八ヶ岳 阿弥陀岳

2018年12月30日?31日

12月29日が仕事終わりのメンバーがいた為、リーダーのNさんが昨年の赤岳に続き大晦日前日からの阿弥陀岳の山行を計画してくださった。日本列島は数日前から寒気が入っていたが、積雪の日本海側とは対照的に八ヶ岳は風もない穏やかな晴天で4人を出迎えてくれた。

白々と夜が明け出した6:20大和駅をIZAさんの自家用車で出発し、9:20八ヶ岳山荘前の駐車場に到着。駐車場は登山者の車なのかほぼ満車状態。駐車スペースのある一画を見つけ駐車できた。装備を整えて9:47出発。陽光と無風の好条件にオーバーズボンはザックの中にしまう。汗冷えは避けたい。赤岳山荘迄の林道は冬というより晩秋のようだ。凍結の心配も無く、昼前の強い日差しで、ザックの奥に隠れたサングラスが悔やまれる。八ヶ岳山荘を出てしばらく歩くと白いコートの女性に声をかけられる。地方紙の取材で年末年始の山行に付いて記事を出すと言う。我々4人に縦列歩行を依頼しカメラに収め、リーダーに色々質問をしていた。大晦日には帰宅してしまうので初日の出は残念ながら山中とは行かず、記事としてはいかがでしょうか。
赤岳山荘前で休憩を入れて、美濃戸山荘前から南沢に入ったのが11:10この辺から雪が少しずつ積り、登山道の凍結が始まった。アイゼンは装着せずに慎重に歩く。南沢大滝の手前1900m付近で1本休憩を入れて14:12行者小屋に到着した。

歩行中は日陰で多少寒さを感じたものの、気温は氷点下2?3℃から標高と共に低くなり小屋に着いた時はヤッケの上にダウンを羽織りたい位の寒さになっていた。テムレスの中の指がジンジンしてくる。 行者小屋の真ん前ベンチ前通路を残した所で幕営する事にした。多少斜めの雪面の台地をスコップで均す。テントを立て4隅にペグを埋める為雪を掘る。雪を15cm掘った所で土に当たる。あまりの冷たさにテムレスから毛の手袋に付け替える。リーダーがテントの受付をして3人でプラティパスに水を入れて16:00前にテントに入る。IZAさんは小屋泊まりなので、今日は3名で4テンを使用する。先ずはお湯を沸かして冷えた体に温かい飲み物でお疲れ様の乾杯をする。ほっこりした後夕食の用意を始めゆっくり食事とお茶を楽しむ。リーダーの明日の天気予報をシュラフの中で聴きながら19:00就寝する。寒そうだけど荒れたりしないようだ、まずまずかなと理解した記憶が曖昧に残る。夜半は冷え込みが厳しく後で聞いた所では氷点下17?18℃まで下がったようだ。道理でゾウ足を着けているのに中の足がジンジン冷えてなかなか寝付けない。テント泊で夜中にトイレに起きたのは秋のビバーク訓練でツェルトで寝た時以来だ。あれもこれもと色々持ったらバテてしまうかとホッカイロもシュラフカバーも置いて来たのが悔やまれる。 軽量化の前に体力を付けねばと寝返りを打ちながら自問自答する。

12月31日 5:00起床 リーダーの個人装備のジェットボイルで各自のテルモスのお湯を沸かす。水を7?800ml位で沸かすのだがとても早い。忙しい朝には重宝する。一方コッフェルで、朝食の為のお湯を沸かす。シュラフの間に入れておいたのに、プラティパスの水が部分的に凍っていたのでお湯を足して解凍したりして、お湯沸かしが6:00終了、その後朝食と急ぎ目にお茶を飲み準備をして7:18出発。行者小屋の前のベンチでは赤岳、阿弥陀岳に登る人が大勢いてそれぞれ準備をして出発して行く。夏山の様に賑わうベンチを見て少し驚く。数年前の私には、近寄りがたい冬山という印象があった。今はメジャーな山なのだろうか。

小屋を背にして15分歩き、阿弥陀岳夏道の標識を右に見て文三郎尾根に向かう。沢山の人が山頂目指して登っている。既に下山の人もいる。
その先はしごや階段状の急登を登り赤岳主稜へ向かうトラバース地点に到着。休憩がてら主稜の様子を見守る。1Pを登っているパーティ、更にその上もうひと組のパーティが見える。そして取付きへと向かう数名のパーティが見える。私が登攀する訳でもないのに何故かドキドキする。登って来た道を振り返ると北アルプスが青い空の下に白く連なっている。何という眺めか。正に八ヶ岳ブルーというのがこれか。主稜を登っているパーティも目が離せない。チラチラ見ながら登る。リーダーが主稜の説明をしてくださる。1Pは核心でもある事と、上にももう一箇所核心があるらしい。前のパーティが登るのを待つ間めちゃくちゃ寒いのだろうと想像する。右手に中岳のスッキリした容姿が見え、更に歩を進めると朝日に光る阿弥陀岳が中岳の後ろにドカンと姿を見せた。これから神々しいほどのあそこへ行くんだと思うとテンションが上がる。よく見ると中岳山頂直下を蛇行して登って行く人の姿が見える。9:00阿弥陀岳と赤岳の分岐に到着する。赤岳に向かう人の方が多い。ここからは中岳に向けジグザグな下りだ。岩につまずき少しつんのめる。ドキッとして気を引き締めていこうと思う。70m位下ったコルで休憩さっきまでの風が嘘のように遮られている。リーダーに阿弥陀岳南稜の無名峰、1峰、2峰、3峰、4峰を教えて頂く、機会があれば南稜にチャレンジしてみたいと思う。それにしても2峰はちっちゃくて寂しい感じだ。3峰、4峰は大きくて核心である事は想像できた。
9:30中岳に向けて出発。山頂の標識を左にみて少し下ると、中岳沢から登って来た登山者に遭遇する。きっと急に開けた景色に感動しているに違いないずっと景色を眺めて留まっている様子だ。我々は最後の登り150mに挑む。先ずはハシゴ、雪がついてない所はアイゼンの窪みを使ってハシゴの上に安定するように乗る。落ち着いてゆっくり登るとセーフ。その後は鎖や岩場がある。どう足を出せば良いのかと思うほどの難所も無くセーフ。直登したリーダーとは別に左手の登り易い方を選んだが、一つ間違えば谷底かといった多少のトラバースがあり、ここも慎重に通過する。恐怖は感じなかったが、吹雪いていたり、ホワイトアウトだったりしたら状況はガラッと変わるんだろうと思うと、そんな場所に来ていることに緊張した。北稜の終了点でビレーをしている人を右に見て10:52山頂到着。北稜から登って来たであろうパーティの方がロープを巻いていた。女性の方が我々4人の写真を快く撮ってくださる。山岳会の方のようで、まだ北稜を登ってくる仲間がいるとの事。
リーダーから南稜の説明をして頂く。今南稜から登ってくるパーティはいない。山頂には我々の他数名の登山者が360度の大展望を楽しんでいる。リーダーの『IZAさん山座同定宜しく』のかけ声にIZAさんの説明を受ける。鳳凰三山、白根三山、甲斐駒ケ岳、摩利支天、鋸岳もくっきり、恵那山を左端に中央アルプス、美ヶ原の奥にうっすら白馬、独立峰の御嶽山も存在感あり槍の穂先が薄っすら見えキレットがガクンと落ちて、少し向きを変え蓼科、西天狗と東天狗が仲良く、スラスラと案内をしてくださりさすが山歴40年と感心、お見事です。

予定より10分延長の11:15赤岳と小さく見える富士山を見ながら下山開始。下りは滑落しないよう、アイゼンを引っ掛けないよう慎重に下りる。
中岳沢降り口で1本休憩を入れて11:43沢道を下る。積雪が少く雪が寒さで締まっている状況で雪崩の可能性がほぼないので沢を下る判断である。最初は少し急な下りだが、徐々になだらかになり登りに比べたらあっという間に行者小屋に12:21到着。アイゼンを外してテントの撤収を行う。ポールを抜いたテントを裏返しパタパタとゴミを払い表に戻す。
その後4本ともほぼ損傷無しでペグの掘り出しを成功させた後雪穴を埋めて、アイゼンをザックにしまって13:22下山開始する。凍結で滑りやすい道を尻もちを何度かつきながら、5組程先に見送り休憩をはさみ15:50美濃戸山荘を通過、大晦日の沈みゆく夕陽を追いかけて16:40八ヶ岳山荘前駐車場に到着した。

記録 MATCH
追記(N)  美濃戸手前で後ろを歩くMATCHさんに「靴底が変です」と声を掛けられた。見ると私の靴底のかかと部分がパックリ?れていた。これからというときだから、対処しなければならない。  アプローチ用にゴム底に鋲を打った簡易スパイクアイゼンを試しに持ってきていたし、行動時にはアイゼンを装着するので、靴底が直接地面や雪面に着くことは避けられるから、テーピングテープで固定しようと考えた。ただし持っているテーピングテープでは不足する可能性もあったので、赤岳山荘に寄っておかみさんに「余分にテーピングテープなんかがあれば、分けていただけないか」とお願いした。すぐに「針金がいいよ。あげるからそれで固定しな。」といただいた上に手伝ってもらった。三角巾で足首を固定するのと似たやり方で固定した。そしてゴム底の簡易スパイクアイゼンを着けて、石や岩に当たって針金が切れないようにした。テントでは針金を外して靴を脱ぎ、翌日行動前に靴を履いた後針金で再固定した。幸い終始問題なく行動できた。メンバーに話して、帰り際に赤岳山荘に寄ってお礼かたがた名物の肉うどんなどを皆で食べようと考えていたが、日没まで時間が押してきたので、気持ちばかりのお礼だけして帰った。
 今回は、たまたま首尾よくいったが、赤岳山荘のおかみさんに「針金を1メートルくらい持っているといいよ。」と指摘された。以前は、セオリー通り針金とプライヤーを携行していたが、最近はさぼっていた。気になるときは長めのプラスチックの結束バンドを4、5本持って行くこともあるが、それはそれとしてやはり針金は持っていた方がいいと思い直した。
 諸兄姉の参考になりますれば…


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