北岳バットレス中央稜(第4尾根主稜まで)



日程:2010年7月17日夜発〜7月19日


7月17日
二俣川20:00発=自動車=23:30芦安〜24:00市営駐車場〜24:30就寝(無料休憩所)

7月18日
6:00起床〜市営駐車場7:00発=乗合タクシー=8:00広河原8:20→10:20白根御池小屋(テント設営)11:10→bガリー大滝取付偵察→15:15テント〜16:30夕食〜17:00就寝

7月19日
1:30起床〜テント2:45発→(右俣へ迷い込む)→5:45bガリー大滝6:00登攀開始→7:20第4尾根取付大テラス7:40→10:40第4尾根終了点大テラス〜中央稜観察11:15→11:30北岳頂上11:40→12:10肩の小屋12:30→13:30テント(撤収)14:15→15:45広河原山荘→広河原バス停16:10発=バス=芦安の市営駐車場=自動車=二俣川

当初、7月16日発で、2泊3日を考えていたが、Mさんの仕事の都合で7月17日夜発の夜行1泊2日の行程とした。

7月17日
 夜8時二俣川をM車で出発して23時30分に芦安に着いた。バス停そばの駐車場は満杯で空きを求めて第8駐車場まで行くが、どこもいっぱいだ。他にも駐車できずうろうろしている車が数台いた。結局元に戻り、何とか通行の邪魔にならない空きスペースを見つけて停めた。 南アルプス市の無料休憩所に移り、寝酒を少し飲んでホールで仮眠を取った。
 なお、乗合タクシーの方からあとで聞いた話では、夜叉神峠までの間の林道にも停めてよいとのことだった。広河原までのタクシーなどに拾ってもらえるか連絡してもらえそうだった。

7月18日
 今日は白根御池小屋にテントを張り、下見に行くだけなので、ゆっくり6時に起きた。7時の乗合タクシーで広河原へ向かった。連休の中日なのでそれほど人は多くない。前日は大変な人数だったとのこと。広河原では新しくオープンした野呂川広河原インフォメーションセンター(アルペンプラザ広河原跡地に建設)で残雪状況を聞いたら、スタッフがバットレスの図面を持って追いかけてきて、下部岩壁の下辺りまであるような話だった。(実際に行ってみた結果では大体合っていた。)

 広河原を出て約2時間で白根御池小屋に着いた。テントを設営して一服した後、行動用具とアイスバイル、軽アイゼンを持って偵察に向かった。

大樺沢には雪があり、夏道も一部雪の下だった。二俣から右俣を横断して大樺沢(左俣)沿いの夏道へ行くところは、雪渓に穴が開き下に水が流れていた。 そこで、二俣か ら大樺沢をほんの少し下ってから大樺沢の雪渓に下りた。雪渓上を少し登ってから右の夏道に上がった。

ずっと夏道を行くとバットレス沢が右から入ってくる出合の少し下から夏道が雪の下になり、雪渓上を歩いた。バットレス沢入口の大岩は頭だけ出して下は雪に埋まっていた。

bガリー大滝へはバットレス沢とc沢の間の小尾根を行くが周りが雪の下なので進むべき道は明瞭だ。小尾根上には雪はない。踏み跡をずっと進むと左側のc沢から上がってくる踏み跡が合流する見晴らしのいい土のリッジに出る。ここから先は雪だった。このときはガスがかかっていてbガリー大滝の取付の様子がよく見えなかった。念のため軽アイゼンをつけて取付まで行くことにする。雪の上には薄い踏み跡はあるが、大勢の人が通ったようには見えない。軽アイゼンを履くことはめったにないのでぎこちない。取付は小さなシュルンドになっていたが、問題ない。1ピッチ目は雪のため半分ぐらいの高さに感じた。

帰りは、日ごろ使い慣れない6本爪アイゼンの練習をしながら帰った。結構下りも疲れた。

小屋の生ビールを飲んで4時半ごろマーボ春雨の夕食を食べて5時過ぎには寝た。何度か目が覚め、bガリー大滝を登ったあと緩傾斜帯をトラバースするときcガリーに雪があった場合の対処を考えたりした。二人とも7月のバットレスは初めて。ザイルパートナーにとっては因縁の中央稜。二人とも多少緊張している。

7月19日
 1時半に起床。2時45分ヘッ電を点けて出発。二俣で後続のパーティが見える。下見したとおり二俣から下り気味に大樺沢の雪渓に下りる。少し雪渓を登って右側の夏道に上がるつもりだ。左側に尾根の末端のような影が見え、ちょっと気になったが、そのまま雪渓を進んで右側の斜面を少し這い上がり夏道に出た。なんとなく違う感じもしたが、暗いから印象が違うのかなどとパートナーと話しながら進んだ。しかし、どうも雪渓から離れていく。二俣から30分くらいして、いよいよおかしいと思い、コンパスで確認すると北へ進んでいる。これは明らかに道を間違えている。引き返すことにする。二俣で、後続の二人パーティから「バットレスですかー?」と声を掛けられたのは、警告の意味だったのかと気づいた。二俣に戻ると、もう夜は明け始め、右俣に入ったことが判明した。1時間15分ほどのロスだ。中央稜に取り付くタイムリミットを考えながら登る。

 バットレス沢出合に着くと、件の後続パーティと思われる二人がcガリーの方へ向かい始めていた。我々は予定どおりbガリー大滝へ向かった。二人ともペースが上がらない。bガリー大滝についたのが5時45分。なんとテントを出てから3時間も経ってしまった。

 6時にbガリー大滝を登り始め6時半終了。終了点から左へ少しトラバースして草付を登ってルンゼ状の中の段差を一つ二つ乗り越えると横断バンド入口。cガリーの雪がどう なっているか気に掛けながら向かう。と、雪はcガリーの上部にはあったが、ちょうど横断するあたりにはない。ほっとした。バイルを埋めてアンカーにしてロープを出そうか2本を繋いで100m弱に伸ばして立ち木でビレーを取ろうかとかあれこれ考えていたが、これでここで時間を取られることはない。

 cガリーを下降気味にトラバースして潅木の中のバンドを少し行くと、行き止まり手前に4尾根の取付大テラスに至る登路があった。そこでクライミングシューズに履き替えて登る。7時20分取付大テラスに着いた。Mさんは10時までに枯木テラスに着けば中央稜はいけると言う。少し休んで準備して、7時40分に取り付く。奇数ピッチはN、偶数ピッチはMのつるべで登攀開始。先行も後続も見えず快適な登攀となる。

 マッチ箱の懸垂下降点に着くと、中央稜の3ピッチ目を登攀中のパーティが見えた。前日の下見のとき遠くからbガリー大滝を登っているパーティが見えたが、遅い時間だったので途中ビバークを組み込んでの行動だろうと思われた。そのパーティではないだろうか。

この時点で9時過ぎ。私の計算では余裕を見て、北岳から広河原まで草すべり経由で4時間。テント撤収に40分。広河原に最終バスかタクシーに間に合うように4時45分までに着くようにするには12時前には北岳を出たい。そうすると、マッチ箱から北岳頂上まで3時間弱しかない。焦って登りたくないので、無理をせず4尾根のみで終了しようと話し合った。

 そうと決まったので、枯木テラスあたりから、cガリーへの懸垂下降点と中央稜の写真を撮ったり、観察しながらゆっくり登った。そのとき中央稜の上部から「ラーク」の声がしてcガリーの上のルンゼあたりから大きな音がした。やはり落石には気をつけねばと思った。

4尾根終了点のすぐ上のハイマツあたりでロープをしまい、大テラスに10時半ころ着いた。装備を解いて、そこからも中央稜の上部、中間部の写真を撮った。

あとは、北岳頂上により肩の小屋でゆっくり一服し、草すべりを経由して白根御池のテント場に戻った。テントを撤収して、広河原に向かった。途中で4時の便に何とか間に合うと思い、急いで下った。次の便は5時なので1時間違うからだ。何とか間に合った。便は乗合タクシーもあったが、山梨交通のバスに並んで乗った。(N 記)

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