8月9日
2:30起床。朝食、テント撤収後3:45ヘッデンを点けて出発。未明から降り始めた雨は、いくぶん弱まったものの依然として降り続いている。とりあえず前剱まで行ってからその後の行動を判断することとして小雨の中を剣山荘へと向う。雨は降ったりやんだりを繰り返し、その度にカッパを着たり脱いだりが煩わしい。それでも一服剱では鹿島槍のあたりからのご来光も見られ、天気はなんとかもちそうだ。 |
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7:55剱岳山頂。カニの縦バイではそれ程の渋滞もなかったのだが、雨模様と混雑でタイムロスがあり4時間以上かかってしまった。
8:20いよいよ北方稜線へ向けて山頂を後にし、長次郎のコルに向けて岩稜を下る。長次郎のコル手前では、Nさんは稜線沿いに下るルートがある筈だと左手のリッジにルートを探したが、下り始めが悪く、先行者(単独)が下りて行ったガレたルンゼにルートを取った。しかしここはもっと悪く、下でルートを指示するNさんを落石直撃の恐怖に晒し続ける結果となってしまった。
10:00コルからは八峰を攀じるパーティーや長次郎谷の雪渓を登る人、雪渓の途中にはテントも数張り見えた。 |
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長次郎の頭は右から巻いたが、トラバースは高度感もありスリリングだ。池ノ谷乗越の手前の両側を岩の壁に挟まれた「オアシス」で一本とる。テント2張り位なら楽々張れる広さがあり下は平らな砂地だ。
11:13池ノ谷乗越。目の前に八峰が圧倒的な存在感で迫ってくる。ここから左手に折れて池ノ谷ガリーの下降となる。「落石を起こすな」と言ってもそれは無理、足を一歩出すごとにガラガラと崩れる「究極のガレ場」をソロソロと下ると三ノ窓だ。 |
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11:40三ノ窓にはテント数張が張れるスペースがあり、この日もチンネをやっているのだろ うか幕営具がデポされていた。残念ながらチンネはガスの中に隠れたままだった。ここから池ノ谷側に一旦下り右手の小窓ノ王の基部を左上すると小窓が見えてくる。ここから急な斜面を下方の大岩を目指して約150m一気に下る。ガスで大岩が見えないとルートは非常にわかりづらくなりそうなところだ。大岩を巻くと急な雪渓のトラバース。アイゼンを装着して慎重に通過する。 |
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14:40小窓。小窓雪渓は傾斜も緩く、クレバスもなく非常に歩きやすい。約20分ほど下ると左前方の岩に○印が見えてくる。池ノ平小屋へ続く旧鉱山道への取付きだ。ここから池ノ平小屋への道は予想外に歩きづらく、また小バエがブンブンまとわり着いてうるさい事この上ない。しかし小屋に着いてからの冷たいビールを楽しみに残った体力をふりしぼって歩き、16:55池ノ平小屋到着。剱沢キャンプ場を出てから何と13時間以上かかったことになる。雨もやや強くなってきたので早々にテントを張り、剱岳北方稜線完全縦走を祝ってビールで乾杯した。今日は長時間行動だったので明日朝はゆっくりして6時起床にして、天気や体調を見て、計画通り真砂沢泊とするか一気にハシゴ谷乗越を越すか決めようということになった。
8月10日
5:00 目覚めると大粒の雨がテントを叩いている。昨日の疲れが抜けきっていないためか、この雨のせいなのか、皆動きにキレがない。朝食を済ませ外に出てみると、なんとテントは水没していた。水はけのよさそうな砂地を選んでテントを張ったつもりだったのだが、雨の勢いの方が勝っていたようだ。
7:30出発。仙人峠8:11、しばし、ガスの中に見え隠れするチンネなど来し方を振り返る。雨で展望が望めないため仙人池はパスして二股に9:30、ここから南股の左岸沿いに遡行して真砂沢手前の雪渓に10:45と順調に進む。まだ時間が早いのと雨が上がり晴れ間が出てきたため当初の予定を変更してそのまま黒部ダムに向う事にする。
11:35雪渓から急な斜面を残置ロープを頼りに登り、右下に真砂沢のテン場を見下ろしながらハシゴ谷乗越へと向う。
13:10ハシゴ谷乗越。ここから水の涸れた沢を内蔵助平へ下るのだが、この沢がうんざりするほど長い。14:50ようやく水流が現れ、ルートが沢から右の台地に上がるところで大休止。冷たい湧き水で喉を潤した。しかし時計を見ると15:00。このまま行ってもトロリーバスの最終には到底間に合いそうもなく、途中で日没となることもありうるので、どこか適地が見つかったらビバークすることにする。幸い5分ほど行った所にテント一張り分のスペースを見つけ本日の行動を終了する。
冷たいビールは無いが、全身雨に濡れた身にとっては温かい日差しが何よりのご馳走だ。テント、カッパ、ザックカバー、靴下など濡れたものを拡げて小一時間ほどの乾燥タイム。もちろんアルコールでお腹の消毒を怠らなかったことは言うまでもないが。
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8月11日
5:45 テントを撤収して出発。雨は降っていないが、夜露で濡れた草木で腰から下はびしょ濡れになる。何ヶ所か崩壊した斜面を残置ロープを頼りに下る所を通過し、7:40ようやく黒部川との出合いに着いた。この頃から強い日差しが照りつけるようになり、これから向う黒部川左岸の切り立った岩壁につけられた登山道を照らし出した。下ノ廊下に続くこのルートは、殆ど下ノ廊下と同じで、この山行の最後を飾るのに相応しい素晴らしい眺めだ。.
8:40 黒部ダム下。観光放水の飛沫で天気雨の様相だ。轟々と流れる水流のすぐ上に渡された橋を恐る恐る渡り、本行程最後の登りにかかる。
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9:25 トロリーバス乗り場着。9:35発のバスに乗って9:50扇沢着。
大町温泉の薬師の湯で4日間の汗を流して山行終了、解散とした。
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