赤岳西壁主稜と横岳西壁石尊稜の記録

日程:2017年12月21日(木)〜23日(土)

12月21日(木) 快晴(赤岳鉱泉の最低気温−12℃、最高気温−2℃)
7:00横浜⇒厚木経由⇒小淵沢IC⇒11:00赤岳山荘駐車場11:20?南沢経由?14:30行者小屋15:15?石尊稜下見→16:30行者小屋

M(H)CLの膝のケガが芳しくなく、予定していた涸沢岳西尾根が中止となったため、赤岳主稜と石尊稜へ計画変更した。21日(木)朝にM(A)さんと西さんをそれぞれの自宅でピックアップした。平日ということで渋滞もなく11:00前に美濃戸口に到着。最近雪は降っておらず冷え込む日が続いていたので(20日の赤岳鉱泉の最低気温は−13℃)美濃戸口でチェーンを付けた。予想通り一部凍結があった。

11:20に赤岳山荘の駐車場を出発。ペースは上がらず途中3回の休憩をして14:30に行者小屋に到着した。テントを設営して石尊稜の下見に向かう。中山乗越を越えて標識の所からのショートカットを観察してから、一般的な橋の所から日ノ岳ルンゼへ入るルートのトレースを追いかけて進んだ。トレースがしっかりしているのを確認できたので、ショートカットで一般道の方へ抜けて道筋を付けた。行者小屋に戻ってもキャンプサイトには我々のテント一張りだけだった。水場で水を普通にとることが出来た。

12月22日(金) 快晴(赤岳鉱泉の最低気温−13℃、最高気温−4℃)
4:30起床6:30→7:30文三郎尾根取付き→7:45(1P)チョックストーン8:00→8:45(2P)→11:00上部岩壁基部→11:50上部岩壁凹角上→12:25小凹角下→13:05ピナクル→13:20赤岳13:55→文三郎尾根→15:10行者小屋

夜の冷え込みは厳しく寒い朝を迎えた。キャンプサイトに他のテントは無いのに静かに黙々と準備を進め薄明るくなった6:30に準備体操をして出発。文三郎尾根からのトラバース入口に小一時間で到着した。トラバースには雪が少なく、岩稜帯を超える部分があり怖かった。少し上に行ってから横に移動した方が簡単だった。ロープは使用せず。

1P:チョックストーンは下の岩も露出していて威圧感があった。ASAさんリードで突破。先のルンゼも雪がついていないため落石しやすい状況だった。ロープの流れがよくなるように長めのプロテクションをとって正規のハンガーボルトの終了点まで伸ばして終了。

2P:引き続きASAさんリードで進む。左から外に出る感じでスタートして左上し、開けた岩稜通しで進む。狭くなったリッジ上の岩にある2本のハンガーボルトでビレイ。

3P:リッジ右から雪稜を真っ直ぐ歩くと中間の小岩壁の基部に着く。右下にビレイ点。

4P:小岩壁の凹角部を抜け、脆い岩稜を進む。露岩のハンガーボルトでビレイ。

5P:斜度のあるリッジと雪壁を登る、まだか?と思うほど進んだところにハンガーボルトが1個打ってありそこで確保。

6P:雪の斜面を登り、上部岩壁の基部のハンガーボルト2つで確保。

7P:上部の核心部を再びASAさんリードで進む。出だしは岩を乗り越えて進み、高度を感じながら右のルンゼに回り込みクラックの隙間をすり抜ける。雪は付いていなく岩登り。抜けてすぐ先のハンガーボルト2本のビレイ点で確保。

8P:雪面というより岩の斜面を登る。左にあるピナクルで確保。

9P:まだあったか?と思う凹角状の岩が立ちはだかる。ASAさんがリード。50mを目いっぱい伸ばしてピナクルで確保。

10P:ロープを引きずって一般道に出て終了。
一般道に出てロープを束ねて、赤岳北峰の頂上山荘脇の日向で休憩した。南峰に移動して写真を撮って文三郎尾根を行者小屋まで下山。下山途中に主稜を見ると2,3のパーティーが登攀していた。
12月23日(土)曇りのち晴れ(赤岳鉱泉の最低気温-7℃ 最高気温0℃)
4:00(起床)6:00→7:00取付き末端尾根下部→7:30下部岩壁取付き8:00→8:40 1P終了点→9:00 2P灌木でビレイ10:00→10:31小岩峰→10:45中間の小ピーク11:25→12:10上部岩壁→13:10ピナクルでビレイ→14:10石尊峰終了点14:30→15:10地蔵の頭→15:45行者小屋16:50→19:20赤岳山荘⇒21:00横浜

4:00に起床しラーメンを食べてテルモスを補充して6:00に出発。中山乗越を越えて、下見をした道標からショートカットする。石尊稜取付き方面にはトレースがしっかりついており順調に取付き末端尾根の下部に到着した。トレースは末端尾根を登っていて雪壁方面に足跡はかなった。雪壁側から尾根に上がりたい所だが雪が深かったので、トレースを追って尾根に上がった。尾根の上に出るまで雪の付きかたも微妙で脆い岩が露出していていやらしい。Nさんに先頭を代わってもらいロープは出さずに突破した。

下部岩壁の取付きに7:30到着。ガスが出ていて寒い。Nさんリードで登攀開始。雪はあまり付いていなく足場を探してアイゼンを乗せて、時に草付きにバイルを決めて登って行った。岩場の後半の草付きのトラバースも雪は少なくて凍土にバイルを決める状態だった。

終了点の立木でNさんが確保システムをリードビレイに変更して、KNとASAさんは立ち木でプロテクションを取りながらそのままリッジを越えて小岩峰の基部の立木に進みNさんを確保した。ロープ2本を付けたNさんに上がってきてもらい、そのままリードで進んでもらう。今回は小岩峰を左の草付、雪壁から巻いて上がった。
ロープが伸びきったところでビレイを解除してコンテに切り替えリードがコンテ終了点に着いたら支点確保にして登る方法をとった。ここからしばらくはコンテで進む。練習をしていないのでリードが何をしているのか分からず、意思疎通が難しかった。

中間の小ピークに3人上がったところで再びリードビレイに変更して狭い雪稜を50m目いっぱい伸ばしたところの木の根でビレイ。晴れ間が出てきて景色も良くなってきた。上がってきたNさんにそのままリードで進んでもらう。ここでもロープが伸びきったところでコンテに切り替えて上部岩壁取付きまで進んだ。先頭はトレースがなくなっていて少々ラッセル。

上部岩壁はASAさんのリードに交代。高度感のある岩壁の凹角からリッジ上を登り右の雪壁をつめて特徴的なピナクルでビレイ。最後はNさんのリード。50mでは届かないので、ここでも伸びきったところでコンテに切り替えた。14:10に石尊峰の自然石碑に到着。装備を解いて地蔵の頭まで進み食事休憩をとった。既に15時を過ぎており今日中の下山を迷ったが、行者小屋に明るい内に到着できたので下山することに決定した。歩き始めるとすぐにヘッ電となり19:20に赤岳山荘の駐車場に到着した。風呂には寄らずに双葉SAで夕食を食べて渋滞も無く帰宅した。

記録 KN

【コメント(N)】
<赤岳主稜>
・赤岳主稜の1ピッチ目のチムニーにはスリングが何本か下がっているが、ホールドとしては使わない方がバランスよく登れる。股を左右に開いて上げたい方の足側の手で突っ張りながら足を上げる凹角登りで登れる。もしスリングを使いたいならばプロテクションとして使う方がいいのではと思う。
・壁が凹角をしたテラスにある1ピッチ目の終了点のアンカーは手前と奥の2ヶ所にあるが、手前の方はペツルのハンガーボルト1個と残置ハーケン1枚があるが、残置ハーケンの方はグラグラで今にも抜けそうな状態なので要注意。

<石尊稜>
・前回は、雪質が安定していたので鉾岳ルンゼ末端近くから直接取付に至る雪壁を登ったが、今回は少し手前で石尊稜末端尾根の側面で樹林が切れている所の境目辺りから尾根に上がって取付に行った。雪崩の危険性を避けるためにはこちらから登った方がいい。
・下部岩壁の始点のビレイ点は左側の残置支点を使った。前回も同じ支点を使い雪が着いていた左側から登ったが、今回は右側の段々の草付から登った。下部岩壁はホールドが一見外傾しているように見えるが、足場をよく見るとしっかり立てるところが比較的豊富にある。ダブルアックスだと快適。
・1ピッチ目はスタカット方式で私がリードして登攀。2ピッチ目は1ピッチ目のフォロワー二人が1ピッチ目の終了点に来たら、私がビレイをリードのビレイに切り替え、二人にはそのまま先に進んでもらった。適宜立ち木にプロテクションを取ってもらいながら50m目いっぱいロープを伸ばして小岩峰の基部まで進んで確保を取ってもらった。私は確保されてそこまで登り、そのままその先へ適宜立ち木でプロテクションを取りながら進んだ。ロープがいっぱいになり、確保者がビレイを解除し、セルフビレイを解除するのをロープの張りで感得したら後ろの二人とコンテで同時に進んだ。その際、リードは適宜立ち木にプロテクションを取りながら進み、フォローの二人がそのプロテクションを外すのに立ち止まるのを感じた時は立ち止まってその作業が終わるのを待ってまた進むというやり方で行動した。それで雪稜、雪壁を200mほど進むと、中間の小ピークに着く。ここで傾斜の急な樹林帯の雪稜、雪壁が終わる。この小ピークでは、木の根、枝をアンカーに使えるので、後続を支点ビレイで確保した。
 ここからの200mの雪稜、雪壁は傾斜が緩み、立ち木もまばらになって見晴らしが利く。この次のピッチも2ピッチ目と同じ方法で後続二人に先行してもらい、50mいっぱいロープを伸ばしてもらう。その次のピッチからは先ほどのコンテと同様の方法で私が先行して上部岩壁の基部まで進んだ。
 上部岩壁1ピッチはスタカット方式で麻子さんリードで登攀。その先は、私が先行してコンテで登った。途中にもう立ち木はなく、ピナクルと最後のガレ場左側にある残置ハーケンでプロテクションを取った。
 今回コンテで登ったところは、不安に感じるところはなく、万一にそなえて適宜プロテクションを取り、仮に落ちてもあまりダメージはない状況と思われた。もちろん人それぞれで、不安を感じる場合は、スタカット方式で登るべきだと思う。当然、一つひとつスタカット方式で登るよりはコンテで登る方がスピードアップが図れる。その際、先行と後続がそれぞれ相手の行動をよりよく予想、感得して同時に動くと、お互いの負担を軽減できる。

【コメント(ASA)】
<赤岳主稜>
・赤岳主稜の1ピッチ目のチムニーは、スタンスにアイゼン痕くっきりついている。ホールドは、落ち着いて登れば突っ張りで問題が無かったのかもしれないが、焦って下がっているスリングをつかみたくなってしまった。次回は残置スリングを使わないで登りたい。鷹取山での事前練習の時より下半身のウェアが厚いせいか、足の上りが悪かった。練習時は、アイゼンの高さ+αの余裕をもった足の運び方を練習しておくと良い。
チョックストーンの2段目は、右手のアックスを打ち込んでバランスを取った。乗り越すので、アックスが効いているか不安があったが、結果的には十分効いていた。
チョックストーンを越えると雪が付いていないルンゼで、ロープを引いた時に落石を起こしてしまった。ビレイヤー・後続者の居場所が限られているので、落石は厳禁。落石が起きそうと事前の声掛けは行ったが、もっとジワっと行動すれば良かった。
・リードのピッチでは、ロープの流れに気を付けてプロテクションを取った。

<石尊稜>
・下部岩壁は、ダブルアックスだったが、手がかじかんで上手く打ち込めなかった。スタンスはそんなに細かくは無いと思う。次回はリード出来たらと思う。
・途中の雪稜部分が長く感じた。(トポで200m+200m)晴天時や体力に問題がなければ、そんなに難しい雪稜ではないが、今シーズンも遭難が起きている。悪天候だったり、体力の消耗、パーティーの実力によっては、進退を考えながら行動すべきと思った。
・上部岩壁の1ピッチ目をリードは、難しくはないが、高度感が今回の山行で一番だった。
<全体を通して>
 装備は、立木やピナクルでプロテクションを取る事が多いので、スリング+カラビナのアルパインクイックドローのセットが使いやすかった。
自分がリードしたピッチで声が通りづらい状況でも、ロープの引き具合などで後続に自分の状況を察知してもらうことが出来、時間を無駄にしなかったのが良かった。厳冬期の寒い中、意思疎通できず時間がかかってしまうのは、精神的にも体力的にも辛い。今後もバリエーション山行前は、メンバー内の意思疎通がスムーズに出来るように事前練習を行い、相互の行動を察知できるようにしたい。
金曜と土曜が登攀日だったため、他のパーティーに急かされることが無く快適だった。初めての人が行く際は、平日を絡めると精神的に楽だと思う。
 最後に、、、下山中に、Nさんが70歳になられる頃には、若手メンバーのリードでNさんをバリエーションに連れて行きます!と言えるようになったら良いなと言っていましたが、山行を終えて時間が経つと、やはりNさんはリードが似合うのでいつまでも勇姿を見せていただきたいと思いました。(笑)
KNさん、Nさんのおかげで、バリエーション2本を比較的スムーズに終える事が出来き、感謝感謝です。

 

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