剱岳 源次郎尾根縦走

日程 2017年8月11日(夜)〜14日

 <行動時間>
8月11日(金)
 竹橋発22:30
8月12日(土)
室堂バスT着/発6:55/8:00−雷鳥沢キャンプ場8:45−剱御前小舎10:36− 剱沢キャンプ場着/発11:20/13:00−剱沢雪渓13:45−キャンプ場着15:00
8月13日(日)
起床2:30−キャンプ場発3:15−剱沢雪渓3:47−尾根取付4:20−涸れ滝4:45− 核心部6:48−稜線(ルンゼとの合流)7:15−第1峰8:55−第2峰9:51−懸垂開始− 10:06−剱岳12:04−前剱14:20−一服剱15:01−剣山荘15:20−キャンプ場15:53
8月14日(月)
起床5:30−キャンプ場発7:17−雷鳥沢キャンプ場9:15−みくりが池温泉10:15− 室堂バスT発12:30−新宿20:40

 <山行報告>
 (第1日目)
竹橋を20:30に出発したバスは途中、新宿を経由し一路、室堂を目指した。夜中は雨はさほど気にならなかったが、明け方、稲穂は濡れていた。室堂のバスターミナルに着く頃は本降りとなったが、これは天気予報通り。問題は明日降らないかだ。
準備をしていると、八ッ峰を目指すM隊と合流。お互いの成功を祈った。出発する時は雨も上がり晴れ間も見えて気分が明るくなったが、雷鳥沢キャンプ場に着く頃にはまた本降りとなった。前日も雨だったとのことで、キャンプ場のテントは昨年より少ない感じがした。つづら折りで急坂の雷鳥坂を登る途中で、TさんとABさんとすれ違った。先に室堂入りし長次郎谷を登ったようで、達成感のある笑顔で迎えてくれた。剱御前小舎まで来ると、その下のハマグリ雪渓や別山方面等、昨年よりはるかに残雪が多い。キャンプ場に到着。テントを設置後、偵察のため雪渓地点まで歩き、雪の状態を確認した。
 (第2日目)
2:30に起床し、3:15に出発。満天の星、下弦の月。周りのテントの多くに灯りがともり、すでに出発するグループもいた。装備点検をして、ゆっくり慎重に進んだ。しばらく行くと足跡しか聞こえない静寂の中で、黒ユリの滝が一際響いて聞こえた。雪渓は近い。アイゼンを装着し雪渓を降りていく。前方に平蔵谷出会いの目印となる大岩がうっすらと影を現した。薄暗いなかで取付きを探した。登り始めると、急登でありまた前日までの雨のため、草の多い斜面と岩が滑って登りにくい。ほどなく涸れ滝に到着した。ここではロープを出す予定はなかったが、濡れた岩が滑って足が掛かりにくいことから、お助け紐を準備した。Nさんが先に登り支点を確保し後続が続く。準備に多少時間掛かり、後続がハイマツの中へと続いた。ここからさらに松などが生い茂る間を登っていくと核心部の岩に出た。
 早速、ロープを出し鷹取山での練習の通り、ミッテル方式で登っていった。今度は先ほど違い時間が掛からずスムースに進んだ。ルンゼとの合流地点では、右へのトラバース地点がなかなか見つからない。YLDは上部の藪漕ぎを試みたが断念した。結局、その下の枝と岩を支点として移動した。朝食を摂り元気が出たところで、第1峰を目指す。岩のホールドをしっかり確保してどんどん登っていく。1峰からの眺めは素晴らしい。右手に長次郎谷の雪渓を登る人が見え、その先の八ッ峰でも岩の上に人が見える。目前に聳える2峰、剱岳まではまだまだ困難な道のりのように感じた。1峰からの下降は足場が狭く斜度もあり注意が必要だ。少し降りると2峰への登りが始まる。左が切れてナイフリッジの急登と思っていたが、岩が腰から肩くらいまであり怖さは感じなかった。
 2峰に向かうハイマツの上で雷鳥の親子に遭遇した。少しほっとしたが、雷鳥を見て喜ぶべきか、こんな岩場まで追い詰められているのを悲しむべきか、あまり考えずに先を急いだ。
 いよいよ2峰に到着。YLDが支点を確保し、最初に懸垂下降をした。何度も練習したので、誰もが約30mの懸垂下降に不安も怖さも感じることなく実施できたようだ。もっともNさんの『セルフビレイに体を預けて、両手でセットするんだ!』という大声のほうが怖かったかも。約40分で全員の懸垂下降が終了し、ロープをまとめ少し離れた地点で一服。目前に剱岳山頂を望めるが、急登、ガレ場、落石の恐れ等、まだ油断はできない。
 いよいよ山頂が近づいた。YLDが先頭でゆっくり進んだ。山頂直前のガレ場で全員を握手で迎えてくれた。YLDにとっては2年連続の撤退、捲土重来、今回は3回目のトライでようやく源次郎尾根制覇だ。感動、安堵、疲労、そして心地よい達成感。すべてが込みあげてきた。山頂は混んでいた。残念ながら曇っており眺望は望めなかったが、誰もが達成した感の喜びに満ちた顔をしていた。
 30分ほど休憩し下山を開始した。カニのヨコバイのトラバースも急なガレ場の下降も今まで歩いてきた源次郎尾根に比べると、比較的容易な気がしたのは気のせいだろうか。平蔵のコル付近で一服したところで、今度は雷鳥の砂遊び−虫落とし−に遭遇。前剱、一服剱と順調に下山していった。ようやく剣山荘に到着した。この辺りは花と緑と雪渓に包まれて気持ちよかった。
雪渓を何度か通り過ぎて、剱沢小屋でビール購入組と別れて、キャンプ場に戻った。 行動時間12時間40分におよぶ山行が無事終了した。Yさんの強いリーダーシップ、Nさんの身体を張った指導、参加者全員の強い思い。万感の思い。
(第3日目)
 最終日は5:30に起床、朝食、テント撤収後、7:17に剱沢キャンプ場を後にした。背後には剱岳がどっしりと構え、昨日の長かった山行の余韻に浸った。みくりが池温泉で汗を流し、12:30発の新宿行バスに乗った。残り11席のうち7席ということでラッキーだった。

(余話)
・13日は戦いすんで日が暮れたテン場に車座になり、成功を祝って乾杯と反省会をした。目の前に広がる源次郎尾根、別山尾根の広大な地帯を望み、13時間近く掛かったとはいえ本当にこれだけを歩いたとは思えず、NAKAGさんのいう『人類の一歩は大きい』に同感。
・落石は避けられなかったが、ただ『ラーク!ラーク!』と無暗に叫ぶだけでは不安を与えるだけだという。タイミングが大切であるとのこと(Nさん)。
・この時、映画『点の記(剱岳)』が話題となったが、上映は2009年(最高の話題作とのこと)であり、約8年前のこと。
・原作の新田次郎には、播隆上人の苦悩を描いた『槍ヶ岳開山』や加藤文太郎の生涯を描いた『孤高の人』など名作も多い。山を知らない学生時代に読んだが、また読み返してみたい。

(KATA記)

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