北ア 涸沢岳西尾根 山行記録 <途中敗退>

2018年12月20日(木)22時出発〜22日

【行程】
12/21(金) 晴れ
「5:30起床・準備、新穂高温泉 1089m」7:00 → 7:45「小?」7:50 → 8:45「1277m」8:50 → 9:30「穂高平小屋 1320mわかん装着」9:56 → 10:55「1415m 」11:05 → 12:00「1483m」12:13 → 12:53「白出沢出合 1532m ハーネス装着」13:26 → 14:09「1618m」14:16 → 14:52「1706m」15:01 → 15:20「1773m テント設営」

12/22(土) 夜半から朝方にかけ雨のち曇り
「5:00起床、外は雨のため6:00まで様子を見てから行動を決めることにした。しかしNo.17天(内張り)が浸水していてシュラフ、ウエア、靴が濡れてしまっていたため下山することにした。1773m」8:14 → 9:14「白出沢出合 1532m アイゼン装着者外す」9:37 → 10:14「1443m」10:28 → 10:51「穂高平小屋 1320m」11:04 → 12:00「新穂高温泉 1089m、中崎山荘にて温泉と食事」14:20 → 15:26「松本IC手前のセブンイレブン」15:40 → 18:00「厚木SAにて解散」

【感想・反省点】
連休前の12/21に入山したため、先行パーティが入っていなくて林道からいきなりラッセルとなり、途中ワカンを履いて歩行することになる。5月に行った時と比べて約2倍の時間がかかり体力を消耗した。予定していた2400m地点まで時間的に無理と判断し、予定を変更して1800m地点でテントを設営した。22日は午前中、天気予報では雨と言っていたが、標高が1800mぐらいであれば雪だろうと甘い考えでいた。21日22時頃から雨が降り出し、22日の8時ぐらいまで降り続いた。
テントは冬仕様(テント本体+内張り)で雨には弱いこともわかっていたが、上から雨漏れすることもなく大丈夫だろうと思い気にせず寝ていた。6時に起床し、シュラフを片付けようとしたら床が水浸しとなっていて、そこでシュラフ、ウエア、靴を濡らしたため、撤退を決めることになった。 もう一つのテントは冬仕様にし忘れて夏仕様でフライシートをしていたため被害はなしだった。
教訓としては天気予報で雨予報がでていればフライシートを持って行くべきことが身に染みてわかりました。今回、装備を濡らして撤退というのはとても残念な結果ですが、この失敗を共有して皆さんには同じ失敗をしないように気を付けてほしいです。
また今回の失敗点として林道歩きでラッセルをすると想定していませんでした。入山者が少ないとわかっていましたが、林道にはまだないであろうと甘い考えでした。
冬山を計画する際は、林道でもラッセルになることも考えて計画をすることだと思いました。
計画に準備に時間をかけてかつ会社を1日お休みして行ったにもかかわらずこのような結果は残念です。
そして会社を1日休む計画にすると仕事の都合でいけなくなる人もでてくるので、来年からは年末のお休み期間に計画したいと思います。

【Nのコメント】
リーダーのMさんには、様々な準備、調整、判断と本当にお世話様でした。撤退は残念だったことと思います。また雨で浸水したテントのメンバーは不快な思いをしたことでしょう。
その意味では不謹慎かもしれませんが、私自身は、それなりに楽しめました。山は現地に行ってみないと分からないこともあるので、そのときの山の状態と自分たちの状態を見極めどう対処するのかを考えること自体がおもしろいし、それは現場でしかできないからです。

<ラッセルと行程管理>
今年GWの下見山行ではロープウエイ駐車場から白出沢出合まで2時間半程度、そこから涸沢岳西尾根に取りつき2400mのテント場まで5時間強、合計8時間程度かかっていました。それから考えると、今回は状況次第では、明るいうちの15時ころまでにそのテント場まで到達できない可能性も充分にあると思われました。
実際には林道は脛から膝下位の積雪でトレースもなくラッセルとなり、穂高平までに2時間半かかりました。順調なら白出沢出合に到達している時間。GWのときの歩行所要時間の倍くらいかかっていることが分かったので、2400m地点まで明るいうちに到達するのは無理と思われました。どうするか…以下のように考えながら歩きました。
2400m地点より前でテントが張れる平坦な場所は1800m地点。白出沢出合の標高は1540m、大雑把に1600mとして1800m地点までの標高差は大雑把に200m。1日目(12/21)は行けてそこまで。
白出沢出合から2400m地点までの標高差は大雑把に800m。GWのときはそこを約5時間で登っているので、その時の登高速度は平均1時間に160m強。 1800mまではその上部に比べると傾斜が緩やかで登りやすいので登高速度は平均より少し速いと思われる。GWと同じスピードで登高すると白出沢出合から1時間強程度で1800m地点まで到達する計算になる。倍かかるとしても2時間強で1800mに着く。1時過ぎに白出沢出合を出るので、1800m地点に明るいうちに着ける可能性が高いので、そこに向かう。(実際涸沢岳西尾根に取りついてみると、積雪も大したことがなく、1800m地点まで充分に到達できそうだと判断できました。)
1800m地点でテント泊した翌日(12/22)は、2400m地点を目指す。2400m地点までなら、標高差が600mなので、余裕を見て低速度の登高速度100m/時としても、6時間で到達できると思われるので、9時ころまでに出発できれば明るいうちに到達できる。2日前の予報では、朝まで天気が悪いが午後にかけて回復していくというものだったので、9時ころまでにはある程度天気が良くなる可能性も期待できる。もし早めに2400m地点に到達したら、翌日のためにその先にトレースを付けに行ければなおいい。 そして3日目(12/23)は2400m地点にテントを置いたまま涸沢岳を目指す。ただし、たとえば12時(状況を見て適宜変更)を限度として到達しない場合は引き返すことにして、明るいうちにテントに戻る。
最終日の4日目(12/24)はベースを撤収して下山する。
―というような展開を考えました。実際には1800m地点で撤退することになりましたが、想像登山を楽しめました。

<1800m地点の降雨>
私も、Mさんと同じように降雨についてはあまり意識していませんでした。出発日の12/20夕方のヤマテンの穂高岳の天気予報では「12/22(土):気圧の谷が通過するため、朝は風雪の荒れ模様の天気に。北から高気圧に覆われるため、日中は風がやや落ち着き、午後は天気も回復に向かう見込み。ただし、高気圧の勢力は不確実で、回復が遅れる可能性も。明日の予報でご確認ください。山頂の天気は、12/22 00:00〜06:00 風雪 -5℃… 12/22 06:00〜12:00 風雪のち霧 -4℃… 12/22 12:00〜18:00 霧のち晴れ 1℃…」というものでした。
これから推測すると、奥穂高岳が3190mで1800m地点との高度差が1390mなので計算上の気温差は0.6℃/100m×1390m=8.3℃。そうすると、1800m地点の0:00〜12:00までの気温は約3〜4℃で、湿度も高いので上部は雪でも1800m地点は雨の可能性も高いと見るべきでした。
実際に、12/21夕方のヤマテンの天気予報は、電波が届かず見ることができませんでしたが、後で見ると「朝のうちまでの12時間に槍穂と乗鞍、飛騨側の山岳で20p、…の湿った雪。雪線(雪と雨の境目)は飛騨(岐阜県)側で2000m、…」となっていて、1800m地点では雨となる予報でした。
降雨に対する警戒心が欠けていたと反省しています。

<テントの浸水>
浸水が起きたテントは、エスパース・マキシムナノに内張りを取り付けたものでした。テント本体はナイロン生地で、超撥水性(時々撥水スプレーをかけた方がいいそうです。)、耐雪性、防汚性はあるが、防水性はありません。グランドシート(テントの底)は防水加工されています。 このテントは10年くらい前に発売開始されたもので、会の中では新しいテントです。私もこのテントは使用経験が少なく、このテントで雨に遭った経験もなかったです。私も雨になる可能性とその場合の被害についてきちんとした認識・意識を持っていませんでした。甘かったです。私はフライを付けた方のテントに寝ていて直接は見ていませんが、コッヘル10杯分以上の水が溜まったと聞きました。また、内張りがあるためか漏水が直接人間に当たらず、浸水が分かりにくかったようです。
実際の主な被害状況は以下のようなものです。一人のアウター上下がビショビショに濡れた。シュラフの下に敷いていたそうです。一人の靴が濡れた。これは基本中の基本であるポリ袋に入れる等の濡れ対策をしていなかったことも大きな要因のようです。一人のシュラフが濡れた。ただし、これは浸水が原因というより、シュラフカバーの代わりに使用したSOL社のエスケープライトヴィヴィ(一応防水性・透湿性があるとされているエマージェンシーバッグのようなもの)がシュラフとサイズが合っていず、はだけて結露で濡れたとのことで、程度も深刻なものではなかったとのことでした。
濡れたアウター上下は、もう一つのテントの中で雑巾で水分を拭いた後、20分程度ガスを焚いて乾かしたら、ほぼ乾きました。(こういうとき雑巾は重宝します。)
靴の中の濡れはいかんともしがたく、凍傷になる恐れがあること、モチベーション等、総合的に考えて、今回は撤退してよかったと思います。同時に現状を正確に把握し冷静に見込み・見通しを立てられるようにしたいと思いました。
降雨に対する警戒心がなかったので、今回は話にならないことですが、万が一同様なテントで降雨に遭った場合は、テントの上にツエルト(完全な防水性はないが)を渡すようにして覆えば多少は浸水が防げるかなとも思いました。
なお、話はそれますが、フライを使用した方のテントは、フライに防水性があるので浸水の被害はありませんでしたけど、フライは防水性がある反面通気性がないので、テント内でコンロを多用せざるを得ない冬は特に換気に気配りが必要なことも忘れてはならないと思います。換気不足による不完全燃焼が原因の一酸化炭素中毒は自覚するのが難しく、危険を察知できずに昏睡状態になり死に至る場合も多いです。注意!注意!

<その他>
・共同装備の中にラジオが入っていませんでしたが、私自身2400m地点で電波が拾えるのでまあいいかと思っていました。1800m地点は電波が通じず直前の天気予報を知ることができませんでした。山中での情報源確保のため、ラジオは必携と思いました。
・短い距離でしたが、冬本来のトレースのない道を歩くことができて、気持ちが良かったです。
・最近、ワカンを使ったことがなかったので、久しぶりに使って、それなりに楽しかったです。今回のワカンの効用は、浮力の効果というよりは、圧雪されていない雪で足が動いて不安定になりやすい状態をワカンの爪が効いて足場を安定させることでした。そんな感触を楽しめました。


2018年度山行報告へ