御殿場口から富士山

日程:2010年8月24日(夜発)〜25日


御殿場口(1,440m)0:25⇒2,000m地点2:00⇒六合目5:41⇒七合目6:41⇒八合目赤岩八合館8:00⇒御殿場口山頂10:20⇒剣ヶ峰10:52(上り、休憩2時間35分)
剣ヶ峰11:30⇒御殿場口山頂11:43⇒八合目赤岩八合館12:30⇒七合目13:15⇒御殿場口15:07
(下り、休憩50分)

天気:晴一時曇り

 富士山は、登山愛好家のなかでは決して人気のある山ではないし、私もあまり魅力を感じていなかったが、昨今の富士登山ブームで、老若男女誰もが登頂をめざすようになると、一度も行ったことのない私としては意地でも登ってみたいと思いだした。ただし登る以上は、最も困難なコースで、条件の厳しい中で登頂を果たすことを目標とし、御殿場口(標高1,440m)から頂上までの標高差、2,336mを深夜から登りだし、徹夜・日帰りで決行することにした。

 24日(火) 22:00に仕事を済ませ、中央林間駅に集合、Sさんの車で、横浜町田ICより東名、御殿場ICから御殿場口登山口へ 25日(水)0時頃到着。ここまでは天候は安定しており、晴れていたが、登山口周辺はガスがかかっており、山頂方面は眺めることができない。登山口周辺では、祭りでも行っているのか、暗闇に人影が集まっている。この太鼓の囃子はいつまで続くのだろう。
0時25分、準備を済ませ、登り始める。相変わらず登山口周辺はガスに覆われ、登山道が上り用の道なのか下山用の道なのかが判別できず、しばし停滞したが、やがてもっと上の大石茶屋まで同じ道であることが分かり、それからは順調に登り始める。
高度を上げるに従って、ガスも消えてゆき、ほとんど満月に近い月明かりで、山影がはっきりしてくる。富士山頂も月光に照らされ、輪郭がはっきり浮き出してきた。満月・星・風・静寂、なんとも幻想的な太古の時間を感じつつ、ヘッドライトなしでも歩けそうなくらい明るく照らされた登山道をゆっくり登る。最初の休憩は1時15分、その後、50分歩き10分休憩を繰り返す。それにしても、登山者がいない。ここまで出会ったのは1人のみである。(このコースは長く標高差もあるため、登った時間のせいもあると思うが、結局我々のように、登りでこのルートを取った登山者は山頂まで2人しか出会わなかった。) 標高2,000m地点を2時に通過、3時15分には2,400m、ここでほぼ標高差で1,000mを登ったことになる。ここにきても、御殿場口の祭りの明かり、太鼓の音が聞こえてくる。今晩は夜通し祭りは続くのだろうか。高度を上げてゆくにつれて、暗闇の先にすごい雲海が広がっていることがわかる。4時15分、2,650m地点で4回目の休憩を入れるが、やはり徹夜の登山が身にこたえたのだろう。相当疲労が蓄積してきたので、大休憩を取ることにする。
 ここまであまり寒さを感じなかったが、休憩とともに一気に冷えてくる。3人とも防寒具をはおり、寒さをこらえた。この時間帯になって、遠くの空も徐々に明るくなり、日の出が近いこともあり、ここでご来光を迎えることにした。今日は、足下には雲海が広がっていたが、上空は雲ひとつない晴天である。素晴らしいご来光を期待しつつ、3人とも一斉にカメラのシャッターを押し続けた。太陽が昇るとともに、雲海をバラ色に染め、期待以上の神々しい瞬間を味わうことができた。ここまで苦労して登ってきた甲斐があったというものだ。
 朝日が昇ったとたん、一気に天空が明るく輝きだした。同時に一転して暖かくなり、先ほど着た上着を脱ぎ、5時に頂上を目指し登り始めた。六合目(2,830m)に5:41に通過、七合目(3,040m)にある日の出館に6:41、砂走館(3,110m)に7:01に到着した。眼下に宝永山を見下ろしながら、どこまでも続く雲海にカメラを向けた。しかし当然と言えば当然なのだろうが、富士山はなんと花の少ない山なのだろう。火山礫が荒涼とどこまでも続いている。景色がいつまでたっても変わらない。登山道の傾斜が増すにつれて、きつさだけが体内に蓄積されて、ストレスがたまってゆく。7:20に砂走館を出発、8時八合目赤岩八合館(3,300m)に到着し休憩。ここから山頂まで最後の急登が始まった。ここまで、すでに登山口から標高差1,900m、睡眠不足と酸素不足が身にこたえる。ちょっと登って立ち休みを繰り返し、少しずつ高度を上げてゆく。いったいどこが山頂なのだろう!しかし同行の2人は元気だ。私が一番バテテいるのが、我ながら情けない。
ホウホウノ体で、御殿場口山頂(3,700m)に辿り着く(10:20)。各コースから登ってきた登山客で一気に人が多くなる。ここから剣ヶ峰まで25分ほどお鉢をまわり、10:52登頂。なんとか標高差2,300m強を登り切った。やはり噂では聞いていたが、すごい人出だ。平日なのでこれでもかなり少ないほうなのだろうが、この様子を見る限り、土日に来る気にはなれない。人ごみの山頂で大休憩を入れる。座り込むと猛烈に睡魔が襲ってくる。しばし座りながら仮眠をして体を休める。展望台からは北アルプスが望めるとSさんに教えられるが、見に行く気にもなれない。
11:30、下山を開始する。当初お鉢めぐりをしようと思っていたが、眺めていると決して美しいものではないことがわかって、わざわざ一周するほどのものでもないので省略することにした。御殿場口頂上から元来た道をそのまま戻る。快調に下山を始め、一気に高度を下げる。上りにあれだけ苦労した地点をあっという間に通り過ごし、12:30に八合目赤岩八合館(3,300m)、13:05に砂走館、何度か休憩を入れ、大砂走りに入り、思いっきり下ってゆく。しかし大砂走りはなんと爽快なことか!こんなに快適な下山方法があったのかと改めて驚かされる。火山礫に足が吸い込まれるように、グングン加速を上げながら下ってゆく感触がたまらない。思わず病みつきになりそうだ。おまけに豪快な景色に魅せられながら、あっという間に御殿場口登山口に到着(15:07)。
下山後温泉会館で入浴。御殿場ICから横浜町田ICへ、中央林間に18:30頃到着、解散。長い1日がやっと終わった。今晩は爆睡できそうだ。

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