北岳 バットレス第4尾根

日程:2009年9月11日(金)〜9月13日(日)


9月11日(金)
22:30二俣川→(2:30)→1:00芦安市営駐車場→1:30就寝

先月の劔岳北方稜線踏破に続き同じ3名で北岳バットレスに挑むこととなった。
三ツ峠中央カンテでの練習は実践で役に立つだろうか。不安と期待を抱いて当日を迎えた。
出張からとんぼ返りし荷物をあわただしく車に詰め込み、22:30に二俣川を出発。順調に芦安市営駐車場に1時頃到着。期待していた仮眠施設はやはり8月一杯で閉鎖になっていた。駐車場にテントを張り一杯飲んで寝ることとする。

9月12日(土)曇天→雨→雷雨(豪雨)
6:00起床→7:00タクシー乗車→7:35広河原7:50→(30)→8:23コース分岐→(67)→9:30第2ベンチ→(25)→9:55急登終了点→(25)→10:20白根御池小屋

今日は広河原まで7時40分のバスに乗る予定で行動開始する。しかし雨の降り出しも気になるので、乗合タクシーの勧誘にのって7時に出発。
上空に雲が立ち込めており広河原ゲートから北岳を望むことは出来ない。雨の降り始めが遅れることを期待しながら出発するが、大粒の雨がぼたぼたと降り出し大樺沢コースとの分岐で雨具を着ることになる。雨をよけるため急登だが樹林コースで進むことにする。
雨は降り続けるがなんとか激しくなる前に白根御池小屋に到着することができた。20kg近い荷物のわりには好調なペースだった。
北方稜線の反省を踏まえ水はけ重視でテントの設営場所を決める。これは好判断でまもなく豪雨となり、最初の候補地はあっという間に水溜りになった。
明日はヘッドランプでの行動になるため、荷物のデポポイントやバットレス沢入口の下見に出かける。バットレス沢の大岩の下で雨宿りして、複数ある踏み跡の行き先を確認しながら、晴れていれば下部岩壁のbガリー大滝が見えると思われる場所まで偵察を行う。
テントに戻るとますます雨は激しくなり雷雨となる。山頂ではヒョウが降ったそうだ。
あまりに雨がひどいので明日はテントを建てたままにし、帰りに撤収することにして就寝する。

9月13日(日)曇り→晴れ
2:00起床3:00→(1:15)→4:15バットレス沢入口→(45)→5:00 bガリー大滝5:20登攀開始1Pクラック→6:00 2Pクラック〜スラブ→(緩傾斜帯)→7:00cガリートラバース→7:40第4尾根取付テラス→8:00 1Pクラック〜階段状のフェース→8:50 2P左フェース→9:00 3P白い岩のフェース→9:15 4Pリッジ→9:40 5P垂壁〜リッジ→10:20懸垂下降(マッチ箱)→10:40 6Pマッチ箱横スラブ→11:10 7P小垂壁〜リッジ〜枯れ木テラス〜小フェース→11:40這い松の小テラス→11:50大テラス12:30→12:50北岳山頂13:05→13:20八本歯のコル→14:00バットレス沢入口→14:20二股→14:45白根御池小屋15:10→16:40広河原17:00→17:50芦安市営駐車場

2時に起床しテントはそのままにして3時に出発。雨は上がっている。寒冷前線は通過したようだ。ビチャビシャの靴で暗い道を進む。昨日下見で歩いていなければめげてしまいそうだ。ヘッドランプに照らされる大岩を横目に下見をした道を登る。途中引き返してくるパーティーに会う、ガイドパーティーのようだ。気温が低く岩が濡れており時間の制約があるため撤退を判断したとのこと。こちらも今日の終バスに間に合わなくてはならないので他人事ではない。
5時、まだ暗いなかbガリーの大滝下に到着する。6人のパーティー(福島から来たそうです)が既に日の出を待っていた。そのパーティーはまだ仮眠している人がいるとのことで先に取り付かせてもらう。
・1P(V級30m)
Nさんリードで進む。岩は濡れており氷のように冷たい。体の動きも悪く、アプローチシューズのままでの登攀で調べた話より難しく感じた。
・2P(V級30m)
2P目もNさんリードで進む。岩が冷たいので手袋をして登る。昨日の豪雨で斜面が滝になったようでホールドに石がたまっている。落石をしない様に慎重に足を運ぶため神経を使う。それでもロープが落石を誘発し「ラク」の声とブーイングがこだまする。後続のパーティーからも度々「ラク」のコールが聞こえた。

 

 ・緩傾斜帯
草付帯を抜けルンゼ状斜面に入る。Cガリーのトラバースへの入り口はルンゼ状斜面の左側のちょっとした藪の中にある。見落とすはずはない踏み跡があるが、登るのにうつむいているため意識していないと通り過ぎてしまう。
Cガリーを上に詰めるルートもあるらしいが、我々は少し下ってから第4尾根の下部に入った。
ここでクライミングシューズに履き替え潅木に覆われた岩を登り、第4尾根取付のテラスに到着。天気も一気に回復し富士山がくっきりと見える。

・第4尾根1P(W級+40m)
C沢を詰めてきた先行パーティーがおり、小休止となる。しばらくして大滝で一緒だったパーティーも合流してくる。緩傾斜帯を上りすぎてCガリー横断で苦戦したとのこと。Cガリーの方を見ると懸垂下降しているパーティーが見えた。やはり間違える人が多いようだ。
いよいよ第4尾根登攀開始。Nさんリードで進む。キャメロット#1でプロテクションを取り名物のクラックに足を突っ込み登っていく。
いよいよ自分の番となる。最初の一歩がすべるためギャラリーが多い中で妙に緊張する。岩も乾き温くなりクライミングシューズも良く効くので大胆に進むことが出来た。難しさよりフットジャムの足の痛さが記憶にのこった。

・2P(V級−35m)
後続を意識して上のビレイ点を探したためNさんが先へ進み2P目の途中でリードしていた。Nさんの場所は3人が並ぶには不安定なためSさんが下方になる本来の2P目でビレイをし直しそのままNさんが進む事にする。
2P目は右側が階段状で登りやすいようだが、左のスラブ状の斜面を登る。スメアリング頼りの登攀となるが岩は乾燥しており多少のホールドでも靴が良く効いて不安はない。スラブ上の斜面を登るとリッジになっておりピラミッドフェースの頭の下を巻くように進む。
・3P(V級40m)
Sさんリードで進む。その名のとおり白い岩がフェース状になっている。後半に高度感があり緊張するが、小さなホールドがあるため一つ一つ拾いながら登る。


・4P(U級20m)
ピラミッドフェースの頭の裏側のビレイ点からSさんリードで進む。ビレイ点からSさんを見ることはできない。
このピッチから高度感が増してくる。ロープの流れが悪く岩に引っかかってしまう、すんなり登れば楽なのにロープのせいで妙に高度を感じさせられる動作を強いられる。
・5P(X級35m)第4尾根の核心部と言われる垂壁。最初の2,3歩がすべるためその先をどうするか悩む所。

幸い右がガバれるとの情報をもらったため手を伸ばすとまさしく「ガバ」っとつかめた。おかげで一気に上に上がることが出来た。しかしその先はナイフリッジとなり登攀の難しさより高度感で目がくらみそうになる。ここからマッチ箱のピークまで最高の空中散歩という所だが下を見る余裕もなくひたすら登る。<BR>
マッチ箱のピークの懸垂点は手前にもあるのだが、Nさんが続いてくるパーティーを意識して一番先の懸垂点まで進んでいる。そこでの懸垂準備は狭い上に高度感抜群で懸垂の準備がよれよれになってしまった。

・懸垂下降
マッチ箱から懸垂下降しテラスへ降りる。マッチ箱の先端から素直に懸垂下降するとテラスの少し上に降りる事になる。
・6P(W級40m)
マッチ箱の横のフェースを登る。リードのSさんはクラックがフェースか迷いながら最後はフェースを登る。クラック沿いに行くのが楽そうだが、靴が良く効くのでフェースを登った。

・ 7P(W+50m)
Nさんリードで枯れ木テラスを通過して更に上のビレイ点まで進む。50mロープが目一杯伸びる。枯れ木テラスを越すあたりで緊張する部分があるが、それを越えればもう厳しい場所はない。
・ 大テラスへ
8P目をとる場合もあるそうですが、ロープはつけたままクラックをまたいでまずは小テラスへ移動。ここでロープをしまって最後の斜面を登り大テラスへ移動し終了。
喜びを分かち合い写真を撮って装備を解除。やった!

 テントの撤収も含めると帰りのバスが気になるのでサクッと北岳山頂に寄り13時に下山を開始する。
下山途中で今日のバスは16時が最終との情報があり愕然となる。白根御池小屋で17時があることの確認を取るまでは超ハイペースで下ることになる。
(結果はバス時刻表では土日祝日は17時が最終となっているが、実際は17時はバスでは無くタクシーが対応しているようだった)
体に鞭打って白根御池小屋に14時40分に到着。小屋で17時のバスを確認できたため安堵しながらも、急いでテントを撤収し広河原を目指す。これからは荷物の重量も増しての急坂下りになる。広河原についた時はもう膝はがくがく。芦安で温泉につかり帰路に着く。高速は大渋滞で、大月から一般道に降りて帰宅は23時を過ぎていた。明日は仕事だ↓。

装備(パーティ合計)
ロック付カラビナ 6
カラビナ 15
スリング(テープ)長6、短6
スリング(ロープ)3〜6
ヌンチャク 9
クックドロー 6
ATCガイドなど制動器(必要なロック付カラビナ含む) 3セット
カム(キャメロット)#0.5〜#1 2セット
ロープ 8.0mm50m×1本、8.2mm50m×1本(各ダブルロープ)
ハンマー、ハーケン 2セット

服装
夏の長ズボン、半そでをベースとして雨具を羽織っての行動となった(雨だったので)。
濡れたせいもあり、テントではコンロをつけていないと寒かった(燃料を小屋で補充した)。
登攀中は雨具ズボンをはいたまま、上は雨具を脱いで長袖での行動。Nさんは私と逆に上が雨具で下は長ズボン、Sさんは雨具上下で登攀した。待ち時間は風が時々冷たかった。

(KN記)

2009年度山行報告へ