白馬岳主稜&小蓮華尾根途中まで

日程:2009年5月2日〜4日


5月2日 快晴
 八王子駅で3人と合流。そこで自分の装備内容を思い直してみると山行3日目の夕食で肝心なライスを忘れてくる。というよりも共同装備のうちに入っているというこちらの思い違いで、幸いにも3日目は日中で帰ってきたため大事には至らず(良かった)。
 白馬駅からタクシーで猿倉荘まで行く。運転手の些細な話に耳を傾けながら猿倉荘に到着。天気は快晴で半袖でもいいくらいの気温。雪に反射する照り返しで眩しい。陽気で心地良いなか白馬尻脇の台地にテントの設置。付近には5,6張りは見えただろうか・・・。遠く主稜を覗いてみると4人組パーティが登っていた。水作りも雪が黄砂で表面所々がマーブル状に色づいていたため、綺麗な白い部分を袋に詰める。Nさんの天気図作成で翌日晴れの予報。気持も明るくなる。夕食の担当はARさんでカツ丼。肉が分厚く美味しく頂いた。

5月3日 快晴
2時半の起床。それほど寒くもなく朝食を済ませ外へ出ると主稜方面にいくつかの民家が・・・。いや、よく見るとその明りが動いている。見えるだけでも4,5隊はいただろうか。北海道ではありえない光景だった。主稜を登り始めると当然トレースが付いていて、楽に登ることが出来たがナイフリッジの場所では慎重に足場を確かめながら登った。先頭にARさん、後ろにはOKさん、Nさんと続く。60代半ばとは思えないARさんの歩調には驚かされた。思った以上の温かさに脱水になると困ると雨具の下は履かなかったが、3峰目あたりからは風が強そうだと思い身に付ける。

頂上直下に来ると雪壁が緩んでいるためロープを出す。N・STパーティ、AR・OKパーティでそれぞれロープを出して、Nさん、ARさんがリードして登った。スタンディングアックスビレイを事前に訓練していたが、いざ本番になると手元がおぼつかない。より練習が必要と思った。11時15分にピークに立つ。

白馬山荘でビール500mm4本を購入。担いで大雪渓を降りる。大雪渓から登る登山者、スキーヤーとすれ違いながら途中で休息。「こんな場所でポケーっとしているのが至福のひと時だな」とNさん。つい転寝してしまいそうな天気の良さで何も考えたくなくなってしまう。何かが飛んできて雪面にポツリ。カメムシだ。おそらく気持も一緒であろう。BC到着後は冷たいビールで乾杯。勢いよく喉元に入っていった。夕食当番はOKさんで炊き込みご飯とスープ、サラダ。たらふく食べて19時就寝。
5月4日 曇り
朝食後、Nさんの携帯で天気を調べると午後からは雨、夕方には雪になるとの予報だった。皆と相談した結果、せっかく来たからと午前中だけ小蓮華尾根に登り見晴らしの良い1900mの尾根の屈曲点で小蓮華岳、白馬岳、杓子岳を十分に眺めた後、BCに戻り撤収。途中、駅そばのロイヤルホテルの温泉に入る。近くの食堂でそれぞれ定食、ビールを食した後帰路へ着く。

おわりに
今回、Nさんの誘いで初めて北アルプスへ行くことができました。思えば自身春山は初めてで、慣れないパッキングに少々戸惑いながら整えつつ行くことができました。他のメンバーの適切なアドバイスもあり無事に山行を終えることが出来ましたが、今度の経験をもとにこれからもより自然に対し無理なく実りのある山行を目指して参加できたらと願っています。知識、経験とも乏しい身ではありますが、徐々に精進していきたいと思っています。また機会があれば皆さんの指導のもと山に行きたいと思います。よろしくお願いします。                    (記録:ST) 

行動概要
5月2日
7時40分 八王子駅集合→8時02分八王子駅発→11時27分白馬駅着→11時36分タクシー乗車→11時56分猿倉荘下車→12時32分出発→13時53分テン場着(BC)→19時 就寝

5月3日
2時30分起床→4時20分BC出発→5時20分八峰付近→6時45分六峰付近→8時三峰→9時32分二峰→11時15分白馬岳ピーク→13時34分白馬山荘出発→14時15分BC到着→19時 就寝

5月4日
3時30起床→5時20分BC出発→7時30分小蓮華尾根1900m7時55分→8時55分BC到着撤収→10時BC発→10時45分猿倉荘→14時37分白馬駅乗車→17時05分八王子駅着解散

山行リーダーのメモ
今回の山行のポイントとして考えたのは次の5点であった。
@BCテントの設営場所 A時間管理(1日でBCに戻ってくること。最低でも白馬山荘までたどり着くこと。時間切れの場合のビバーク方法と場所)B主稜の取付ルート C頂上直下雪壁のロープワーク D小蓮華尾根の取付場所

【BCテント設営場所】
 9年前に、主稜に行ったときは、確か白馬尻の大雪渓末端にテントを張ったと思う。その数年前(当時)5月の大雪渓の雪崩のことは話題になったが、当時のリーダーの判断でそこにした。
 今回は自分がリーダーとなり、より安全な場所に設置したかった。現地の地形等の状況は記憶しておらず、地形図を見て白馬尻近くの杓子尾根側に台地状があり、そこにテントを張れるのではないかと想定した。猿倉にも台地があるのは一昨年の双子尾根に行ったとき分かっていたが、主稜登攀にかかる時間を短縮するため、主稜取付に近い場所に設定したかった。
 実際白馬尻近くに台地があり、雪渓から登ってみると数張のテントがあった。白馬尻末端の少し高くなったところにも数張テントがあったが、台地の方がより安全と思い、この台地の一角にBCを設営した。
 なお、白馬岳頂上からの下山路に大雪渓を選ぶかどうかも、雪の状態によっては考えなければならないが、今回は先週に降った新雪も落ち着いていたので問題ないと考えた。

【時間管理】
 猿倉荘で聞いた話では、主稜上の雪がグズグズ、いわゆる腐れ雪となっているとのことだった。足下から崩れるようだったり、雪面が割れてシュルントになっていたりすると、場合によってはロープを出すことも必要になるかもしれない。 なるべく雪がしまっているうちに登りたい。また時間に余裕を持つため2時半起床、4時出発とした。また、時間がかかった場合には、白馬尻のベースまで戻らず、白馬山荘に泊まる、あるいはもっと時間がかかった場合は途中雪洞泊またはツェルトビバークも想定した。
 白馬尻1600から頂上2932の標高差は約1300m。水平距離は約2.4km。それらから割り出す平均斜度は28°程度。一般の登山道(平均斜度20°)の平均登行速度は毎時300m。一般の登山道なら1300mの登りの所要時間は、4.3時間。斜度やナイフリッジ、雪壁等を考慮して1.25倍〜1.5倍すると5.375時間〜6.45時間。ここらが順調にいった場合の時間か。度々ロープを出すようだともっと時間がかかるだろう。遅くも1時半か2時頃には3峰に到達したい。そうすると、8峰取付が4時30分発とすると3峰まで所要9時間か9時間半。5峰あたりで半分の所要時間とすると4時間30分くらいなので、5峰の通過時間は9時前後ということになる。これは大まかな話だが、一つの目安にはなる。これより遅いようだと適地を物色するなど雪洞泊も視野に入れて行動することになるだろう。
 実際には、8峰取付が4時30分ころで、5峰は7時過ぎころだったのでとりあえず雪洞ビバークの可能性はほとんどなくなった。
 心配していたシュルントも2、3あったが通れないところはなく、雪の状態もトレースが踏み固められ腐れ雪も歩きにくいというほどではなかった。
 結局かかった時間は、8峰取付から6時間45分で、まあ順調だったと言えるだろう。

【主稜の取付ルート】
 主稜取付は、地形図を見ると白馬沢側に少し回り込んだ尾根末端斜面が傾斜が緩かったのでそちらから取り付こうかと考えていたが、大雪渓側の多少沢状の雪壁を右の小尾根状との境に沿って上がるトレースがあったので、少し傾斜はあったがそちらから取り付いた。問題はなかった。

【頂上直下雪壁のロープワーク】
 6峰を過ぎたあたりから頂上直下の雪壁は見えていた。稜上泊のパーティだろうが、かなり早い時間から頂上直下の雪壁を登っているのが見えた。人が連続して登っているので、ロープは使わずに登っているように思えた。
 我々が頂上直下に着くと、先行パーティがロープを出していた。まあ、ロープ無しでもいけるかなと思えた。しかし気温も上昇し日に照らされて雪はかなり緩くなって足場も崩れやすくなっている感じだった。また、STさんとは直前に富士山でスタンディングアックスビレーを含めロープワークの練習もしてきたので、STさんが実戦でやりたいということもあって、ザイルを使うことにした。N・STパーティ、AR・OKパーティでそれぞれ9mm50m、8.5mm50mのロープを使用した。

 頂上まで2ピッチ。最初のピッチは雪壁の途中の露出した岩まで。N・STパーティはデッドマンを埋めて自己ビレーのアンカーとして、STさんがNをスタンディングアックスビレーで確保した。Nがリードし、途中スノーバー1本を縦に打ち込んでプロテクションをとった。終了点の岩には真新しいV字型ハーケン2枚が残置されていた。衝撃を与えるようスリングで引っ張ってテストしたらしっかり利いていたので、それに流動分散でアンカーを設置してATCガイドでセカンドのSTさんをビレーした。
 2ピッチ目はSTさんにその岩のアンカーで自己ビレーをセットしATCガイドでボディビレーをしてもらって、Nがリードした。このピッチは、傾斜も増し、いよいよ足場の雪も崩れやすくなってきたので、比較的雪がしまっている場所3カ所にスノーバーを縦に打ち込んでプロテクションを取った。固い雪面にはアイスバイルで叩き込んだ。
 雪壁を抜けて頂上の登山道に出てからは、セカンドへ続くロープと雪面の摩擦を大きくするために、抜け口からなるべく遠くの雪面にピッケルを打ち込んで自己ビレーのアンカーとして、セカンドを腰がらみで確保した。
 AR・OKパーティは、1ピッチ目は傾斜もさほどではなく距離も短いので、確保はせずに終了点の岩まで来た。2ピッチ目はNが設置したスノーバーのプロテクションを使ってN・STパーティと同じくスタカットで上がった。
 OKさんが「足場がズルズルだったので、ロープがあってよかった」と言っていた。今回はロープを使って良かったと思った。

【小蓮華尾根取付】
 ガイドやネットの記録を見ても、尾根への取付場所は判然としなかった。地形図を見ると、大雪渓と白馬沢が合するあたりに、白馬沢の東側に小尾根状がありその東側に小さな沢状があり、その沢状の東側が小蓮華尾根の末端のようだ。そのあたりから取り付いてみようと思った。ただ入山するときに見えたのでは、その辺りでは雪が融けて水が流れていた。しかし細かい様子は行ってみないと分からないと、大雪渓の下流に向かった。
 上記の沢状が大雪渓の下流に流れ込むところ(標高1470m)の少し上は巾わずか1m程度だがスノーブリッジになっていた。そこをピッケルで確かめながら慎重に渡り、小蓮華尾根の末端部の山腹に取り付き、稜線を目指し左斜上していった。15分ほど登ると開けた所に出、少し稜線の下部へ戻るように少し右上して稜線の近くまで上がった。そこの木の枝に赤布をくくりつけて目印とした。そこからはまた左斜上してほどなくして見晴らしの利く稜線上に出た。取付から1時間くらいだった。
 帰りは赤布の所まで戻り、往路を少し戻り、すぐ下に沢床の雪面が見える所から沢へ下り、沢を大雪渓下流との出合まで戻った。登るときもこの復路を通った方が早く楽に稜線に出られる。木登りもしなくて済む。もし沢筋がいやなら、沢の手前の小尾根を通って対岸の上記下降地点から取り付いてもいいと思った。 (文責 N)

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