北岳バットレス第四尾根登攀の記録

日程 2014年9月12日夜行〜15日

【行程】
◆9月12日(金)
 22:00横浜平沼橋=自動車=25:00芦安市営第5駐車場(テント仮眠)
◆9月13日(土)曇りのち夜晴れ
 6:00起床6:55〜7:00芦安市営駐車場バス・乗合タクシー乗場10:40=バス=11:40広河原12:00〜15:00白根御池キャンプサイト(テント泊)
◆9月14日(日)晴れのち曇り夜晴れ
 2:00起床3:10〜5:50(取付待ち1:10)7:00 bガリー大滝7:50〜8:30 cガリー横断〜9:00(取付待ち2:00)11:00第四尾根取付〜第3ピッチ12:30〜14:30マッチ箱懸垂支点〜同懸垂下降終了14:50〜16:30枯木テラス〜17:00城塞チムニー〜17:30終了点〜17:45大テラス18:05〜19:25八本歯のコル19:35〜22:15白根御池キャンプサイト(テント泊)
◆9月15日(月) 曇り
 6:00起床8:05〜9:50広河原10:25=バス=11:25芦安市営駐車場バス停〜11:30第5駐車場11:40〜11:50芦安市営第3駐車場・白峰会館で温泉&食事13:20〜18:50頃横浜

【記録】
◆9月12日(金)
 22時相鉄線の平沼橋駅前に集合してKN車で芦安の駐車場に向かう。連休なので駐車場の混み具合を心配した。25時芦安着。案の定今までは停められたバス停そばの第3駐車場までは空きがなかった。少し下がった第5駐車場に停めることができ、車とテントに分かれて仮眠した。
 明日は白根御池までだから、これまでの経験から通常だと6時半くらいに起きても大丈夫だろうが、混んでいるから6時起きにした。
◆9月13日(土)
 6時起床。第5駐車場は満杯になっていた。トイレ等もあるため第3駐車場のバス停・乗合タクシー乗場に移動。徒歩5分程度。これまでの経験では乗合タクシーの方が乗車時間が短かったのでタクシー乗り場に行く。と、なんと長蛇の列だった。100人とかいうレベルだ。バス乗り場にも大勢が待っている。しばらくタクシーの列に並んだあと、バスの方が少なそうだということでバスに並ぶ。すると、山梨交通の係の人が、バスはもう乗れないと言う。山梨交通の配車もパニクッているようだ。  その後もバス乗り場とタクシー乗場の間を右往左往して両方に並んで、結局10時40分にバスに乗ることができた。5時ころから並んでいた人でも出発できたのは10時ころだった。本来のバス時刻は7時55分だったので、我々で3時間程度の遅れだった。非常に疲れた。これは、8月が広河原への県営林道ががけ崩れで通行止め&天候不順でこの日に登山者が殺到したということのようだ。山梨交通の人も前代未聞だと言っていた。
広河原も人がいっぱい。登山道も登山者で渋滞、という有様だった。テントの場所が確保できるか心配になる。  15時キャンプサイトに着く。やはりいつにないテントの多さだ。探したが適地がないので、普段なら張らないような石がゴツゴツしたり、少し窪んだ場所に2張張った。我々より遅く入った人たちは草地を払ったり、通路わきまで出張って張ったりしていた。
 いつもなら下見に出ていたが、この時間では叶わない。4度目だから分かるだろうとの思いもあった。ビールを飲んで夕食を摂って19時過ぎに就寝した。夜空は満天の星だった。

◆9月14日(日)
 2時起床。3時過ぎに出発する。
《下部岩壁Bガリー取付まで》
 大樺沢に出るといくつかのヘッドランプがチラチラと先行している。二俣から二つ目の沢で水流があるところがバットレス沢(※注)との考えで進むと水流があるところの大岩に薄く「D沢」の赤ペンキ書きがあった。時間的に考えても少し登り過ぎたようだ。先行したパーティもBガリーの入口を見逃したとのことで戻ってきた。まだ確信を持って言えないが、大樺沢の沢に寄って歩いて見逃したのかもしれない。もっと尾根寄りを歩くべきだったかも。  戻ってきたパーティと一緒に少し戻って小尾根に取付く。最初のうちは以前通ったBガリーへの道と同じように感じた。途中ちょっとしたスラブがあるはずなのに無いのでおかしいと感じた。夜も明け尾根が開けると、前方にdガリー大滝に大勢のクライマーが見えた。C沢とD沢の間の小尾根を登っていたのだった。見事に間違った。50分くらいロスしただろう。たまにしか行かないわが会のようなオールラウンドの会では、よほど考えて取り組まないといけないと改めて思った。

そのままdガリー大滝を登ろうかとも思ったが、不案内だしすごい数のクライマーなので、C沢のガレ場をトラバースしてB沢とC沢の間の小尾根を少し登ってBガリー大滝に至った。もう6時前だ。

岩が赤っぽいのが特徴のbガリーの取付にもパーティがいっぱいだった。

先行5、6パーティが登るのを1時間10分待つことになる。我々の後にも数パーティが上がってくる。待つ間にこぶし大の落石が2回あった。もちろん先行パーティによる人為的なものと思われる。bガリーは他に比べ落石が少ないと言われるが、あると思って落石のルートになりやすいところを避け、常に落石を意識して待機した方がよい。
MHさんの感想
 今回行ってみて第四尾根の取付に行くのが大変だと思った。一般道から入る目印は暗闇の中歩くので見つけにくい。そしてガレ場の通過は落石を起こさない様に最新の注意をして歩かなくてはならない。下部岩壁の取り付きでは落石が何回かあり常に上を向いて待機している状態だった。
MAさんの感想
 第四尾根のアプローチは、暗い中では見つけにくいということが、今回身にしみた。 ※注 帰って確認すると、たまたま見たガイドに水流があるのがバットレス沢と書いてあったが、それは間違いで、バットレス沢は涸沢で、水流があるのはC沢で登山道沿いの水場でもあるようだ。(もっともかなり前の本では、どの沢も涸沢と書いてあった。)以前はいずれも下見してすんなり行けたので、その辺のことがあいまいになっていたようだ。バットレス沢は、右手の樹林が切れたところで出合う涸沢だが、暗い中では分かりにくいかも。我々以外にも見逃したパーティが数パーティあった。
《下部岩壁bガリー登攀》  N・MH・MA(Nパーティ)とKN・Y(KNパーティ)の2つのザイルパーティで登攀開始。第四尾根終了点までこのパーティ構成で登攀した。
●1ピッチ目 25m V
(Nパーティ Nリード)
 bガリー大滝は、2ピッチだ。Nパーティでは、1ピッチ目N、2ピッチ目MHリードで登った。1ピッチ目は奥の凹角も登れるらしいが、通常登られているように手前のクラックを登ってテラスで切った。途中2か所にピンがあった。テラスのビレーステーションは、3パーティで融通し合って使用した。  Nパーティは3人パーティでリードを交代するのでロープを付け替えなければならない。フォロワーに繋がった2本のロープを手繰る時に、別々の場所に落として絡まないようにした。次のピッチも続けてフォロワーで登る人がビレーステーションに着いてセルフビレーしたら、ロープの重なりの上下が逆になるように自分側の端から手繰り直すか、まとめてひっくり返すかしてスムーズにロープが出ていくようにした。このロープワークはかなりスムーズにいった。

MHさんの感想
 下部岩壁では皆クライミングシューズを履いていたが、私とNさんは登山靴で登った。普段鷹取山の学校フェースでトレーニングをしているので行けるという思いはあった。実際に登ってみると鷹取山の方が難しく学校フェースは良いトレーニング場だと感じた。今後も継続的に続けていこうと思った。

MAさんの感想
 下部岩壁は比較的簡単に感じたが、落石が頻繁に起こり危ない。また、ここはアプローチシューズでも登れる所であるが、痛めていた左足首に力が入りづらい状況なので、体重のかかり具合を感じやすいクライミングシューズで登った。

(KNパーティ Yリード)
KNさんの感想
 YさんとKNのパーティはYさんがカムを持っているので、奇数ピッチをYさんで偶数ピッチをKNが担当するツルベでの登攀で進む事にした。
 5年前はメレルの短靴で登ったが、今回の短靴は岩で滑るのでクライミングシューズに履き替えた。3m程上からトラバース気味にクラックに入ることも出来るが、下部のビレー点からスタートした。最初のピンは5m程登ったところにある。

●2ピッチ目 40m V
(Nパーティ MHリード)
 2ピッチ目はフェース。終了点は、小広いテラスで、すぐ左に草付の中への踏み跡が続いているところだ。クライミングシューズで登った人は、登山靴に履き替えた。

MHさんの感想
 下部岩壁の2P目は、私がリードした。トポを信用せずに、前のパーティがピッチを切った所で私もピッチを切った。そしたら後、5〜6m上にテラスがあってそこでピッチを切れば時間が短縮できたと反省。それ以降、先行パーティのやっていることは必ずしも正しいとは限らないので、トポと自分の判断で行こうと心に決めた。

(KNパーティ KNリード)
KNさんの感想
 何処でも登れそうなので中間支点を外さないようにクリップしながら登る。小石が多いので落石しないように神経を使う。特に終了点ではロープで落石を起こさないように細心の注意が必要。

《第四尾根の取付まで》
 bガリー大滝の終了点から水平に踏み跡を左に行き、直ぐに草付の中を直上してじきに開けた岩床に出る。そこから左手のルンゼを登る。少し登って、行く手を遮る小滝状を右から巻く踏み跡をたどる。するとルンゼの小滝状の上に戻って、ルンゼを横断して横断バンドの踏み跡に入る。横断バンドは灌木の中。一旦横断バンドに入ってみると、明瞭な踏み跡となる。ほぼ水平に歩く。ほどなく、灌木帯が切れてcガリーに下りる。
cガリーは第四尾根上部の崩壊の影響なのだろう、無秩序なガレ場となっており、以前あった下方への踏み跡は完全に消えていた。その代り、まだそれほどしっかりしていないがほぼ水平に踏み跡があった。ちょうど女性二人パーティがアンザイレンしてガリーの端を下から上がってきた。さらに上から第四尾根の取付に向かうとのこと。
 cガリーを水平に横断して見に行くと、横断した先に水平の踏み跡があった。立木が横に寝て通せんぼをした形になっているが、その先まで踏み跡があり、そちらはリッジ通しでロープを出して取付に至るルートになる。
横に寝た立木の手前にルンゼがあり、そこは見覚えがあった。下から登ってきても結局このルンゼを登ったのだった。ここを登ることにしてみんなを呼び、クライミングシューズに履き替えた。
 ルンゼから土と岩が混ざった段々を登ると、途中一か所左へのかすかな踏み跡があるが、そちらへ入らず、さらに登る。はっきりした左上する踏み跡をたどると第四尾根の取付に出る。近くまで行くと取付にいるパーティの声が聞こえてきた。  取付には、たくさんのクライマーがいて、順番を待っていた。ルート上にも数珠つなぎのように取付いている。順番を確認して待機。近くに待っている人とここまでのルートについてなど話したりする。山岳会の人たちは、何だかんだ似たり寄ったりなので話をするのも楽しい。天気は暑くも寒くもない。
 と、1ピッチ目から落石。私の背中の後ろに落ちてきた。まな板とかPCのキーボードぐらいの大きさ。登り始めたパーティのロープの塊の上に落ちたので表皮が切れた。ロープの上だったので跳ねずに他に被害が出なかったかもしれない。まともに当たっていたらただでは済まない大きさの石だった。  時間が経っても後続のパーティがどんどん上がってきて全員がテラスに上がれなくなる。踏み跡からとリッジ通しと両方から上がってきて、順番が判然としなくなるので、神奈川県岳連のYさんが、前後のパーティの顔合わせをしたり名前を名乗り合わせたりして交通整理をしてくれた。

MHさんの感想
 Nさんの案内で第四尾根の取り付きに到着。人数が多く、びっくり。我々が到着してからも次から次へと来ていたので、早く出発して良かったと実感した。

MAさんの感想
 今回記憶に刻まれたのは、落石だ。第四尾根取付で大勢のパーティがいる中、我々5名もそれぞれ分散して待っていた所に大きなとがった落石がNさんめがけて飛んできたのは恐怖だった。少しでも当たっていたらヘリコプター搬送は間違いない落石だった。鷹取山で岩場での過ごし方をNさんから教わっていたので、自分はラクの声とともに、岩にくっついて、フォールラインから瞬時に離れる事が出来た。日頃の訓練や注意されたことを身に付けて置く事は大切だと感じた。

KNさんの感想
 bガリー大滝を越えて踏み跡のある草付きの斜面を登ると自然に(5年前は入り口が分かりにくかった記憶があったが今回は踏み跡通りで自然に入れた)尾根を越えてcガリーへ出る。崩壊前はcガリーを少し下って行ったが、今回はほぼ真横へトラバースしてバンド(踏み跡明瞭)に上がった。崩壊前にcガリーを下ってから登り返した時の岩場を一つ越えた所に合流できた。岩場を上がり、上がりきったところを左に行かないように上方へ草付きをロープ無しでよじ登ると取付きテラスにたどり着いた。

《第四尾根主稜》
●1ピッチ目 40m W+
(Nパーティ Nリード)
 2時間待って我々の番がきた。先行パーティは、順番待ちで詰まっているからと、ほとんどビレー点のスリングに足を掛けたり、アブミやスリングを垂らしたりしてA0で登って行き、1ピッチ目のクラックは何となくA0ありきという雰囲気になっていた。  一段上がって右足のフットホールドをスラブ状のちょっと凹んだ部分と段に、左足のフットホールドをクラックと左壁に求め、左手を時にクラックの右側のエッジにかけて右足とのオポジションを作った。スラブ状のフットホールドはしっかり乗れば滑らない。プロテクションには、左壁の小さなクラックにキャメロット#1を設置し、少し上の残置ハーケンを使った。
 次のビレー点は、2ピッチ目を左のリッジ寄りを登るのに都合がいい左側のものと右のフェース&草付混じりを登るのに都合がいい右側のものと2か所あるが、左の物は先行パーティが使っていたので、右のビレー点を使った。

MHさんの感想
 ようやく我々の順番が回ってきてNさんが核心部の1Pをリードする。Nさんがカムを手にとるとギャラリーから「bRのカムを設置するのか?」という声がする。Nさんが取り出したカムはbPで使用するクラックも皆が思ってもいない所にセットしたので「なるほど!」と、ギャラリーから声がする。前のパーティはA0で登っていたので、Nさんの登攀で現場の空気がかわったように感じた。Nさんの動きもスムーズで1P目をクリアしていった。私もNさんの足の位置を覚えていたのでそれほど苦労しないで登れたが、今度自分がリードした時、うまくできるかは不安だ。

MAさんの感想
 1P目は、トレーニング不足と左足首の不安があり全力を出せず、また、大勢のパーティが順番待ちをしていて時間のプレッシャーがあったためA0で登らせてもらった。

(KNパーティ Yリード)
Yさんの感想
 KNさんとの分担で奇数ピッチを中心にリードを分担した。
 1ピッチ目は、思いっきり人工を作り、省エネでクリアした。今思えばもう少し、時間をかけて攻めてもよかったかなという印象だ。

KNさんの感想
 1歩目が難しく、ハンドジャミングで登る記録も多い。クラック2m程の中側にちょっとした引っ掛かりがあるので左腕を伸ばして触れたら、右足を外傾している場所に乗せて左手に体重を掛けてレイバックで一気に上がる。上がる動作と同時に左足をクラックに挟まった小石に乗せて重心を左足に移動させて立ち上がる。その後はクラックに上手く手を入れながらくりくりと右足左足を一歩ずつ上げると右足を乗せられる所がある。右足を乗せたら左足は左壁の割れ目へ入れて(股開きの体制になる)一息つける。リードの場合この左壁の割れ目にカムを入れる。(ルート上のクラックにカムを入れるより支点の位置として良いと思う)そこから1,2歩フットジャミングを使って上がると左壁のハーケンに手が届き、後はいろいろな方法で上を目指せる。

●2ピッチ目35m V−
(Nパーティ Nリード)
 2ピッチ目は、今回は右のフェースから段々になった草付を登った。易しいが、残置支点は少ない。フェースの横に1本ハーケンがあっただけで、他には見当たらなかった。ハイマツにも取れるが、上部はU級程度に感じたので取らなかった。ビレー点には3パーティが集まった。

(KNパーティ KNリード)
KNさんの感想
 左のフェースを登るか右へ進むか選べる。右へ進むと草付きで巻き道の様に簡単に上がれるが、砂利が多く落石の危険はある。
●3ピッチ目40m V
(Nパーティ MHリード)
 白い岩の快適なピッチ。

MHさんの感想
 快適な岩登りだった。

(KNパーティ Yリード)
Yさんの感想
 スタンスもホールドも支点もしっかりしていて、快適なクライミングだった。

KNさんの感想
 右側(cガリー側)へ回り込み白い岩のフェースから、白い岩のクラックを登る。ビレー点はフェースを登りきってすぐと、岩を回り込んだ所と、一段上がった所とに数か所ある。一段上がった所が(足元に動く岩が多いが)次のロープの流れが良い。

●4ピッチ目15m U
(Nパーティ MHリード)
 3ピッチ目の終了点すなわち4ピッチ目の取付でも1時間以上待機となった。第2の核心部5ピッチ目、その先のマッチ箱の懸垂下降点で、時間がかかって渋滞しているようだ。ちょうどお昼時間なので行動食を食べたり、防寒着を着こんだりして待った。下からは待ちきれないように後続がどんどん登ってきたが、終了点はもういっぱいだった。途中の適当なところで待ちとなっていた。
 4ピッチ目は短いリッジ。終了点として使えるビレーポイントは2か所あった。

MHさんの感想
 2〜4Pは快適な岩登りだったが、渋滞しているので4P取付で1時間以上待った。待っている間、寒いので防寒着を着たり行動食を食べ次に備えた。
(KNパーティ KNリード)

KNさんの感想
 大岩の合間を登ってあっという間に終わる。
●5ピッチ目35m W+
(Nパーティ Nリード)
 前のパーティの後を追って登る。出だしは、第2の核心の3mの「垂壁」。「垂壁」と言われるが、垂直ではない。傾斜はかなり寝ている。X級ともされるが、体感はW級+くらいの感じ。クライミングシューズのお陰でもあるだろう。下部は左右のちょっとした岩の切れ目や凹みを拾ってスメアリングで立ち、右手のリッジでオポジションを作れば右から越えられる。越えたらナイフエッジを進む。前が空くのをエッジ上で待つ。ナイフエッジと懸垂支点の間にちょっとしたギャップがあり、そこでピッチを切りMHさんに登り始めてもらう。
MHさんの感想
 5Pの核心部は、足元を良く見ると乗れる所がありわりとスムーズにクリアできた。

(KNパーティ Yリード)
Yさんの感想
 核心のひとつとは言いながら、右側のホ−ルドをとれば、クライミングは終わり、あとは高度感との戦い。さすが、名物リッジですね。

KNさんの感想
 出だしのフェースが崩壊前の核心X級。出だしは下にあるとんがり岩に左足を乗せて、ビレー点のハーケンの下(岩がかぶっていて陰になっている)に右足を乗せる。フェースを良く見ると左に少し窪みがあるので左足を乗せる。手は頼れないが滑らずに立てる。右足を多少引っ掛かりそうな場所へスメアリング頼りに上げて、手は2、3mmの引っ掛かりに添えて、摩擦が最大になる様に踵を下げて立ちこむ。(この場所ならずり落ちてもふり出しに戻る)。この一歩を頑張れれば多少手の引っ掛かりも取れてちょこちょこ上がり立ち上がれれば右のガバ(裏側で見えないが)を掴める。しかしリードだとガバを掴むまではランアウトしており右側はcガリーへ落ちるので怖い。右眼下のcガリーに背中を向けて上がると一気に高度感が増しマッチ箱の頭へ繋がる細いリッジになる。天気が良いと左右に目のくらむ高度感で恐い(白根御池小屋の前からでも登っているのが見える場所)。マッチ箱の頭の手前に二人が立てるほどの割れ目がありビレー点がある。

●マッチ箱からの懸垂下降10m
(Nパーティ MHリード)
 懸垂下降支点がギャップのすぐ上と2mほど先と2か所あるが、アンカーとしては奥の方がしっかりしている感じなので、奥の方の支点を使うことにする。まずMHさんに支点に行ってもらってロープを整理して自分に連結したロープを使って懸垂下降の準備をしてもらい、先頭で下降してもらう。MAさんはロープを連結したまま、MHさんがセットしたロープを使って下降してもらった。MAさんに連結したロープは連結したままで、下降支点にセットしたロッキングカラビナに通して方向変換をさせ、私側は肩がらみ確保でバックアップを取る形で流した。ロープワークはスムーズにいった。
 マッチ箱の上から、その後のピッチの様子が見て取れたが、懸垂下降点から枯木テラスまでに3ピッチになっていた。二つ前くらいのパーティがパーティ内の意思疎通がうまくいかないようでどなりあっていた。

(KNパーティ Yリード)
KNさんの感想
 マッチ箱にはビレー点から届く所とてっぺんの2か所に懸垂下降用の支点がある。てっぺんの支点もdガリー側に小さなステップがあって立てるが、高度感たっぷり。我々は手が届く方を使って下降した。
●6ピッチ目40m V+
 懸垂下降地点は奥行のない長さ4、5mほどのバンドで3パーティくらいがセルフビレーできる支点がある。先行パーティは渋滞のため15mくらい上で一旦ピッチを切り2ピッチとなった。
MHさんの感想
 懸垂下降点から枯れ木テラスまで大渋滞で3Pに刻まれている。先行パーティにならうしかないとあきらめる。

▼6−1 15m V
(Nパーティ MHリード)
ここはフェースと右のコーナークラック寄りと両方ルートが取れる。松嶋さんはフェースからコーナーを回って行った。
(KNパーティ Yリード)

Yさんの感想
 マッチ箱の下の斜面。右側のクラック横のカンテを使えば、随分と楽。

KNさんの感想
 右のクラック沿いに上がる。2つ目のプロテクションはマッチ箱側のハーケンで取るため、スラブに立ちこんで手を伸ばす体制が悪かった。

▼6−2  25m V+
(Nパーティ MHリード)
 途中からクラックがあるフェース。終了点のテラスにはハーケンが3か所あったが、1本はグラグラで手で抜けた。
(KNパーティ KNリード)

●7ピッチ目30m W
本来、1ピッチで枯木テラスまで行けるのだが、枯木テラスにもパーティがいるので、先行パーティは、その少し前でピッチを切っていた。我々もそこで切るしかなさそうだった。したがって枯木テラスまで2ピッチとなった。

▼7−1 20m W+
(Nパーティ MHリード)
 最初左寄りにフェースを直上し、2mほどの三角形の小垂壁を右に回り込むようにしてリッジに出る。右に回り込む手前が、フットホールドが細かい。そこがW級よりほんの少し難しく感じるかもしれない。
(KNパーティ KNリード)
KNさんの感想
 dガリー側を進むのかcガリー側を進むのか迷うが、ハーケンはcガリー側にあり、cガリー側を登る。ホールドが細かく高度感があり、越えても支点がとれず少し怖い。渋滞のため進めないのでハーケン2本(1本は頼りない)でビレー点を構築する。

▼7−2 10m V
(Nパーティ MHリード)
 枯木テラスまでの短く切ったピッチ。リッジ上を行く。
(KNパーティ Yリード)
KNさんの感想
 枯れ木テラスまで短い。ビレー点は崩落面を眺める場所に3本ハーケンが打ってあるが、Yさんは気がつかず枯れ木でビレーしたため登り終わってから支点を移動した。崩落個所は想像以上に凄かった。5年前に通った場所は跡形も無くまったく別な姿になっていた。

●8ピッチ目20m V
 枯木テラスからは、崩落以前は崩落した岩のフェースを登ったが、今は残ったDガリー奥壁側の岩をトラバースして城塞ハングのチムニー下に至る。

(Nパーティ MHリード)
 出だしの所は、Dガリー奥壁側はのぺーっとしているがリッジ上にフットホールドがある。少し行くとDガリー奥壁側にフットホールドが出てくる。リッジを両手で持って足をオポジションを利かせたスメアリングでカニさんのように横移動する。途中1か所残置ハーケンがある。リッジが切れギャップになって城塞下のスラブに続いているが、そのギャップは容易に越せる。その先は、スラブだが傾斜は緩い。スラブにビレーステーションがある。

MHさんの感想

 枯れ木テラスからのトラバースも怖いとインターネットの記録に書いてあったが、難しくはなかったので助かった。
(KNパーティ Yリード)
Yさんの感想
 枯れ木テラスからのトラバ−ス。大きな岩が動きドッキリ。
KNさんの感想
 ナイフリッジを掴みながらトラバース。出だし1,2歩は手を頼りに足はスメアリングのみになる。以降はつま先を掛けられる所もある。クラックを跨ぐ所でホールドが動く部分がある。割れ目の向こうは一段下がっていてステップがあるので座り込みで左足を伸ばして足を乗せてから重心移動をする。またぐ際に崩落個所が見えて恐怖感があるのだが、自分は一瞬で重心移動したので良く見えなかった。

●9ピッチ目20m W+
(Nパーティ Nリード)
 いよいよ最終ピッチ。城塞ハングに切れ込んだチムニーを登って、第四尾根の終了点に至る。先行パーティが核心部分を抜けたのに続いて、ビレーステーションの少し左から登る。  薄かぶりのチムニー部分は長くない。抜けるのに2mくらいか。右足も左足もなるべく外のフットホールドを拾って凹角登りで登り、左足を左壁の上の足場に置いて立てば、チムニーを抜ける。そこまで、よく見れば適当なフットホールドがある。残置ハーケンは4本ほどあった。チムニーを抜けると右上する緩い傾斜のクラックでクラックの外を登り、ハイマツの中を平らな終了点に上がる。少し歩いて太いハイマツをアンカーにしてビレーステーションとした。先行パーティが後片付けをしていた。フォロワーは、MAさんに疲れが見えたので、順番を変えて中間をMAさんにした。なお、念のためにアブミも準備したが、通常のコンディションであれば不要と思った。 わが隊2パーティの完登、17時30分。取付から6時間30分。下部岩壁取付から10時間30分の登攀だった。  終了点で靴を履き替え、ロープをまとめて大テラスへ移動。 MHさんの感想
 最後の城塞は見た目難しそうに見えなかったが、一か所難しい所があり、MAが苦労したが、空身でクリアできてホッとした。私はMAの荷物を自分のザックに詰めてクリアした。思ったことはアタックザックであれば、MAの荷物は入らなかったので、大きいザックで来て良かった。またMAを2番目にしておいて良かったと感じた。Nさんの作戦は大成功だった。すぐ後ろのKNさんYさんも無事に登攀を完了して、皆で握手をした時は、何とも言えない満足感でいっぱいになった。MAもNさんの配慮もあってのことだが、7月上旬に怪我をして、その後たいしたトレーニングをできない中、良く頑張りました。全員無事に終えることができて本当に良かったです。

(KNパーティ KNリード)
KNさんの感想
 崩落後の核心となる城塞ハングは薄暗くなり始めたのもあり、先行のNさんパーティにプロテクションを残置してもらいA0多用で登った。赤いピトンまで普通に上がり、クラック下部に一旦入って右足を外のステップに乗せ左足も外の大きな凹部分に置き、一旦クラックから体を出し一段上がる。再度クラックの中に入るが、幅が狭まっておりザックが引っ掛かって入りにくい。中に入ると右手アンダーがあるのでそれを使い体勢を作って左上へ抜けるが、ザックが引っ掛かりすんなり左は向けない。ズリ上がり上を覗くと支点がなかったので一度戻って体勢を整えなおして登った。ランアウトのまま小テラスの這松まで上がりビレーを取って終了。小テラスでロープだけたたんで、ちょっとした岩場を左から越えて大テラスに移動して装備を解きながら大休止。長時間のバットレス第四尾根登攀が終わった。

Yさんの感想
 このころには完全スタミナアップ・腕はパンプ状態。3回テンションをもらう。やはり難しいですね。

●大テラス〜白根御池キャンプサイト
 大テラスで記念写真を撮り、登攀具を整理して、ヘッドランプをヘルメットに着けて北岳への稜線へ草付の中の踏み跡をたどる。途中暗くなり、ヘッドランプを点けて稜線へ上がり八本歯のコルから大樺沢を下り、二俣から帰幕した。夜間行動は時間がかかるが、慎重に下った。大樺沢を下っているときも、まだ北岳の稜線手前でヘッドランプがチラチラしていた。  帰幕時間、22時15分。小屋は消灯時間が過ぎ、ビールはなし。遅い晩飯・カレーを作って摂る。遅くても食欲あり。11時30分頃帰幕したパーティもあった。後で聞いたところ、我々の二つ後のパーティまでは、明るいうちに抜けられたが、そのあとのパーティは最終ピッチを、ヘッデンを点けてA0での登攀だったようだ。

◆9月15日(月)
 6時に起床して、ゆっくり朝食、テントの撤収をして広河原へ下った。広河原では、山梨交通がうまくやり繰りしたようで、時間通りにバスが出発した。芦安で温泉に入り、昼食を摂ってKN車で帰浜。夕方には着いた。

●全体を通しての感想●
MHさんの感想
 神奈川山岳会に入る前の話ですが、北岳に登りました。そのときバットレスでクライマーをみて、凄く危険そうだと思いました。でもなぜか自分もやってみたいという気持ちがありましたが、自分とは無縁だと思っていました。まさか自分がバットレスに行けるなんて思ってもいませんでした。山岳会に入会して鷹取山で岩トレーニングの指導をして頂き、いずれはバットレスに行こうと思っていたので、大変嬉しい気持ちで胸がいっぱいです。今回無事に行けて良かったと共に山岳会に入って良かったと思えるひと時でした。リーダーのNさん、一緒に行ったメンバーに感謝です。ありがとうございました。

MAさんの感想
 今回自分は7月に足首の骨挫傷・靱帯損傷をして以来、初めてのクライミングだったため、体力や怪我の悪化の心配をしていたが、無事、登攀出来て良かった。

Yさんの感想
 やはり、人気のクラシックル−トですね。クラックあり、リッジあり、スラブありとバリエ−ションも高く、楽しいル−トでした。  反省として、最後は腕も体も完全にスタミナアップ。練習不足が如実でした。本チャンに臨む体力とチャレンジ精神。今後に向け、トレ−ニングで磨きます。また、同行いただいたメンバーの方、心から感謝します。
(文責 N)



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