南八ヶ岳・横岳西壁石尊稜



(一番右のピークが日ノ岳、その左が石尊峰)


日程 2014年3月22日〜23日


【行動概要】
2月22日(土)
横浜6:15発=自動車=10:20赤岳山荘駐車場10:40 → 12:50赤岳鉱泉テントサイト13:35 → 石尊稜アプローチ下見 → 15:20赤岳鉱泉テントサイト
2月23日(日)
3:30起床(朝食・準備)テントサイト5:12 → 6:10日ノ岳ルンゼ取付下6:20 →6:40取付 → 6:50下部岩壁登攀7:30 → 7:50 3ピッチ目下 → 9:30上部岩壁 → 10:55縦走路11:20 → 13:30テントサイト14:05 → 15:10赤岳山荘駐車場15:25 → 15:45小淵沢道の駅16:10 → 20:45横浜

 【行動記録】
3月22日 晴
早朝、横浜をKN車で出発。連休の中日ではあるが、前日が天気があまり良くなかったため、快晴の当日は人出で渋滞するのではないかと予想したが、時間が比較的早いからか、杞憂に終わった。
美濃戸口から美濃戸とまでは深い轍がある雪の道をKN車デリカは、ステップバーを少しこすったりしたが、首尾よく我々を運んでくれた。赤岳山荘の駐車場は、ほぼ満杯だった。何かイベントがあるらしい。
太陽に照らされ比較的暖かい気候の下、上はフリース、下はズボンにスパッツで赤岳鉱泉に向かう。北沢はなだらかで、足元も適度にゆるんでいて極めて歩きやすい。2ピッチ2時間余で赤岳鉱泉に着いた。テントサイトはほぼ満杯で、隙間を見つけ、掘られた穴を埋めて整地し、4天1張りを設営した。若い人のグループも多い。登山ブームを感じさせる。
テントを設営後ひと段落して翌日の下見に向かった。天気もいいので空身で行った。 赤岳鉱泉から中山乗越方面10分ほど歩き、樹林帯を抜けて開けたところから左方向へ石尊稜へのアプローチの明瞭な踏み跡があった。
だが、すぐにはそちらへは入らず、「中山乗越への急登が始まるところから北沢右俣(日ノ岳沢)へトラバースする」という記述を読んだこともあるので、そちらへ見に行った。先述の石尊稜への分岐から5分ほど歩くと、右に曲がって急登となるところで、まっすぐ入る踏み跡があった。そこにはロープを張って通せんぼしてあった。ロープを跨いで踏み跡をたどる。踏み跡はしばらくまっすぐ伸びていて、その後短いルンゼ状から山腹に上がっていた。中山尾根へのショートカットだろうか。ただ、ロープから入ってすぐの右手斜面は雪崩が起きそうなイヤな傾斜に見えた。いずれにしても、北沢右俣は左側近くにあるように木の間越しに見えたが、そちらへトラバースする踏み跡はなかった。後で、北沢右俣に入ってから見たら、右手へトラバースするかすかな踏み跡らしきものも見えたが、薄いものだった。 いずれにしても、最近は先述の分岐から石尊稜へアプローチするのが一般的なのかもしれないと思った。 その分岐へ戻って、横岳西壁方面へと踏み跡をたどる。雪は概ね締まっていて踏み抜くこともなく歩きやすかった。左から入る小同心ルンゼとの合流点を過ぎると少し傾斜が出てきて、じきに三叉峰ルンゼが出合う。出合いは広いが、先は廊下状になっていてアイスクライミングのルートらしさが見て取れた。 しかし、三叉峰ルンゼとの出合はもう少し先ではないか、という意見もあったのでもっと先まで進むと傾斜が増してきて左手のルンゼ(鉾岳ルンゼ)から流れ出た様子のデブリ跡が正面に見えた。そのルンゼ手前の左手に目をやると、何となく見覚えのある光景が広がっていた。草付と岩と雪がまだら模様の岩壁、そのすぐ下にダケカンバの立木が1本。その岩壁に至る尾根は岩と立木のミックスで、沢から見るとその尾根の山腹は今は雪だがガレ場の感じだった。尾根に上がらず直接ダケカンバの立木のところへ雪壁を登るトレースがあった。
ここが石尊稜の下部岩壁の下であることがはっきりした。私やSさんが登ったのは10年かそこいら前で、記憶がはっきりせず、Sさんは以前もよく取付を間違えた、ということだったので、下見をしてよかった。 下見の後は、帰幕した。

3月23日 晴
 3時半起床。3月下旬で天気もいいとは言え、やはり八ヶ岳。テントの内側には霜がついていた。準備して5時12分出発。アプローチの北沢右俣に入ると、大人数ではないが人が入った形跡があった。取付に向かう。雪質は締まり、安定しているので、トレースがあった雪壁から下部岩壁の取付へ上がる予定だ。  取付下の雪上には先行の3人パーティが休んでいた。後で聞いたところによると女性ガイドのパーティのようだった。
【下部岩壁】
 ダブルアックスの準備をする。先行パーティはすぐには動き出しそうになかったので先行することにして、雪壁を取付へと登る。そこそこ傾斜があるが雪が安定しているので問題なし。ダケカンバの立木を目指して登る。10分くらいの感じで取付に着く。取付には誰もいない。  少し後から、尾根上を1パーティ上がってきた。ガイドパーティだった。  下部岩壁は2か所のビレーアンカーのうち、左手のアンカーを使うことにする。頭上にはハンガーボルトが一つ、その数メートル上には残置スリング゙が見える。 壁の左端の方に雪が1mくらいついているので、そこから登り始めた。右上気味に4、5m上のハンガーボルトを目指す。アックスを凍った草付に刺して登る。岩は、ガイドや記録にあるとおり全体としては外傾しているが、よく見るとアイゼンの前爪で乗れるフットホールドはそこそこある。(ただし降雪直後など軟らかい雪が乗るとホールドも見えず、足元も不安定で難しくなるかもしれない。) 最初のハンガーボルトにプロテクションを取る。続いて5mくらい直上し、スリングの掛かったハンガーボルトにプロテクションを取る。 その上は岩の弱点を目で追うと左上するのがいいようだ。やはり古いスリングのかかったリングボルトとハンガーボルトが左手にある。スリングは岩に凍り付いていた。そのハンガーボルトにプロテクションを取る。 そこからは、左の段々になっている草付のルンゼ状へ雪壁を1mくらい横断した。20p幅くらいのバンド状のトレースができていた。 トラバース後、草付のルンゼ状を2、3mくらい上がると緩傾斜の雪面になっていて、その先はハング気味の段差になっていた。左へ行くほど段差は低くなり、左端の段差は膝高ぐらいでそこから容易に登れた。そこを越すと、リッジ状で、横に寝た感じの直径20pくらいのダケカンバの木があったので、そこでピッチを切った。50mのロープはまだ少し余裕があるようだった。 この下部岩壁の登りは、ダブルアックスでサクサク登れた。ただ慣れぬダブルアックスで、アックスとハーネスを結んだスリング、リストループの扱いがうまくなく、ロープと交叉させてしまったりして手間取った。スリングとロープの上下関係を考えてやらないと交叉させてしまう。多少手間でも、アックスは邪魔にならない場所に一旦刺しておき、リストループも外して作業した方がいいかもしれないと思った。
【下部岩壁上の急な灌木帯の草付・雪壁・露岩】
セカンド、サードはペツルルベルソ4で確保して適当に間をあけて同時に登ってもらい、そのままルベルソ4で確保した状態でロープを繰り出しながら、途中立木でプロテクションを取りながら安定してアンカーが取れるところまで進んでもらい、私を肩がらみ等で確保してもらった。 下部岩壁のあとは、ガイド本などでは通常コンテでいってもよいと書いてあり、実際当日のガイドパーティでは、1本のロープにクライアント二人を連結して登って行った。わがパーティは、3人ではコンテで登るには不安があったので、上記のような方法を採った。通常のスタカットで登るほどの危険性はないと判断した。5ピッチ目まで同様のやり方で進んだ。 なお、3ピッチ目には正面に小岩峰が現れたが、右の方へ踏み跡があったので、そちらを見に行くと段々の3、4m位の岩場になっていてU級+くらいの感じに見えたので、こちらから基部を巻くような感じで行くことにした。その岩場では横に伸びた立木にプロテクションを取った。その岩場を越えると、すぐに稜の右側に出た。そこの立木にプロテクションを取り、4、5m先の喉状になったところの右側の立木で後続をビレーした。ガイドパーティは、下から見て小岩峰左の雪壁を登ってきた。
5ピッチ目は雪壁を登り切ると露岩のピークに出た。露岩の左脇にある木の根をアンカーにして後続をビレーした。登ってきた二人にそのまま先行してもらうと、あとは大したことはないとのことであった。
【雪稜〜雪壁】
 露岩のピークからは先行した二人のロープがいっぱいに延びたら同時行動にすることにした。露岩の右を巻いて進むと、数mの雪稜があってそのあと10mほど下の雪面に降りた。降り口の木の枝にプロテクションを取ってくれていた。あとは開けた雪面で上部岩壁も見え、気持ちよく進んだ。この部分は200m程度のようだ。
【上部岩壁】
 緩い傾斜の雪稜をまっすぐ進むと上部岩壁にぶつかる。左側が3m位の凹状になっていて、正面のリッジ上に顕著なピナクルが見える。ビレーポイントは目の前の岩にある。  その凹状から登り始め、その先が切れているので右のリッジに上がる。高さ3m位の段々のホールドが豊富な3級くらいの岩場。リッジに上がるとすぐ目の上にピナクルがあり、スリングを掛けてプロテクションを取る。リッジの右側を登ると緩い傾斜のガリー状の雪面に出る。  雪面の20m位先にビレーポイントにお誂え向きの顕著なピナクルが見える。そこで後続をビレーした。
(正面にビレーポイントのピナクル)     (リッジからガリーに出てきた後続)
続く2ピッチ目もリードを交代せず尺取虫方式で進むことにする。後続は、ロープがいっぱいになったらビレーを解除し、同時行動することにした。ピナクルのビレーポイントからは、手前から見て右へ1〜2m進み、左手の浅いルンゼ状に入る。ルンゼの中には真ん中に岩が出ていて左右に登路が取れそうであった。左に行ってみるとハング気味の段差になっていて、右の方は岩の段々だったので右の方を登った。ルンゼを抜けると緩い傾斜の雪壁で右手に円筒状のやや大きなピナクルがあり、長めのスリングを掛けてプロテクションを取った。その後、左上気味にさらに雪壁を登ると、50mロープがいっぱいになった。後続がビレーを解除するのを感知して登攀を再開し、左手の岩の基部に沿って登った。岩にはボコボコ突起があったので2か所ほどプロテクションを取った。 登り切ると、稜線に出た。左手5、6m先に縦走路が見えた。さらに数m先に見えた露岩にセルフビレーを取り、二人を迎えた。この石尊峰の頂(というか「頭」という感じ)でザイルをしまい、しばらく休んで眺望を楽しんだ。 石尊峰を後にして、鉾岳の西面の雪壁をトラバースして地蔵尾根に向かった。なお、鉾岳は尾根通しにも踏み跡があったが頂上を越えてからトラバース道へ降りてきているようであった。  地蔵尾根から赤岳鉱泉に戻り、テントを撤収して北沢を下山した。
昨シーズンの時間切れ敗退のリベンジに意欲を持つKNさんと、今年になって行くことを決めた石尊稜。しかし、天候不順、風邪で順延になっていた。ようやく二人の都合もつき実施することができた。今回はSさんからも参加の申し出があり、3人で行くことになった。少し時間がかかったが、完登できてよかった。 個人的には、石尊稜はダブルアックスで登るのがいいという雑誌の記事を読んで、やってみた。初めてでアックスの扱いに手間取ったが、草付にサクサク決まり、岩角にもピックがよくかかり、確かに快適であった。

(記録:N)

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