八ヶ岳・赤岳西壁主稜

日程:2010年4月3日(土)〜4日


中央のピークが赤岳北峰。そこから右下に延びるのが主稜

4月3日(土) 6:30am二俣川駅→10:30美濃戸10:45→13:30行者小屋テントサイト(幕営)

 八王子ICから中央道を経由して小淵沢へ。美濃戸口からの林道は一部雪が残っていたが、美濃戸の赤岳山荘駐車場までチェーン無しで登ることができた。装備を整えて歩き始めたが、美濃戸山荘から南沢に入ったところで道がガチガチに凍っているため直ぐにアイゼンを装着する。行者小屋に着きテントを設営。昼過ぎまでうす曇りだった空は夕方には雲ひとつない快晴に変わり、大同心や赤岳が圧倒的な迫力で迫ってくる。18:30就寝。


4月4日(日) 5:00幕場→5:40トラバース→6:15登攀開始→8:15上部壁→9:18終了点→9:25赤岳山頂9:40→10:00赤岳展望荘10:10→11:00幕場→12:08下山開始→13:40美濃戸→20:00二俣川駅

 装備を整えて幕場を出発したのはちょうど5:00am、既に周囲はかなり明るくなっていてヘッデン無しでも十分歩ける明るさだ。我々の前には2人パーティー、直ぐ後ろからは3人パーティーがぴったりと付いてくる。途中先行パーティーに続く形で阿弥陀岳北稜へのアプローチに引き込まれそうになるが、すぐにNさんが気付いて文三郎道に戻る。我々の前には誰もいなくなり、この日の主稜一番乗りが約束されたというわけだ。
 一般道が尾根から大きく右にカーブする地点が主稜への入口。赤岳沢右ルンゼの雪はしっかりクラストしており雪崩れる危険もなさそうなのでノーザイルでトラバースする。いよいよ主稜の取付きだ。

【1P目】
  Nさんのリードで登攀開始。チョックストーンを乗り越えてその先のチムニーをステミングで登っていく。チムニーを抜けたNさんの姿が見えなくなりしばらくすると「ビレー解除」のコール。いよいよ私の赤岳主稜のスタートだ。チョックストーンは想像していたよりも小さく簡単に乗り越えられた。チムニーもホールドがしっかりしていて問題ない。チムニーを抜け氷化した斜面を右上して少し左に回りこんだところに打ち込まれたハンガーボルトが1P目の終了点。

【2P目】
 2P目はSがリード。ビレー点から一段下がった左側の岩を回り込むようにして登り始める。直ぐに開けたミックスの岩稜となり、トラバース気味に左上すると、前方にロープスリングを巻きつけた岩が見えた。しかしどう見てもそちらは遠回りに思えるのでそれを無視してまっすぐ登り、リッジが狭くなり始めたところのピナクルにスリングを掛けてビレー。後でNさんに指摘されて気付いたのだが、あと5mほど登ったところの岩にペツルのハンガーボル トが打ち込んであった。普通なら直ぐに気付くはずなのに、やはり久しぶりのリードで緊張していたのか全く気付かなかった。

【3〜6P目】
 ここからは傾斜も緩くなるので、西さんリードでコンティニュアスで登る。それもただのコンテではなく今回初めて試してみるやり方だ。まずリードが中間支点をとりながら登り、ロープが一杯に伸びたところでセカンドがロープを張ったまま続いて登るという方法だ。この方法だと万一どちらかが滑落しても中間支点をとってあるので大きな事故になる心配はない。通常のコンテよりずっと安全というわけだ。

ミックスの岩稜を進み、上部岩壁の基部の雪壁を右上したところが核心部の7P目の取付きだ。振り返ってみたが後続パーティーの姿は見えない。やはりコンテだとかなり早い。

【7P目】
 このピッチはSのリードでスタカットで登る。段差とちょっと立った1歩を上がった先の短い凹角を抜けたあと、右上トラバースし、少し傾斜の立った岩壁を上る。狭い凹角を抜けるところが一番いやらしかったが、なんとか抜けると傾斜が緩み、ボルトが2本打ち込んである岩でビレー。

【8〜10P目】
 再びコンテで登ると、程なく赤岳北峰のすぐ下の登山道にある岩でNさんがビレーしていた。ここが終了点だ。Nさんとがっちり握手をして赤岳主稜完登を祝った。そのまま北峰まで登り記念撮影。やや風はあるものの、快晴の空の下展望は抜群だ。富士山、南・中央・北アルプスなど360度の展望を満喫し、写真を撮りまくる。
 急斜面をアイゼンを利かせながら一気に下り、赤岳展望荘を風除けにした陽だまりでしばし休憩、エネルギーを補給してから地蔵尾根を行者小屋に向けて下山した。
 11:00行者小屋着。12:08テントを撤収して南沢を美濃戸へ向けて下山開始、13:40駐車場着。中央道の渋滞もあり、二俣川着は20:00だった。
記録 S

【山行リーダーのメモ】

 今回は、50mロープをいっぱいに伸ばしての同時行動を組み込んだ。これは『岳人』に連載された「八ヶ岳は山の学校」(加藤美樹・久野弘龍)の14(728号2008年2月号)を参考にして、というより、ほぼそっくりそのまま採用させてもらって行ったものだ。同時行動したピッチは、いずれも傾斜も比較的緩くルートもほとんど直線的なもので、要所要所で岩角やハイマツ、ハンガーボルト、ハーケンにプロテクションを取ることができ、不安は感じなかった。

 確かに登攀のスピードが上がる。その意味では、安全性も高まり、快適でもあった。その分どんどん進めるので、意識して休みを取らないと50mロープを引っ張りながらの行動なので多少疲れるが、しかし、これも程度問題でそれほどのことではない。

 リードで登っていると、セカンドの動きが止まりロープがいっぱいとなることがあるが、ルート状況等を思って、セカンドが何をしているかを想像し、かつピッケルを打ち込んだりしてそれなりの自己の安全確保を取るなどすると安全もより確かなものになるだろう。

 ルートとメンバーによるだろうし、初めて行う場合は予行演習をするべきだろうが、有効な方法の一つだと思った。なにしろ山は危険な場所であるから、そこに身を置く時間が短いに越したことはない。

(なお、言わずもがなかも知れないが、同時行動の開始地点(=スタカットの終了地点)では、セカンドはロープがいっぱいに延びるまではトップの確保を行い、同時行動の終了点ではトップはセカンドの確保を行なった。)

(N)


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