、テントの外で景色を楽しんだりしてゆっくり過ごした。無風で陽の光が燦々と注ぐ中JPの人影、JPから長走沢を下山する登山者を目で追いながら白馬鑓北稜等、山話で至福の時が流れた。数日前に降った数十センチの真っ白な雪で思いのほか水作りの時間もガスも節約できた。肉とキャベツの甘味噌炒めで夕食を終えて早めに就寝、朝方冷えを感じて目覚める。
ウトウトしているうちに起床時間の3時になった。IZUさんの用意してくれた雑炊は優しい味で早朝でもお腹にすんなり収まった。食後のお茶を飲み用意をしてザックをテントの外に出す。外は白馬鑓方面がモルゲンロートに染まって晴天だ。テント撤収後予定通り5:00出発する。ハーネスを持っていない私は120cmのスリングで簡易ハーネスを装備する。出だしからの急登にヤッケはザックにしまい薄いウインドブレーカーで尾根に向けてゆっくり歩く。風も無く雪も締まっていて歩きやすい。2箇所程、雪に亀裂が入っている所通過、核心部の一つ2440mの岩場に出る。ロープを用意してもらいアイゼンを外して右側から登る。岩がバラバラ崩れて、下から見上げた時より予想以上に取付きにくい。

KOSさんの的確なアドバイスでかろうじて上部迄登りセルフビレーを取りほっとする。その後ハイマツに支点を構築してビレーをする。 メンバーも重い荷物に苦労しながら無事に登り終える。ザックからアイゼンを取り出し装着。KOSさんより岩登りでバランスが崩れているから慎重に歩くようアドバイスをいただく。急登を登ると双子尾根と杓子尾根の合流点JPに到着した。ヤッケを着て大パノラマを眺め皆で写真に収まる。JP迄来た達成感にひと時浸った。

10分程休憩して8:40に出発する。この先にはもう一つの核心部である杓子岳山頂への岩場が待っている。山頂直下は幸いにも雪がしっかりついていてロープも不用、戸惑う事も無く歩く。岩場の影から白い大きな雷鳥が現れた。後で頭部が赤いのは雄だとKOSさんに教えてもらう。ビッケルのピックを打ち付けての急登を登るとあっけなく杓子山頂に飛び出した。先ずは記念撮影をして展望を楽しむ。山頂からは劔岳や鹿島槍ヶ岳、雪庇のある反対側は妙高、火打岳が見える。地図で山座同定して25分位山頂で休憩をする。吹雪や強風なら逃げるように山頂を後にしなければならない所だが天候に恵まれゆっくりできた。白馬岳方面に向け10:10に出発する。杓子山頂からの下山はガレ場を下るのだが、先に様子を見に行ってくれたKOSさんから雪は無いとの事で坂の途中でアイゼンを外す。白馬方面の夏道は土が出ている。丸山の下部でアイゼンを再度装着した。雪崩の危険があるので白馬山頂は見送り一刻も早く大雪渓を下山しましょうと意見が一致した。頂上宿舎の正面で休憩を入れて12:00に猿倉目指して下山を開始する。最初は緩やかな雪渓を下りでその後徐々に急な下りとなる。右手に杓子方面からのデブリ、左手に3号尾根からの大量なデブリを見ながら、白馬尻を目指して黙々と下る。KOSさんから雪庇が崩壊してデブリになると教えていただく。太陽に照らされての下山は猛烈に暑く汗が吹き出す。
数年前の大雪渓下山の時とまるで違うデブリの景色に自然の恐ろしさを感じながらの下山となった。前を行くIZUさんはシリセードやぴょんぴょん走りで距離を稼いで楽しんでいる。雪が柔らかくて膝の辺りまで埋まってしまうのを回避してぴょんぴょんと埋まらぬように飛び跳ねる方法だ。真似をしたが確かに楽しい。白馬尻を過ぎて長らく歩くと林道に駐車している車が見えた。しばらく進むと今度は猿倉山荘の屋根が見えて来た。3:10ゴール地点に全員到着した。アイゼンを外して帰り仕度をしていると白馬駅に向かう最終バスが出発した。IZUさんが手配してくれたタクシーでスキーヤーと5名で八方の湯に向かう。道路の両側には片栗の花や一輪草などがたくさん咲いていて疲れを癒してくれた。入浴後食事をして長野行きのバスに乗り車窓から見える双子尾根に想いを巡らせた。臨時の新幹線で席を回してお気に入りの飲み物で楽しく会話をして旅行気分も味わい帰路に着いた。

編集後記
2018年秋の秩父縦走後の電車内で春山の話が出ました。ARAさんから双子尾根はいいよと教えて頂き連れて行ってくださいとの事で今回の山行が実現しました。ARAさんが17歳の正月に初めて双子尾根を登った時のお話を伺い、そのお姿を想像しました。今回は大先輩に見守られて素晴らしい山行が出来た事に感謝しています。
KOSさんから大雪渓の下山が雪崩の危険がある場合は白馬大池方面への下山も考慮する必要があるとアドバイスを頂いておりましたが、幸いにも条件が良く予定通り猿倉に下山できて予備日は使わないですみました。事前の雪崩情報を入念に調べて来て頂きましてありがとうございました。 IZUさんに2番目に歩いて頂き不安になると色々相談させて頂きました。ロープのお願いと頼りっぱなしでお世話になりました。

記録 MATCH


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