谷川岳西黒尾根雪洞構築・生活訓練

日程 2015年3月7日〜8日

【行程】
2015年3月7日(土)
横浜県民サポートセンター前6:30発=自動車(久野車)=11:10谷川岳ロープウエイ駐車場11:40→11:50谷川岳登山指導センター12:00→12:10指導センター上でワカン装着12:25→13:00西黒尾根上送電線鉄塔(休憩・場所選定・打ち合わせ)〜13:30鉄塔近くで雪洞掘削開始〜17:30雪洞構築終了〜20:30就寝

3月8日(日)
5:00起床〜6:35雪洞出発→7:00ロープウエイ駐車場6階・神奈川県山岳連盟雪崩救助講習会受付

【概要】
 日曜の神奈川県山岳連盟主催の雪崩救助講習会への参加と組み合わせて前日の土曜に雪洞構築・生活訓練を行った。雪洞構築場所は、講習会の受付の都合も考えて、西黒尾根下部にした。
 例年より多い積雪で、雪洞構築には十分な雪量だった。一方で押圧されるためかかなり硬い部分があり、掘るのに苦労があった。
 今回は、5人が寝られる雪洞をひとつ掘ることにした。2カ所から横穴を掘り始めて、進行方向を直角に変えて両方の穴が出合う方法で作った。今回は、スペースと快適性を十分確保するやり方でやってみた。

【記録】
3月7日
 午前中に谷川岳ロープウエイ駐車場に着けば明るいうちに雪洞構築ができるだろうという見通しで、横浜を当日朝6時半出発とした。11時過ぎに着いた。天神平でスノーボードの大会が開かれるとのことで、駐車場も混んでいて、3階まで上がってスペースを確保できた。  水上のコンビニで仕入れた昼食を摂りながら準備をして11時40分に駐車場を出る。指導センターに寄って登山届を提出した後、西黒尾根に向かった。今日は見通しが利くので雪洞構築予定地の西黒尾根上の鉄塔とそこへの送電線も見えた。
指導センターの少し先まで車道のアスファルトが出ていて、その先は数mの雪の壁となっている。その雪の壁の手前で左手の踏み跡にしたがって樹林のまばらな西黒尾根南面の雪の斜面に入る。10mかそこいら登ると、おそらくヘアピンカーブした車道の上と思われる平な雪面に出た。その上は足がもぐりそうだったので、そこでワカンを着けた。そこからほぼまっすぐ上の尾根を目指して登る。その近くに鉄塔がある。
 事前に地形図を見てこの西黒尾根南面も雪洞構築場所の候補になるかもしれないと思えたので、観察しながら登る。斜度計で計ってみると、25度〜35度くらいだった。40度くらいあると最適だが35度くらいでもOKだ。
尾根の近くにこの程度の斜面があればいいが、と思いながら登る。
 尾根の稜に近づくと、登ってきた斜面が稜上に乗り上げる所の右側(鉄塔側)と少し離れた左側(山頂側)の2か所に小さな雪庇が張り出しているのが見えた。尾根のこちら側が風下であることが分かる。
 稜上に上がって鉄塔の所まで見に行く。60pほどの段差部分があり、そのあたりの積雪は最低3mくらいありそうなので、一旦下へ掘ってから横穴を掘ることもできる。ここも候補の一つになる。
 もう一度、稜上に上がる所に戻ってよく見ると、足場は少々斜めであるが、その傾斜は緩く少しならせば平らになるし、尾根の側面(横腹)は積雪深も3m以上あって適度な傾斜があり横に掘るだけで雪洞が構築できるから、ここに雪洞を掘ることにする。  5名全員が寝ることができる大きさの雪洞を作るのに十分なスペースがあるので、一つの雪洞を掘ることにする。居住部分の基本スペースは、奥行2m(身長+α)、横幅一人50p×5人=2m50p、となる。今回は、横になった時に雪の壁に身体や寝袋等が触れないように周囲にさらに10pくらいの余裕を設けることにし、そこに幅5pの冷気逃しの浅い溝を掘ることにした。つまり、奥行2m20p、横幅2m70pの生活スペースの雪洞を掘ることにした。
 設計をみんなで確認し合った後、まず足場の高いところの雪を掘って低い方に寄せて、足場を平らにした。雪洞が出来上がった時の横幅の端の位置に合わせて、左右2カ所から穴を水平に掘りはじめる。まず、正面の雪を削り、幅スコップ3個分、高さ約150pくらいの垂直の断面を作り、上から30pくらいを天井部分として残して、その下から奥に向かって掘っていく。
スコップを上、左右に刺しこんで切れ目を入れて、最後に下に刺しこんで柄を持ち上げると雪のブロックが切り出せる。最初は、そのブロックは捨てる。ある程度掘り進んだら、掘り出したブロックは、掘り始めた2カ所の穴のうちの出入口にする方の通路部分の周囲に防風のためにブロック塀のように積む。雪が硬くなってきたらスノーソーで切れ目を入れた後スコップを刺しこんでブロックを掘り出す。
 掘り出す人は、作業スペースに限りがあるので一人ずつ。掘り出す作業は、疲れないうちに交替し、他の人はブロックを運んだり、積んだりする。ある程度奥行が掘れたら2カ所から掘り始めた穴が出合うように進行方向を直角に変えて掘る。
 今回は奥の方の雪が非常に硬く、皆掘るのに苦労したが、スノーソーをうまく使って掘り広げた。最初に掘り始めた2カ所の穴の片方を雪のブロックで埋めた。居住部分のスペースが確保できたら、上から順に、雫が垂れないように天井の突起をならし、ろうそくや小物を置く棚を壁に掘って、壁の裾の部分を靴で固め、周囲に溝を掘った。これらの作業で出た雪を外に出し、出入口にする方の穴をブロック1個分の幅でブロックを積んで塞ぎ、出入口を狭くした。居室から通路に出る玄関部分を30pくらい掘り下げて、出入りの動作がやりやすいようにした。これには、雪の吹き込み防止、冷たい外気の侵入防止の役目もある。
 雪洞の外では、天井を踏み抜かれないように、周囲に標識旗の竹を10本刺した。最後に出入口にツエルトを垂らし、上端をピッケルと雪のブロックで固定してドア代わりとした。  これで雪洞構築完了。中に銀マットを敷いて各自の荷物を入れる。雪洞崩壊、埋没時の脱出に備えてスコップ、スノーソー、ピッケル、アイゼン、ヘルメットは中に入れた。
 濡れて困る荷物はビニール袋に入れる。 中で夕食を摂って8時半頃就寝した。
 就寝中、天井が下がることもなく、水滴が垂れてくることもなく、寒くもなかった。全員が同じ感想で快適な雪洞であった。

3月8日
 今日は、全員神奈川県山岳連盟主催の雪崩救助講習会に参加する。5時に起床して、朝食を済ませて準備して、6時35分に雪洞を出て、講習会の受付場所のロープウエイ駐車場6階に向かう。時間もあまりないし面倒だからとツボ足で下ったので、ズボズボとはまってしまった。7時ころ受付に合流した。

【反省点など】
 正面の雪面に穴を掘り進むとき、左端の方がまっすぐではなく左の方に広がるように掘りがちになる。右利きの場合、スコップの柄を右手で持つのでスコップの先が左斜め前に向きがちになるからだろう。今回もだんだん奥に行くにしたがって末広がりになり、結果的にブロック1個分くらいの幅を余分に掘り出した。その分不必要な仕事に時間を費やすことになるので気をつけた方が良い。
 雪が硬いので、スノーソーが雪に挟まれて動かせない状態になることもあった。スノーソーは手前に引いて雪を切るようにした方が良い。逆に押して切るようにすると、切って出た雪の粉が外に出てこないで切った面に詰まるので、スノーソーが動かしにくくなる。
 非常に硬い雪をスコップの剣先を突き刺して削るようにするやり方とスノーソーで切り込みを入れてその後スコップで剥がし取るようにするやり方の両方をやってみたが、やはりスノーソーを使った方が効率的だった。
 今回、スコップを流してしまった。無意識に不用意に置いたのだろう。他人には注意しておいて自分がやってしまった。流れたスコップが人を傷つけたり、建物や車に当たって破損させたりしていないかとヒヤヒヤした。幸い途中で枯木の枝に引っかかってそういうことなく回収できたのでよかったが、スコップは非常に滑りやすいので、手を離すときはよくよく心して注意しなければいけないなと思った。


(記録:N)


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