北ア・薬師岳縦走


日程:2010年8月10日(火)〜8月15日(日)


8月10日(火)
池袋駅東口に22時の定刻に全員集合する。23時00分発富山駅行きの夜行高速バスに乗車する。3列シートなのでかなり睡眠がとれた。天気予報では台風4号が九州の北にあるとのことで、明日は天気が持ちそうだが、日本海に台風が入ってくると、1日から1日半は天気が悪化すると予想し、どこかで台風をやり過ごそうと判断し、薬師平キャンプ場まで行くことを決定する。

8月11日(水)天気曇り・一時雨
 5時28分に富山駅に到着する。予約しておいたタクシーにて、折立へ向かう。タクシーの車内から立山の稜線が見えるが、薬師岳は雲の中。高曇りの様相である。台風の直接な影響は無さそう。1時間半ほどで折立に到着する。富山駅から折立の直通のバスは土砂崩れの影響から到着が10時近くになるので、折立までは有料道路代を含め23,680円と高額であるが、4人なのでタクシー利用とした。
 折立を7時25分にOK、AR、TSM、KOSのオーダーで出発する。樹林帯の急登を2ピッチで三角点に出る。青い空も一部見えはじめ気分も軽くなる。そこからは、明るい開けた登山道を行くのだが、薬師岳の頂は依然見えないのが残念。時折、雲が寄せて雨交じりになり、雨具を着用するが、思った以上に降らずに助かった。途中2回の休憩を入れ12時30分に太郎平小屋に到着する。早々に生ビールを飲む。そうこうしている内に雨が降り出し、小屋の軒下で様子を見る。暫くして雨が止み、小屋から少し離れた薬師平キャンプ場へ向かい、天幕を設営する。
 16時の気象通報を聞き天気図を作成すると、明日の昼に台風が最も富山県に近づくとのことで、明日はここで停滞かと判断する。夕食をテントの外で作り食べる。一応明日の起床は3時半と決め19時に就寝する。

8月12日(木)風雨強し
 夜中12時過ぎから風が強くなり目が覚める。かなりテントのポールが押し曲げられるほどの強風である。3時半に起床するが強風もあり、今日の行動は無理と判断したのかだれも起きずそのまま一寝し5時に起床して、朝食を食べる。雨も降り始め、今日は停滞と決める。7時過ぎから雨足が強くなり、テントの外へ出るのに難儀をする。雨足が少しでも弱まったときにトイレへ行く。やることがないでの持参した酒を朝の8時頃から飲む。 9時の起床通報では、朝6時の時点で台風は輪島の西北西の位置にあり、速度が毎時45kmと増していることを知る。11時過ぎが最も風と雨が強かった。その後も雨は大雨とよく降る。トイレに行くにも決断が必要だ。16時の気象通報で台風は秋田県に上陸し24時間後には東北を横断し太平洋に抜ける予報。しかし、朝鮮半島に低気圧があり台風一過晴天とはならないと判断する。天幕場の管理人は明日の午前中まで雨と言っていたが、明日の朝の天気で行動を決めるとして19時頃に就寝。このころには風がおさまってきた。

8月13日(金)曇り
 3時30分に起床。天幕の外は厚く雲がかかっているが、富山市内の夜景が見えた。何とか行動できそうなので、予定通りにスゴ乗越小屋へ向かうこととする。朝食を済ませ、5時15分に出発。雨がなく幸いと思い、薬師岳へ向かい高度を稼いでいく。薬師平を越えた所で休憩。2本目は薬師岳小屋で休憩。生憎のガスの中。7時51分に薬師岳の頂上に到着する。登山者はほとんどいない。薬師如来がおさまる祠の横で風を避けるように休む。
薬師岳から稜線に沿ってのびる登山道を下り、幾つかのピークを越えて北薬師岳に到着する。ここに来てガスが上がりはじめ、しばらくノンビリすると東の方面の赤牛岳から烏帽子岳がガスの中から表れてきた。結局1時間ほどゆっくりした後、間山へ向け登山道を下る。高山植物の絨毯の中で多数の雷鳥を見りして下ると、展望のよい尾根の上部へ出て休憩していると、みるみるガスが上がり、南には剣岳と立山、その右に針ノ木岳、東には船窪岳から野口五郎岳、その南に水晶岳、雲の平と槍穂高岳と北アルプスの北から南が手に取るように見える。ここで展望をゆっくり楽しんだ後、スゴ乗越小屋へ向かう。13時10分にスゴ乗越小屋に到着する。天幕を設営しビールで乾杯する。
 16時の気象通報で、日本海に停滞前線が発生し明日は近づく模様。午後からは雨かもと判断する。この日の18時頃より雨が降り始め、明日の行動が心配となる。

8月14日(土)曇りのち雨
 前日からの雨が夜中より強くなり始める。3時30分に起床し、朝食を取りながら今日の行動を相談する。薬師岳を越えて戻ることや、戻りよりは五色ヶ原へ向かう方が標高が低いので安心だ、朝少し様子をみようなどの意見の結果、とりあえず天幕を撤収し、小屋に行き、様子を見ることとした。4時過ぎから雨足が弱まり、5時に出発の支度を調えるころには雨は止み、五色ヶ原へ向かうこととした。
 5時30分に出発。スゴ乗越まで40分で歩き、さらに10分ほどスゴの頭へ向かい登山道を登る。風の影響を受けない所で休憩。さらに急登を1時間歩きスゴの頭へ風が強く風の受けない所で休憩。さらに急な下りを下りて、越中沢岳とのコルに出る。そこから更に急登を登り、強風を受けながらハイ松まじりの登山道を登る。強風もあり登るペースは落ち気味で、強風でザックカバーをKOSは飛ばされる結果となった。ハイ松のあるところで風を避けて休憩。そこから更に急な登山道を登り、越中沢岳の頂上で休憩。ここまでコースタイム以上の時間がかかり4時間がかかった。スゴ乗越小屋からきつかったが今日の核心部を越えて一安心。
 依然周囲はガスの中で視界も10mほどとうんざりする。越中沢岳からの登山道はいままでの急登とは打って変わってなだらかな登山道で、周囲はガスではあるものの湿原の様相で、とても張れていれば気分のよさそうな所である。このころより雨足が強くなり、横殴りの雨となる。越中沢乗越を越えた所のハイ松の間で休憩。依然雨風は強い。そこから1時間ほどで鳶山に到着。ここまで来れば、登りはない。後は下るだけである。12時45分に五色ヶ原山荘に到着する。全身ずぶ濡れなので小屋泊まりとし、2食付きにした。
 小屋の乾燥室へ濡れた物を乾し、部屋の廊下にはザックの中のものを広げ乾かした。小屋の食堂で缶ビールで喉を潤す。
 3時過ぎに風呂が沸いたとあり、タオルを持ちはせ参じる。洗剤は使えないが実に風呂は有り難い。風呂上がりに更にビールを飲む。
 16時に気象通報を聞き、東北地方から日本海にかけて停滞前線が発生しているので、明日も天気は悪いと判断し、明日朝の状況で稜線を行くか、ダムに下るかを決めるとし、夕食でたらふくご飯を食べた。19時頃に就寝。

8月15日(日)曇り
 4時過ぎに起床し、乾燥室に入れていた雨具などを取り込み、荷物の整理をしているうちに、朝食の準備が出来たと放送が入り、急いで食堂へ行く。
 5時35分に小屋を出発。ガスに包まれ、視界は10m程度、雨が無いのが幸い。多少は風があるものの昨日ほど気にならない。小屋前から濡れた木道の上を慎重に歩く。晴れていれば最高なロケーションだろうと思いつつ、歩いていく。ザラ峠を6時10分に通過し、獅子岳への登りに入る。歩きやすい傾斜のジグザグな登山道を快調に歩く。途中の風を受けないところで休憩。そこから、登山道は岩稜帯で少し急になると鉄のハシゴが表れてきた。さらに高度を稼ぐと、登山道は尾根の東側を行く。小屋から2時間で獅子岳の頂上に到着する。津村氏が晴れていれば、展望がよいところなのにと嘆く。
 獅子岳の頂上から登山道は下りに入り、尾根の東側をしばらく行くと、鬼岳東面の看板が出てくる。支尾根を幾つか越え、2つ目の鬼岳東面の看板を越えたところで休憩。
 登山道は尾根の西側にあり、1時間ほどで富山大学立山研究所の施設のある頂上に到着。
そこから浄土山へ10分ほど歩き、急な下りを一気に下り、石畳みの登山道を800m歩くと室堂山荘に到着する。ここまで5時間となかなかのペースで歩いた。
 室堂山荘で風呂には入り、生ビールで喉を潤し、昼食を食べた。
 室堂からトロリーバス、ロープウエー、ケーブルカーを乗り継ぎ、黒部ダムへ行く。ここは晴れている。しかし、針ノ木岳は雲の中。TSM氏の提案で扇沢から15時05分発の長野行きのバスに乗り、長野駅から長野新幹線で東京へ出て、横浜へ帰る。結果的に横浜まで松本周りより早く着けた。

<行動時間>
8月10日 池袋駅23:00ー5:25富山駅着
8月11日 富山駅5:50タクシー乗車ー7:25折立着・同7:55発ー9:40三角点9:55ー12:30太郎平13:20ー13:40薬師平キャンプ場
8月12日 停滞
8月13日 3:30起床・5:15発ー7:51薬師岳8:10ー9:08北薬師岳10:20ー11:18間山手前の尾根11:55ー13:10スゴ乗越小屋
8月14日 3:30起床・5:30発ー9:35越中沢岳9:50ー12:45五色ヶ原小屋
8月15日 4:10起床・5:35発ー7:33獅子岳7:45ー9:30富山大立山研究所9:38ー10:30室堂山荘11:50ー室堂12:20ー12:40大観望13:00ー13:10黒部平13:25ー黒部ダム14:05ー14:20扇沢15:05ー16:50長野駅17:30ー19:15東京駅

<山行雑感>
 今回の山行は台風4号の影響で、11日は天候が持ちそうだという予報で、とりあえず太郎平まで行くことにした。最悪なら小屋泊も考えたが、11日は何とか天幕を張れ、12日は昼間に台風が富山県を横切ることで、天幕の中で停滞ができた。残念なのは台風の通り過ぎた後に、朝鮮半島に低気圧が発生し、天候がよくならなかったことである。その低気圧がその後、停滞前線に発達したため、16時の気象通報を聞き、天気図の作成をして天気の予測をし、雨でも6時間の行動なら何とかなると思い、予定通りの室堂までの行動を考えた。特に、スゴ乗越まで来たとき、引き返すか、先に進むか判断に迷ったが、いずれにせよ6時間程度の行動なら多少の雨でも行けると判断した。
 今回のコースの印象は、終始高山植物が多いコースであるという印象が強い。特に薬師岳の南面、北薬師岳の北面、越中沢岳〜室堂までの稜線はチングルマだらけで、2週間前に来ていたらとても素晴らしいだろうと思った。また、逆コースの室堂から薬師岳へ向かうパーティーが多く、我々のように薬師岳から室堂へ向かうパティーはほとんどいなかった。これは、越中沢岳の登りが非常にきついためと思われる。事実、我々のパーティーの行動でも越中沢岳の登りはコースタイム以上に時間がかかった。
 北薬師岳から間山までの間は高曇りで、槍ヶ岳から剣岳までの展望が得られ、さぞ好天の時なら素晴らしいコースであると思われる。室堂から薬師岳までのコースなら2泊3日で抜けられるので、天気のよい時にまた行きたい。
KOS記

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