谷川岳東尾根

2014年10月24日夜発〜10月25日

【行程】
10月24日(金)
横浜21:00発=自動車=23:40JR土合駅(仮眠)
10月25日(土)
4:00起床→4:45JR土合駅駐車場発→4:50第二駐車場5:00→5:15谷川岳登山指導センター→5:45マチガ沢出合6:00→6:50第一見晴台→マチガ沢→7:15大滝7:25→7:40シンセン沢出合→8:10シンセン沢二俣8:15→8:45右俣途中の緩傾斜の岩場→9:10シンセンのコル9:25→9:37小さな岩場を右から巻いて稜線に戻る→10:15 7mの垂壁10:35→10:45第2岩峰手前→10:55第2岩峰途中の平たん地→岩峰を直登を試みるが懸垂下降で戻り、右から巻く→11:50第2岩峰の頭12:00→12:27観倉台12:35→13:00第1岩峰の基部→13:10第1岩峰13:32→14:10オキノ耳14:30→15:50西黒尾根上巌剛新道との分岐16:10→18:14西黒尾根登山口


【行動記録】
10月24日(金)晴れ
今月初めに来た時と同様、深夜はロープウエイ・ベースプラザの立体駐車場は利用できないので、土合駅の構内で仮眠して早朝第二駐車場に移動することにした。今回は好天で山麓の紅葉も盛りなので土合駅も仮眠者で混んでいるかと思ったが、前回より空いていた。
10月25日(土)快晴
5時ヘッ電を点けて第二駐車場を出発する。谷川岳登山指導センターに寄って登山届を出す。
マチガ沢出合へ歩く途中から明るくなる。マチガ沢出合でハーネスを着けて巌剛新道を登る。出合から50分ほどで第一見晴台に着いた。今回は、見晴らしが利いた。前回は、他にパーティはいなかったが、今回は東南稜に行く二人パーティと単独行の男性がマチガ沢に入った。大滝手前で休憩し身支度・装備等を整えた。大滝は、水線を除いて今回は乾いていた。
前回と同じように下段は右から、上段は左から登った。濡れた岩でも滑らないと評判のムーンスターのジャガーシグマと思しき運動靴を履いた軽装の単独行者は、上段は真ん中あたりを登って行った。
大滝上の大岩が散在するところを抜けるとすぐに視界が広がり、すぐのところに右から枯れたシンセン沢が入っている。  岩が段々になったシンセン沢を30分ほど登ると、右俣と左俣に別れる二俣に着いた。前回はここまで来て、雨で濡れた草付を嫌って撤退したのだった。  左俣は、前回はガスのため近くでしか見えなかったが、今回は遠くからも見えた。左俣の入口は中央に縦の黒い帯模様がある滝に見えた。前回は、この黒い帯模様には気づかなかったが、雨などで全体が濡れていると見えにくいのかもしれない。
右俣の入口は、草に覆われた溝という感じで、踏み跡もはっきりせず、見通しが悪いときには見逃しかねない感じだ。
 右俣は、登り始めて少しの間は踏み跡がなく適当に溝に沿って登るが、そこそこ傾斜もあり、足元は草で滑りやすく、掴むものもあまりないので登りにくかった。私は、バイルを使った。なお、私はアクアラバーの沢靴を履き、草付ではピンソールを装着してみた。ピンソールは、それなりに有効だったが、沢靴は中で足が動き、多少登りにくかった。中敷きや靴下で調節すればいいのかもしれない。他のメンバーは、普通の軽登山靴やアプローチシューズで登った。
少し上がると、笹や灌木や足場になる岩が出てきたり、草の中にバケツ状の踏み跡が現れて登りやすくなった。
そんな草付をしばらく登ると、右手に傾斜の緩い開けた感じの草混じりの岩場が出てきた。その岩場には、懸垂下降支点が2、3か所あった。岩場は、ホールドが豊富なU級−くらいの感じで快適に登れた。 その岩場を登り、さらに少し左寄りに移って、草付、笹の中をシンセンのコルに向かう。シンセン岩峰の一番左の岩峰の左下がコルだ。そこまではそれなりに傾斜はあるが、すごく急というほどでもない。  笹の中を10mかそこいら登ると、シンセンのコルに出た。ルートファインディングしながらで二俣から1時間弱かかった。コルで15分休憩した。シンセン沢の反対側は一ノ倉沢の一ノ沢。






一ノ沢は、積雪期の登路だ。一ノ倉沢の奥には、衝立岩、烏帽子岩が見える。
シンセンのコルのすぐ先には岩が立ちはだかるが、岩の右側つまり一ノ倉沢側の基部を簡単に巻けた。そのあとしばらくは、U級程度の岩稜が続く。
シンセンのコルから100mほど進むと、7mの岩壁が現れた。歩いて行ってぶつかった正面は、垂壁に見える。ただ、ホールドはそれなりにある。壁の少し手前にリングボルトが2本、壁の基部にハーケンが2枚打ってあった。ちょっと頼りないが、そのハーケンをアンカーにしてロープを出すことにした。次のハーケンが左にあったのでそちらへ登ってみると、足元は切れているが、やさしそうなルンゼが奥にあった。どうもそちらが通常の登路のようなので、左へ1、2mほどトラバースしてルンゼを登った。V級−程度か。ルンゼを抜けた先に二人ほど立てる小テラスがあり、左の壁に残置のビレーポイントがあった。一段上がったその上は、4人が立てる平らな場所で、そこでロープをしまった。
この垂壁を越すと、開けた稜線だ。正面には岩峰が見える。その岩峰は、第2岩峰の始まりのようだ。垂壁を越してからまず一ノ倉沢側に一旦移ってすぐに稜線に戻り、少し稜線上を進んでマチガ沢側を巻き気味に進んだ。側面の傾斜が緩くなったあたりから踏み跡が稜線上に上がっていたので、その踏み跡をたどって稜線に上がった。
稜線まで上がると、ほぼ平たんな場所だったが、すぐ正面に岩峰があった。第2岩峰の続きだろうか。 基部にハーケンが2枚あった。左上にもハーケンが見えたので、ロープを出して登ってみることにした。
フェースの正面は逆層気味だったので段々になった左側を登った。20m弱登り切った先は切れていて、そのまま先に進むとすれば右側面の垂壁をトラバースしていくことになる。ホールドはなくもないので、行けなくもなさそうだが、W級くらいの感じ。「新版日本の岩場」(RCCU著、昭和52年版、山と渓谷社)によると、第2岩峰の頭まではU級を越すことはない、とあるので、どうも適切なルートではなさそう。ロープは30mで先の様子も見えないので、引き返すことにした。
側面の垂壁にハーケンが1本あった。他にハーケンを打ち込めそうなリスもなかったので、そのハーケン1本に捨て縄をかけて懸垂下降のセットをして下りることにした。ハーケンは、テストしてみて利いてはいる感じだったが、なるべくロープに荷重をかけないようにクライムダウン気味に下りた。
他にルートがないか見てくれた久野さんが、右に踏み跡らしきものがあると言う。少し進んでみると行けそうに見えたのでそちらへ行った。岩峰の基部の岩の段々を巻き上がり、沢状の草付を右上して少し戻り気味にザラ場を左上して稜線に出た。どうもそこが第2岩峰の頭のようだった。というのも、そこからコースタイムどおり30分弱で観倉台に着いたからだ。ひょっとしたら、もう少し先までマチガ沢側を巻き気味に行っても第2岩峰の頭に出たのかもしれないが、確信はない。
第2岩峰の頭からは稜線通しに岩稜と灌木・笹の中を進むと360度の展望がきく小広い台地に出た。もちろん道標などないが、一ノ倉沢が俯瞰でき、観倉台と確信できる。
 下を見ればシンセン岩峰、一ノ倉沢、マチガ沢が見え、上を見れば正面に第1岩峰、その先にオキノ耳が見えた。オキノ耳には人がいるのが見える。観倉台で小休止して核心部の第1岩峰に向かう。

第1岩峰までは見晴らしのよい稜線を行く。第1岩峰は右の一ノ倉沢側を巻くか直登する。巻く場合は、一ノ倉沢二ノ沢本谷上部の急峻な草付をトラバースすることになる。そこは、冬は傾斜の急な雪壁となるようだ。 今回は、直登することにする。第1岩峰の基部は傾斜がある。壁の下部にハーケンが2本あった。それをビレーポイントとする。左上にハーケンが2枚見える。クラック状が左下から右上している。クラックが斜上する傾斜はそんなに急ではない。このクラックをルートにするのがよさそうだ。

まず一段上がるが、そこから直接クラック状に上がろうとするとハング気味で、いいハンドホールドもない。そこで一段上がったら一旦左へ移った。フットホールドは少し細かいが立てる。そこから右上する。一番右の小さく平らなフットホールドに乗る時は、移動距離が少し遠い。手がかりはしっかりしたものがある。そのフットホールドに立ったあと正面に上がると、3人ほどが立てる土のテラスだ。体感的には、言われているようにV級+くらいだった。積雪期だと、ホールドが隠れたりすることもあるかもしれないし、寒さで身体の動きがにぶければ、体感的にはW級くらいに感じるかもしれない、と思った。終了点のビレーポイントはテラスの奥にある横に伸びた立木をアンカーにした。 テラスからは段差を上がって稜線に出た。視界が広がる。すぐに傾斜が緩い片流れの屋根のような岩をリッジを掴みながら横歩きで通過した。
あとは、稜線から草付の斜面にある踏み跡をたどって眼前のオキノ耳を目指した。オキノ耳とその右側にある大岩の間を通ってオキノ耳に上がった。
オキノ耳で写真を撮って、装備を解き大休止して、西黒尾根に向かった。西黒尾根途中の巌剛新道との分岐でヘッ電を装着して、西黒尾根登山口に18時に着いた。

今回の東尾根は、10月初めの雨の草付を嫌って撤退した山行のリベンジでもあった。天候に恵まれ、完登することができてよかった。歩かれているルートとはいえ我々にとっては初めてなので、ルートファインディングしながらの登攀は時間がかかったが、おおむねルートは確認することができた。ただ第2岩峰の通過ルートはこれが適切だというものは判然とせず、課題として残った。
冬の記録を見ると、第1岩峰の通過がポイントのようで、支点もほとんどなさそうだったので、カムやナッツが使えないか、場合によってはハーケンを打ちたそうかと思ってそれらを持っていったが、半分はそれなりに支点があったこと、半分はあまり余裕がなかったことで、時間をかけてしっかり見極めることをしなかった。

(記録:N)


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