谷川岳一ノ倉沢烏帽子沢奥壁中央カンテから国境稜線

日程:2012年10月13日夜発〜10月14日


  

【行動概要】
 10月13日
  二俣川20:30発=自動車=24:00谷川岳ロープウエー駐車場
 10月14日
  3:00起床→3:40駐車場発→4:30一ノ倉沢出合4:45→5:30テールリッジへの懸垂下降点5:45→6:00テールリッジ取付→7:10中央稜取付7:25→7:30中央カンテ取付7:35→7ピッチ(核心部)凹角手前11:20→7ピッチ目(2ピッチに分けたので正確には8ピッチ目)終了12:20→10ピッチ目(烏帽子岩側面のバンド)終了14:05→14:45懸垂岩→16:105ルンゼの頭16:30→17:10国境稜線17:20→18:35トマノ耳→18:40西黒尾根18:50→22:40登山口→22:50駐車場

【行動記録】
10月13日
ロープウエー駅の駐車場に車を止め、寝酒を飲んで車内で仮眠。以前と違って一ノ倉沢の出合いまでは車で入れないので、睡眠時間が1時間ほど少なくなる。
10月14日
ヘッ電を点けて1時間近く出合まで歩く。出合でハーネス、懸垂器具等を着け、ヘッ電を点けたまま一ノ倉沢に入る。
川原を少し行き右岸の巻道に上がる。しばらく草薮の中を行き、再度川原に下りた。川原を石伝いからヒョングリの滝手前の左岸のスラブに一旦上がったあと右岸に移って這い上がり、ロープが垂れ下がった10mほどの小さな岩場を乗っ越して高巻き道に上がった。8月と9月に来た時は、このあたりには雪渓があり、雪渓上を歩いて小さな岩場に至ったのだった。
多少急登の灌木の中の高巻き道をしばらく進むと、急に眼前が開け、テールリッジへの懸垂下降地点に出た。ちょうど明るくなり、見晴らしが良くテールリッジから烏帽子沢奥壁方向がばっちり見える。テールリッジ登高中の先行パーティが見える。
別の先行パーティの懸垂下降が終わるのを待ち、我々も懸垂下降した。9月に来たときは、雪渓が邪魔をしてロープが水の中へ入ってしまうので、段丘となったところまで懸垂してあとは残地の固定ロープを使い短く懸垂したが、今回は雪渓がなかったので、50mロープ1ピッチで沢床まで懸垂できた。
フィックスザイルを適当に使って衝立沢側を行き、テールリッジの樹林が始まるところの真下からテールリッジに上がった。テールリッジは、中間スラブの核心部には、その下からザイルが固定してあった。
   7時10分に中央稜基部に着いた。小休止して、クライミングシューズに履き替え登攀具をつけた。
烏帽子沢奥壁のバンドを落石に気をつけながら中央カンテの取付に向かう。先行パーティの声が聞こえる。バンドの緩い傾斜を登り切ったところに取付のビレー点があった。少し手前の上にもピトンとスリングが見えたが、奥の方が新しそうだったので、そちらをビレー点とした。
 Nが奇数ピッチ、Mが偶数ピッチ担当のつるべで登ることにした。
● 1ピッチ目 35m
岩は乾いていて快適。少しかぶり気味の岩下のバンド状のトラバースから始まる。すぐに土と草の階段状が現れ、そこから左上気味に登って、ビレー点。

● 2ピッチ目 50m
ビレー点左横の、ほんの少しふくらんだように出っ張った岩をまたいだあと、左上する。Mさんは凹状岩壁よりに登ったようで、凹状岩壁を登る先行パーティからルートのアドバイスがあったとのこと。
● 3ピッチ目 40m
ビレー点のすぐ上にカンテに向かう斜上バンドがある。濡れていてちょっといやらしい。濡れている部分を避けてなるべく外側を登った。
すぐカンテに出て少し直上すると、リッジの左側がフットホールドも多く、傾斜も緩そうに見えたので、そちらを行ったあとカンテ中央のビレー点に向かって右上気味にトラバースした。

● 4ピッチ目 40m
Mさんは、少しの直上後、右側の出っ張った岩(ピンが1本あった)の方から巻くようにしてリッジ上に上がろうとするが、手がかりがないようで、何度も躊躇してふんぎりがつかないよう。下から見ていると、右の岩の方からではなく、直上していけそうに見えたので、声を掛けてMさんもそちらからトライするがダメとのこと。結局右岩の方に戻って、遠くにある手がかりをつかんできわどく乗越した。
実際に自分が行ってみると、右からの方が弱点を突いていて、直上は意外と傾斜があり、ホールドもなかった。私は、右の岩の方から細かいフットホールドを拾って左へ出てから登った。そうすると楽だった。
● 5ピッチ目 40m
もろいルンゼ状を少し登ると、大きな口を開けたチムニー。最初体を中に入れ、バックアンドフットでずり上がり、あとは左右の壁の細かいホールドを拾いながら登った。ピンは十分にあった。登り切って少し上がったテラスでビレー。
安定したテラスで、見晴らしがよい。眼下の南稜テラスにクライマーが溢れていた。

● 6ピッチ目 40m
バンドを左上し変形チムニールートの正面ルンゼと合流した後、方向を変えてもろい斜面を右上し、大きなピナクル右下のテラスに出た。
● 7ピッチ目前半 25m
テラスから左へ一段上がると、3mくらいの垂壁があった。フットホールドは見当たらない。最初のピンに掛けたヌンチャクをつかんで体を上げ、垂壁上のタナのピンにかかった残置スリングをつかんでA0でタナに這いあがった。上がりきるのに結構力がいった。あとで同じところの記録を見ると、右下の少しかぶった部分の下あたりにフットホールドがあるのかもしれない。
這い上がった後はバンド状をほんの少し右へ行き、今にも崩れそうに見える岩にそっと足をかけてマントリングで上がった。
● 7ピッチ目後半 15m
少し登るとかぶり気味の凹角の下に出た。凹角ではアブミを試してみようと持ってきていた。凹角の上部は右から岩が張り出している。その下は2、3m程のスラブから2m程の立った壁になっている。張り出した岩の下までは、それほど難しくなく上がれる。張り出した岩のところには下端にピンが1本あり、それにアブミを掛けて乗ってみた。しかし、その上にはピンが見当たらない。想定していたアブミの掛け替えで登るわけにはいかないし、プロテクションも取れない。左足を左壁の細かいフットホールドに乗せて立ってみるが、次の手がかりが見つからない。左壁の上端は、角になっているが甘い。
疲れてきたので、下りて、下のスラブの残置ボルトをアンカーとしてピッチを切って、Mさんに登ってきてもらい、トップを交代してもらう。
Mさんも何度も挑戦するが、なかなかうまくいかず、いったん下りて、ナッツを使ってみることにする。結局、ブラックダイアモンドの10と11のナッツを凹角のコーナーに噛ませることができ、それにプロテクションを取って、A0で抜けた。抜け口にはピンがあった。
次は、フリーで登ってみたい。左壁の左寄りのフェースからいけるかもしれない。凹角を抜けるといわゆる四畳半テラス。名前から想像するような広さではなかった。

● 8ピッチ目 30m
7ピッチ目を前半後半に分けたので、西リード。四畳半テラスから左上し、正面ルンゼ上部の凹状部を横断して草付きに出たあと、左上する溝状のクラックを登る。ちょっと立っている。
● 9ピッチ目 20m
階段状の草付き。やさしい。
● 10ピッチ目 30m
段状の草付きを左上し、烏帽子岩手前のカンテ状テラスに這い上がった。まるで船の甲板のように平らで大きなテラスだ。登ってきた反対側に大きなロープスリングが何本か下がっている。こちらからは、空中懸垂したあと、南稜の終了点へトラバースできるようだ。おそらく南稜終了点から見える大きな凹角を空中懸垂するのだろう。
我々は、烏帽子岩左側面のバンドへすすみ、右壁にあるビレー点でピッチを切った。

● 11ピッチ目 50m
バンドから左下の外傾した岩が露出した幅広のルンゼに下りて、20mくらい登ったあと、左の草付きへ上がった。Mさんが笹の中の踏み跡らしい窪みを伝って進むが、ビレー点らしきものが見当たらず、ほぼ50mロープいっぱいとなったので、適当な潅木でビレー。
● 12ピッチ目 20m
 ほんの少し潅木の中を登ると、岩が露出してスリングが下がっていた。ここが南稜終了点へ下る懸垂下降点だろうか。時間を見ると、2時半過ぎている。かなり時間が遅いが、Mさんは国境稜線に抜けたいとの強い希望で、自分もそうしたかったのでそのまま懸垂岩の方へ向かい、途中の潅木でピッチを切って、終了点とした。
 あとは一ノ倉尾根への踏み跡を歩く。5ルンゼの頭はロープを出して登り、頭でシューズを履き替え、少し長めに休憩して国境稜線への踏み跡を辿った。
● 下山
 国境稜線へ抜けた時は5時を回っていた。装備を解いて西黒尾根へ向かう。オキノ耳に向かう途中で夕焼けを迎え、すぐに真っ暗になった。トマノ耳の手前では肩の小屋で電気がこうこうと点いているのが見えた。紅葉シーズンなので泊り客がいるのだろう。西黒尾根に入ってから、7時に、携帯電話が通じるうちにと、緊急連絡先(下山報告先)に電話を入れた。会では、午後10時までに連絡がないと遭難対策対応に入ることになっているからだ。
 ヘッ電だよりの下山をそれなりに楽しみながら着実に下った。なかなか高度が下がらず、長く感じた。やはり明るい時より時間がかかった。
帰路は、途中で遅い夕食をとり、サービスエリアで仮眠を取りながら帰った。横浜についたのは3時半ころになった。二人とも翌日はいつもどおり仕事をした。

今回は二人とも初めてのルート、一ノ倉沢の概念を十分に把握しているとは言えない状況、夜間行動だったので、非常に長い行動時間となった。もっと行ってルート、山域の概念を知りたい。それも楽しい。
(記録:N)

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